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お代わり無し


「んぐんぐ‥‥これもう一個お代わりしていいですか?」


「食いすぎだ。もう二回お代わりしてるんだぞ?」


「まだ腹八分目です!」


「充分だろ‥‥」


レティスが屋台の匂いでどこかに行く前にギルドに連れて行き、一番高い定食を頼んで俺達も昼にしよう。と言うことになり各々好きな物を頼んだ。

俺はレティスと同じ物を。マリアとディアナは俺達よりも少し安いものを頼んだ。タイトはホーンベアー達の換金に行っている。後で適当に頼むだろう。


「さて、助けたお礼って事で聞きたいことが一杯あるんだ。まずは‥‥」


「その前に一つだけ。助けたお礼はする。だから、アナタが使っていた身体強化の魔法を私にも教えてほしい。勿論、相応の礼はする」


「ちょ、ディアナッ!?助けて貰った恩を返すのにお話だけで良いって言ってくれたのよ!?なのに魔法を教えて貰うって何考えて‥‥ちょっと待って?いつ魔法使ってたの?」


「マリア、ストップ。ディアナ、正直俺は‥‥俺達は、話を聞いたら直ぐにでも別れたい。俺達といると巻き込む事になる。それに、俺達の名前も知らないだろ?」


「何か大事な用があるのはわかってる。けど、それでもアナタの魔法は危険を侵してでも教えてもらう価値がある。それだけ凄かった。あんなに無駄の無い身体強化は初めて見た」


さっきから思ってたけど、ディアナは俺の身体強化をちゃんと見れたのか。一瞬しか使ってないのに‥‥こりゃ伸びるなぁ。


さっきの闘い。タイト達の所に少しでも速く行くために身体強化魔法『俊足』を使った。けど、現場に着いて直ぐに切ったから気付いてないと思ったんだけどなぁ。


「俺達は下手したら国家指名手配になってもおかしくない様な事をしでかすぞ?そんで、その罪をおまえ等に着せて逃げるかもしれない。それでも俺から教わるか?」


「うん。けど、マリアとタイトは関係ない。罪を被せるなら私だけにして」


「ちょっとディアナ!なに言ってるの!?」


思わず立ち上がって大声を上げるマリア。まぁ、普通そうだよな。無実の罪を自ら被るって言ってるんだから。


「ちょっと、なに騒いでんだよ?コッチにまで聞こえてきたぞ?」


「タイト!ちょっと聞いてよ!!ディアナが‥‥





「なるほど。ディアナ、俺も一緒に教わっていいか?」


「ちょっとタイト!?」


「スイマセン、喉渇いたので飲み物頼んで良いですか?」


なに言ってるんだコイツ?‥‥レティスさん、少し黙ってて貰えません?


「確かに罪を被るのは嫌だけど、そこは何とかしてどうにかすれば良いだろ?そんな事より、俺はもっと強くなりたい。この年でC級になって期待の新人とか言われてたけど、それじゃ駄目なんだ。二人を守るために、もっと強くならなきゃ」


「罪を被ってる時点で私達を守れてないわよ!!それに、何とかしてどうにかするってなに!?意味分かんない!!!」


マリア、君の言うとおりだ。二人を諦めさせてくれ。正直舐めてた。簡単に諦めてくれると思ったのになんで一人増えてるんだ?


「別に良いんじゃ無いですか?教えてあげれば。ハルさんなら楽勝ですよ」


「なに勝手な事言ってんの?つか名前‥‥」


食事を終えてやっと落ち着いたレティスが会話に割り込んでくる。ちゃんと偽名使ってくれません?自分が考えたんだよね?この偽名。


「ハル‥‥ってあの『勇者』!?」


「そんなわけ無い。勇者は黒髪に黒目の筈。この人は金髪碧眼」


「だよねぇ‥‥」



「た、大変だぁっ!!勇者様が勇者パーティーから抜けて、此処に向かってるらしいぞ!!」



‥‥‥‥‥‥‥ハ?


「勇者って、『勇者ハルト様』か?五年前の」


「おいおい、様付けなんてよせよ。アイツは、此処、ゲノム帝国の兵士を塵に変え、王族を皆殺しにした悪魔だぜ?」


「『元』ゲノム帝国な。それに、王族は皆殺しじゃない。聖都ネスティアに留学中だった王女お二方はまだ生きておられるんだぞ?」


「けっ、王女様方も、今じゃゴルドー子爵の妾だぜ?もう只の娘だろ。少し前までいた帝国復興を目指すレジスタンスも最近は何も活動してねーし‥‥あーぁ、勇者が来なけりゃゲノム帝国はそのまま。俺達は甘い汁を吸ってられたのになぁ、今じゃ貴族様も全員平民に落とされて、直接雇われてた俺達は冒険者なんて収入が安定しない職に就かざるを得なくなったんだ。あぁーくそっ!!勇者のバーカ!!」


「お、おい‥‥流石に不味いって」


酷い言われようだな。おい?

確かに俺がゲノム帝国を壊滅寸前まで‥‥というか壊滅させたのは俺だけどさ、貴族を全員平民に落としたのは知らないぞ?なんでも俺のせいにするな。


「ハルさんって嫌われてるんですか?」


「この状況でまだ本名使うのかお前は?あぁ?」


「‥‥ハッ!スイマセン、ルシウスさん!!」


おせーよ。もの凄くおせーよ。


「つか、なんだってその勇者がコッチ向かってるんだ?勇者パーティーなのに勇者が抜けるのかよ?」


「今の勇者パーティーってのは先代じゃなくて今回呼び出した奴らの事だよ!今は迷宮都市にいるらしいぜ。そこで、先代が喧嘩して逃げてきたんだと」


「ぷっ、勇者ってもう二十過ぎだろ?喧嘩して逃げ出すって‥‥」


お前、顔覚えたからな?絶対に後で絞めるからな?絶対だからな?


「あ、あのぉ‥‥」


「聞きたい。『先代勇者』?」


もう言い逃れ出来ないね。うん。‥‥レティス、暫くお代わり無し。


「そんなっ!?」




         ーーーーーーーーーー



ギルドから出て、三人が住んでいるという家に連れて行って貰う。レティスが泣きながら謝ってきたが、家につく頃には俺の背中で眠っていた。コイツこそ本当に二十過ぎか?


「さて、どこから話すかな‥‥」


泣き疲れて眠ったレティスを、マリアとディアナが使っているベッドに寝かしつけ、居間に移動して四人で話を始める。


「まず私達から良いですか?さっきのお返しをしてません。先に此方から。その後、出来るところまでお話しを聞かせて下さい」


「‥‥わかった。じゃあまずは、ゴルドー子爵の妾になった姫様二人について教えてくれ」


「わかりました。まず、姉のローゼ様は、なかなかお手つきにならず、自分は只の象徴。此処の長はゴルドー子爵だと言う為の飾りなのだと自虐してました。ですが、最近は剣の修行に取り組まれて一心不乱に振り続けています。タイトが言うには、既にD級程度の実現はあるらしいです。次に妹のメアリー様は‥‥」


「待って待って?なんでそんなに詳しいの?おかしくない?これが普通なの?」


「これは俺から話します。二年前、俺達がまだ新人だった頃、ギルドの依頼として『メアリー様の遊び相手を求む』ってのが合ったんです。俺達はなんとかその依頼をゲットして、暫くの間メアリー様の遊び相手をしながら他の依頼もこなす。って生活をしてまして。D級に上がった一年前に、その依頼の適性ランクを上回って依頼は終了。そのままお別れ‥‥の筈だったんですけど、ディアナとメアリー様が想像以上に仲良くなって、ゴルドー子爵が偶に遊び相手として来てくれって仰って下さって、それ以来ゴルドー子爵邸に通ってるんですよ。週一のペース位で」


なる程。なんという偶然。あの時めんどくさいと思いながらも助けて良かった。


「話しはわかった。それじゃ、二人は不当な扱いは受けてないんだな?」


「不当な扱いどころかこの街なら何処へでも自由に行けますし、メアリー様なんて『定着』の技術に興味を持って調べたいからとゴルドー子爵に言ったら、王都から『定着』の技術を使った道具を取り寄せて貰ったとこの間嬉しそうに話してましたよ?ローゼ様も剣の修行の為の専用の剣を買って貰って大喜びでしたし」


‥‥なんか、想像以上の待遇だな。これならハゲ子爵に任せても問題無さそうだな。


「そうか‥‥じゃあ次に、ゴルドー子爵がなんの商談に行ったか知ってるか?」


流石にこれは知らないだろうけど、一応聞いとかないとな。


「えっ?ゴルドー子爵って今出掛けてるんですか?初めて知りました」


‥‥んん?なんか予想外の反応。内容は知らなくてもしょうがないけど、出掛けてる事まで知らないのか?


「最後にゴルドー子爵邸に行ったのはいつなんだ?」


「ちょうど一週間前です。今日の依頼が終わったら、行こうと思ってました」


一週間か‥‥ネルダスに行って商談するしない以前に、馬車ならもっとかかる。着くのは明日か明後日だろう。だけど、コイツ等か子爵邸に行くとすれば夕方。夜に出掛けるにしても一週間前にいて着いてるのは有り得ない。‥‥いや、レティスと会った位置から考えてちょうど時間は合うな。先に奴隷商が着いててもおかしくはないんだし。けど、レティスの口調からしてゴルドー子爵は先にネルダスで商談をしているような口振りだった。


「‥‥あぁくそっ、わかんねーなぁ」


「あ、あのぉ‥‥」


「ん?あぁ、気にしないでくれ。それより、俺を子爵邸に連れてって欲しいんだけど、駄目か?ホラ、あたらしく入ったパーティーメンバーとか言ってさ」


「えっ!?ゴルドー子爵邸にですか?‥‥まぁ、パーティーメンバーって言えばなんとかなると思いますけど」


「その前に、アナタの事。此方はもう情報は喋った」


「ちょっとディアナ!?」


今まで黙って話を聞いていたディアナが、飲んでいたコップを置いて此方を見てくる。


「そうだな。俺の事を話さないとな。‥‥まずは情報ありがとう。俺は、お前らの予想外した通り『先代勇者』だ」


「やっぱり‥‥っ!!」


「凄い、『英雄』が目の前に!!」


俺が名乗ったことでタイトとマリアは子供のような顔でコッチを見てくる。ディアナは‥‥なんか笑ってる。なんで?怖いんだけど。


「『先代勇者』の事情はどうてもいい。けど、これでもう牢に入ってでも魔法を教わりたくなった」


そう言うことですか。そんなに教わりたかったんですね。


「‥‥って、いやいや!!ディアナなに言ってんの!?私は臭い飯なんて食べたく無いわよ!!」


「いやぁ、これは臭い飯食う価値あるぞ?なんたって『英雄』だぞ?」


「うっさいタイト!ちょっと黙ってて!!」


「マリアの言うとおりだ。それに、俺は魔法を教えるとも、臭い飯を食わせるような事をするとも言ってない」


「「ッ!?」」


なんでそんな驚いた顔されなきゃなんないの?だって教えるなんて一言も言ってないよね?マリア以外まともな奴がいないな。


「俺は今、今代の勇者達とは別行動‥‥というか、俺が逃げ出したんだ。だから俺は今お尋ね者みたいな物。そんな奴の側に居るのは危ないぞ?」


「けど、何らかの方法で姿形を変えている。これなら一緒にいても問題ない。第一、アナタの正体を知った私達はもう無関係じゃない。私がアナタをこの事で脅すかもしれない。というか脅す。そして教えて」


「‥‥お前ら、俺の本名しか知らないだろ?俺はギルドで登録した名前で過ごすんだぞ?金髪碧眼なんて腐るほどいるからなぁ。此処で逃げれば俺の勝ちだ」


「『ルシウス』さっきレティスさんが言ってた。それに、『ローニエの街の大司祭の特別手形』これを聞いても私達から逃げる?」


あいつ、本当にお代わり無しだからな!?‥‥ハァ


「俺が教えるのは身体強化魔法『俊足』だ。ただし、お前らが俺を子爵邸に連れて行って姫様二人に会わせるのが条件だ。それでいいな?」


「どうせならこの後の旅も連れてって」


「断る」


どんだけ欲張りなんだコイツは!?俺が何でもOKすると思うなよ!?第一、『浮遊』の魔法が使えないんだよ、この人数じゃ!!


「あの、私達臭い飯食べなくても良いんですよね?」


当たり前だろ‥‥


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