ダイナモット・グローレイン
なんとか一年空けずに投稿できました(ギリギリですが‥‥‥)
これからもこんな感じでダラダラと投稿していきます
見てくれている方がいらっしゃったらスイマセン‥‥
これからもよろしくお願いします
「なるほど、今日は調子が良く、十階層まで降りてみたら目の前に変異種の獄炎獣がいて、何故かナギに懐いたと。しかも、何もしてないのにいつのまにか主従契約まで結ばれていたと‥‥すいません、まだちょっと現実を受け止めきれないのですが」
「ディルカさん、間違いなく現実です。落ち着いてください。ここでアナタが脱落したら、私たちはもう終わりです」
「そうは言いますがね雫、流石に今回のこれは‥‥」
満面の笑みでシルバーと呼ばれた獄炎獣の背中に乗っているナギと皐月。もの珍しそうに胴体や爪を触るティナとタツ、蓮見。オロオロしながらシルバーの背後をウロチョロするハクと騎士達。額に手を当てながら通路に入ってきた魔物にナイフを投げ瞬殺するキナと、正直カオスである。
「安心してディルカ、雫、私とキナも正直よくわかってないし、現実逃避してる部分もあるから。でもね、聞いてちょうだい。今はそんなこと言ってる場合じゃないの。主従契約が結ばれている以上、連れて行かないといけないのよ。私の言いたいこと、わかる?」
「冗談でしょう、クレア?アレを外に出したら街中パニックですよ?」
「騎士団長達が説明に戻ってるんだけど、パニックは避けられないでしょう?あの大きさだし。もう困ってるのよ‥‥というわけで、知恵を借りに来たってわけ。ナギがすぐに上に戻って皆に自慢するって言うから、時間稼ぎの意味合いもあるんだけどね」
「しずくおねーちゃんたちに自まんするの!」 と言って地上に戻ろうとするナギを必死になだめ、とりあえず雫の所に行けば大人しくなるだろうと、この階層にナギ、クレア、キナ、そしてシルバーがやってきたのが三〇分程前で、ディルカ達と合流したのが十分程前のことである。騎士団長達からは、暫くの間、迷宮からは出てくるなと言われており、今戻ったら確実に怒られるしパニックになる。この階層なら自分達だけでも問題無い(実際、キナだけで充分)ということで、ここで今後の話し合いをしている所だった。
「でも、知恵を借りたいといっても、あの大きさじゃあ何もできませんよ?遅かれ早かれ、というか、どうやっても一日持たずにパニックになりますって」
「そうよねぇ『うわっ!?シルバー、お前小さくもなれんのか!?』‥‥は?」
蓮見の驚いた声が響き、雫達がシルバーの方を向くと、地球で言うところの大型犬ぐらいのサイズに縮んでいた。皐月は先に降りていたのかハクの隣で目を輝かせていた。
「‥‥問題、解決しましたね」
「なんなのもう‥‥‥」
「クレアさん、元気だしてください」
今まで悩んでいたのがバカみたいに思えてきた三人は、揃って額を押さえていた。それをみたキナは、少し微笑むと心のなかで合掌‥‥‥できなかった。
「‥‥!?皆さん、敵です!!魔物じゃない、人間です!しかも、相当な手練れ「ほう、勘のいい奴がいるじゃないか。が、少し遅い」‥‥グッ!?」
「キナ!?」
突然の奇襲。キナは勿論、ティナやディルカ、騎士達や雫達も、当然油断などしていなかった。ここは迷宮、なにが起こっても可笑しくないダンジョンなのだ。たとえ低層でも、万が一を考え警戒は怠っていなかった。なのに気づけなかった。
キナの背後に現れた冒険者風の格好に、顔が見えないよう黒いターバンのような物を巻いた男に蹴られ、迷宮の壁にぶつかったまま動かなくなったキナに気を取られ、瞬時に動けたのは四人だけだった。
クレア、ディルカ、ハク、そして‥‥
「キナおねえちゃんっ!!」
キナが蹴り飛ばされ距離が出来たのを確認したのか、なんの躊躇いもなく水刃を男に向かって連射するナギだった。
「ンンッ!?なんで此処に子供がいる!?」
デスヨネー。普通、そういう反応になりますよねー‥‥
敵だと言うのに、ターバンの男に共感してしまった皆の心は一つになっていた。
「くっ、だからと言って、やることは変わらん!!」
「お前たち、ハクと協力して皐月たちを守りつつ下がれ!」
「私が前に出ます。シルバーっ!!キナを確保してナギを連れて皐月たちについて行きなさい!」
「グルゥッ!!」
皐月たちの方に向かっていくターバンの男をみて、狙いが勇者一行だと判断したディルカが、騎士とハクに命令を下し、クレアが前に出る。ハクは既に固有スキルである六本の剣を使って、クレアが到着するまでの間を凌いでいた。その隙にシルバーは大型犬よりも少し大きいサイズになり、ハクとターバンの男の間を縫ってキナを確保していた。
「わ、私も「ダメよっ!!」ッ!?」
剣を抜いてクレアに加勢しようとする雫を止めながら、ターバンの男に対して攻撃を緩めない、どころかドンドン圧していくクレア。
「な、なんでですか!?わたしだって、こういう時の為に今まで頑張って‥‥
「雫が頑張っているのは知ってる!ここ最近ずっと見ていたもの。でも、ここは私に任せて!!ハルさんのいた実戦には到底及ばないかもだけど、命のやりとりって言うのを肌で感じて、感じた物を自分の物になさい!それに‥‥」
シルバーがキナを確保して皐月たちの所まで下がったのを確認してギアを上げたのか、剣を振るう速度が更に上がる。もう雫でさえも目で追うのがやっとだった。ターバンの男はもう血だらけで、十秒もしない内に手に持っていた剣を取り落としていた。
「こんなザコ、私一人で十分よ」
全く疲れた様子を見せずに、余裕の表情でターバンの男に剣を向けるクレアは、得意な炎の魔法を使わずとも、同性の雫でさえも目を奪われる程に綺麗に輝いて見えた。
「くっ、『紅蓮』の二つ名は伊達ではないということか‥‥」
「あら、私のこと知ってて襲ってきたの?だとしたら、随分と舐められたらモノね?」
「ふっ、当たり前だろう。‥‥さて、本題に入ろう。我が主からの伝言だ。『馬車の旅の途中の催しは楽しんで貰えたかな?今度は闇夜より襲い掛かる刺客とのお遊びだ。逃げずに楽しんでくれ。ハル』‥‥以上だ。では、私もお暇させて頂く」
「は?いや、ちょっと待ちなさい!って溶けた!?」
一方的にまくし立てたと思ったら、ドロドロと頭から溶け出して何かを聞ける状態では無くなっていき、濡れた土だけが残っていた。
(土と水の複合魔法ね。あそこまでの剣の腕ってことは、憑依系。‥‥エルフが関わってるのは確定。ということはアイツか‥‥どうなってんのよ?最近は死んだ奴が蘇るのが増えてんの?あぁいや、確か死体は見つかってなかったんだっけ?)
複合魔法はハルが生み出した魔法であるので、まだ研究が始まってからそれほどの時間は経っていない。その為、レラ以外に複合魔法をこのレベルで扱う事ができるのはもともと魔法に詳しいエルフ達の中でも一部の者だけなのだ。土塊を使っているのに人間には無理な動きをしなかったことや、斬りつけられて動きが鈍くなる等、人間らしい動きをみせたことから傀儡のように操っていたのではなく、土塊に精神を移して動かしていたのだろうことがわかる。複合魔法と憑依の魔法の三つを重ね掛けし、上層とはいえ迷宮の中まで追う事のできる魔法を操れる者を、クレアは一人しか知らなかった。
「ダイナモット•グローレイン‥‥」