説明をお願いします‥‥
投稿しないまま一年が経ってしまった…
もう誰も見てないと思いますが、とりあえず投稿します。
ちなみに続きは全然書けてません
でも、書けたら投稿します
短くてすみません…
迷宮に潜り初めて一週間。
迷宮第五層
「そっち行ったぞ!!」
「任せて、『水刃』っ!」
「蓮見、サッサと足止めっ!!」
「わぁってるよ!『影縛り』っ!!」
迷宮に潜り初めて一週間が経過していた。その間に、少なくない脱落者が出ていた。
と言っても、別に死んだ訳ではない。迷宮に潜り、命のやり取りをするのは無理だという生徒が続出したのだ。
約半数の生徒が攻略を辞退し、今は近くの孤児院で子ども達の相手をしたり、命のやり取りのない新人向けの依頼をこなしたりして時間を潰している者が多い。他にも、少数だが魔法研究の道に進もうと猛勉強している者もいる。日本の技術を、魔法で代用出来ないかと頑張っているらしい。
もう半数は、ハルと仲の良かった男女が固まって攻略を進めていた。2パーティー、14人が攻略に参加している。勿論、騎士が護衛として付いているので3パーティーには分かれているが、将来的には生徒だけで迷宮に潜る予定だ。他にも、ナギのパーティーも攻略を進めていた。
本日五度目の戦闘を終え、ディルカに教わりながら素早く討伐証明部位と魔石の剥ぎ取りを終えるとそのまま進みだす。最近は剥ぎ取りをしても顔を青くしたりしなくなったので、騎士達も言葉で伝えるだけで手は出さずにいた。
ほんの三日前までは吐いて取っての繰り返しだったのを思い出すと、目頭が熱くなるディルカだった。
「それにしても、いいペースなんじゃないかしら?姉様達と比べるのはあれだけど‥‥それでも、普通の冒険者たちから見たら驚異的なスピードのはずよ」
六日前、憤怒の顔で合流したティナがパーティーに参加していた。当時はハルがいないことに激怒したが、今は落ち着いている。代わりに騎士団長の顔がひっかき傷だらけになったが‥‥問題はないのだ!!
「いえ、これじゃダメなんです。こんなんじゃ‥‥」
ティナが言っていた通り、冒険者達でなくとも、このパーティーの進行速度が異常だというのはわかりきっていた。普通、新米冒険者は少なくとも一か月は一階層目で迷宮の雰囲気になれるのだ。それを、半分以下の一週間で五層に突入している。殆ど一日一階層の攻略ペース。この世界の人間からしたら化け物以外の何物でもなかった。
まぁ、もっと化け物染みた小さい少女もいるのだが。
「ナギちゃんのパーティーなんて、もう八層が終わりそうなんですよ‥‥っ!?」
「あぁ、ほら、あのパーティーはナギちゃん以外実力者だし」
騎士団長に精鋭の騎士三人、実力派としてしられるダスク辺境伯に鍛えられたキナ、双翼の戦女神、右翼の二つ名『紅蓮』を継承したクレア。確かに、全員が全員一騎当千の実力の持ち主だろう。一週間で八層に到達していても可笑しくない。むしろ遅いぐらいだろう。戦闘に参加していたら、の話だが。
「今でも魔物の相手は全部ナギちゃんがしているそうです。しかも、全て一瞬で片付けているとか」
「ほ、ほら!騎士団長たちがナギちゃんに気を使って言ってるだけかもよ?流石にそれはないでしょ」
信じられないのも無理はない。五歳の少女が護衛の騎士を差し置いて魔物を瞬殺しているなど、誰が信じるだろうか?普通の人間ならそんなもの信じないだろう。しかし、現実とは残酷である。
「ティナさんも見たでしょう?一昨日、いつもより早く転移石を見つけたからと言って四層にいた私たちに会いに、キナさんとクレアさんだけを連れていたナギちゃんの姿を‥‥」
「‥‥‥」
もう、何も言えなかった。士気が落ちるのは良くないと無理やり明るく振舞ったが、もう限界だった。だいたい、あのパーティーの進行速度は異常なのだ。ナギの実力が本当だとしても、まだ五歳。体力的な問題もあるだろうに、この一週間、一日も攻略を休んでいない。雫たちでさえ、昨日一日は休息を取ったのだ。どうなっているんだと頭を捻るのは至極当然のことだった。
と、落ち込んでいるパーティーに喝を入れるかのように前から何かの振動が響いてくる。
「この階層にこんな足音をさせる魔物がいるなんて情報はありません。変異種の可能性があります、戦闘準備を!場合によってはこの場から即座に離脱します!!」
「全員、戦闘準備!!」
ディルカの声で、即座に頭を切り替えた一同は雫の一声で戦闘態勢に入る。この一週間で元々荒事に比較的慣れている雫とタツはもとより、皐月と蓮見もこういう時の切り替え方というのを覚えつつあった。それでも、変異種との遭遇などそうそうあるわけないのだから顔は強張っている。ハクも出てきて剣を浮かせていた。
一回、二回と振動が近づくにつれ全員の額に汗が滲み得物を持つ手が震える。
奥から全体が見える位置まで魔物が出てくる。ちらっと見えた足は雫の腕と同じかそれ以上の大きさをもつ四本の長く鋭い爪。当然、こんな浅い階層にそんなデカい爪を持った魔物が出てくる訳がない。万が一出るとしても、十階層より下に出る獄炎獣の変異種だろう。しかし、ここはまだ五階層。最低でも五つは階層が違う上に、定期的に起きる階層を無視した魔物達の大移動『怪物達の宴』だとしたら時期が早すぎる。そして、聞こえてくる足音が一つなのもその考えを消していた。
ギルドからこんな話は聞いていない。今までこの大きさの変異種が出て見つからずに済むはずが無い。あるとしたら、目撃した冒険者が全員殺されている場合だが‥‥そんな大量に冒険者が一気に死んだという報告すら無いのは流石に可笑しい。大なり小なり何かしらの情報が入っている筈なのだ。それすらも無いということは、産まれたばかりの変異種ということ。
しかし、変異種というのは個体差はあるものの、ある程度の知性がある事が確認されている。いきなり階層を登ってくるなどあり得るのだろうか?
が、今はそんな事を考えている暇はない。皐月が作り出した光球に完全に照らされて爪の大きさに合わせた巨躯がのそりと進み出てくる。その姿は、見惚れる程に綺麗な青の混じった銀色の毛を持つ獄炎獣の変異種だった。
だが、何かが可笑しい。獄炎獣の頭の上に、もう一つ人間の子供の頭と、可愛らしい手が見えている。最近の獄炎獣は、背中に人間を生やしているのだろうか?
「あ、いたー!!」
そんな疑問と、死の覚悟をしたディルカの耳に、聞きなれた可愛らしい声が聞こえてきたのはそんなときだった。しかも、後ろからではなく魔物が出てくるだろう前方から。というか、獄炎獣の頭上から。
「シルバー、降ろしてっ!!」
「グルルゥ‥‥‥」
呆けているディルカ達を他所に、黒炎獣はその声に従って頭を地面に近づける。すると、頭に生えているようにみえた人間の子供が地面に降り立ち、黒炎獣の頭を撫で始めた。
楽しそうに頭を撫でる少女は、今朝、ダンジョンに向かう前に宿で見た少女だった。
「ナ、ナギ‥‥そ、それはもしかしなくてもへ、黒炎獣ですよね?」
「うん、そうだよ。それより、ディルカたちは何でたたかうごびょうまえ、みたいなかんじなの?」
こてん、と首を傾げる姿は大変可愛らしいが、正直後ろで唸っている黒炎獣が気になってそれどころではない。と、そんな時ナギ達の更に後ろから、聞きなれた声と此方に向かって走ってきているだろう足音が聞こえてきた。
「ナギーっ、置いて行かないで、危ないからーーっっ!!」
「クレア様、シルバーもいますしそんなに焦らずとも‥‥‥」
走ってきたのはナギのお守り役であるキナとクレアの二人だった。この前と同じように、騎士団長達の姿は見えない。先に地上に戻ったのだろう。そんなことをぼんやりとディルカは考えていると、キナとクレアがナギの隣まで追い付いていた。少し息が上がっている。二人とも生半可な鍛え方はしていない筈なのだが、一体どれくらいの距離を走ったのだろうか?
「あの、お二人とも、説明をお願いします‥‥」