登校
二話連続投稿です
ここまで読んでくれて、ありがとうございます!
あーくそっイライラする。
「ちょ、待てって、ハル!」
「急にどうしたの?そんなにお腹減ってたの?」
「別に」
あー、なんであいつ等の事なんか‥‥くそっ。帰ってきたばっかだし、しょうがないんだけど。けど、なんか‥‥
溜め息を付いて、一旦落ち着く。直ぐに思考を完全に切り替えるのは無理だ。少しずつ、ゆっくりやっていこう。そう思い後ろを振り返り、追ってきているであろう二人を探す。‥‥思ったより距離が空いていた。俺は相当早く歩いていたのだろう。二人とも小走りだ。立ち止まり、二人を待つ。
「やっと落ち着いたな。どうしたんだよ?」
「何でもないって、少し嫌なこと思いだしただけだ」
本当に、嫌なことを‥‥全く、忘れる為に戻ってきたのになんてザマだ。
「まぁ、なんか合ったのかもしれないけど、元気出しなさい。明日から夏休みなんだから」
そういやそうだな。夏休みかぁ‥‥何するかな?花火に海、スイカ割りとかやったこと無いな。今年はやってみるか?
「って言っても、あたしたちに夏休みなんて無いけどね‥‥」
なんか雫にしては珍しく現実逃避してるな。目が遠いぞ‥‥なんだ?そう言えば、夏休みの楽しい記憶が殆ど思い出せないな。何やってたっけ?
「お前、忘れてんのか?ありえねえだろ‥‥‥毎年のことだぞ?」
は?毎年のこと?うーん‥‥あ。
「夏の稽古」
完全に忘れてた。あの、地獄を忘れるとか、俺ホント向こうの記憶が濃すぎてコッチの事殆ど忘れてる。
「そゆこと。ねぇ、朝も思ったけどほんとに大丈夫?さっき、おにいちゃんがなんか壊れてるーって陽菜ちゃん言ってたけど」
あいつ、壊れてるはないだろ。酷すぎじゃねーか?しっかし、夏稽古かぁ‥‥毎日やるんだよな。アッチじゃ毎日稽古だったからな、忘れてた。そう考えるとまだ楽なのか?1ヶ月だけだし。けどまぁ、雫とタツには悪いけど俺は今年、というかこれから先の人生、剣を振ることはない。
「あー、言ってなかったな。俺道場辞める」
もう、剣は握らない。こっちに帰ってくるとき、決めた。‥‥俺の剣は、誰も守れない。だったら、こんな事に時間を費やすのは馬鹿らしい。これからは、普通の高校生として過ごすんだ。
「えっちょ、えぇ!?」
「はぁ!?なにいってんだお前!?」
目を見開いて驚いてる二人を見て、少し胸が痛む。
うーん。流石に驚かれるよなぁ‥‥けど、決めたことだからな。これだけは譲れない。
「悪いな、もう決めてんだ。もう、剣は握らないって。絶対に‥‥‥」
急に魔王に切られた左腕が疼き、右手で押さえる。
「‥‥‥決めたことなら、いいんじゃね?「ちょ、タツ!?」いいんだよ。けど、ちゃんと話せよ?昨日の夜、何があったのか。俺たち、親友だろ?」
うーん。流石親友、気付いてるなぁ。まぁ、昨日(?)までは普通だったからな。そりゃ、夜に何かあったって考えるのが自然かな?
「あぁ、そうだな。‥‥‥話せるようになったら、話すよ」
「まだ、終わってないのか?」
「いや、終わったよ。全部、全部終わった。けど、俺の中では‥‥終わってないんだよ」
「そか」
「あぁ」
ごめんな。もう少し時間が経ったら、ちゃんと話すよ。向こうで、俺がどんな事をしてきたのか。
「いやいや、なにいい話的なことになってんの?」
男同士の友情を再確認したのはいいが、雫は女子、女の子だ。そんなの関係無いよね。
デスヨネー。アナタはわかってくれないよねー。わかってますよ。えぇ、ホントに。
「なにいってんの?アンタ全国大会決まってんじゃん!!お父さんの顔に泥塗るの!?」
あぁ、そう言えば俺、全国大会決まってんじゃん。‥‥棄権しようか。タツも居るし、問題無いだろ。
「ごめん、先生には謝っとく」
「そんなこと認められねぇぞ!ちゃんと出ろ!!」
テメェおいこら親友、さっきの男同士の友情確認はどうした?アァ?
「お前さっきまでわかってくれてたじゃん!?なに、さっきのは嘘なの!?」
「俺は雫の言ったことが全てだから」
キリッとした表情を決めて、アホな事を言っている親友に頭を抱える。
「てめぇ、ぶん殴ってやる!!なにが親友だ!?ふざけんな!!」
「はいはい、お三方ーなにやってんのー皆怖がってるよ?」
後ろから呆れた声が聞こえてくる。これも、懐かしい声だ。俺達のストッパー、皐月の声。
「皐月、おはよー」
『よーっす』
「うん、おはよ。で、なんかあったの?」
「そーなの!聞いてよ皐月!!ハルが全国出ないって言って聞かないの!」
おいこら、他の奴巻き込むな。つか、周り誰もいないと思ったら皆端っこ歩いてただけなのね。怖くないよー優しい先輩だよー‥‥無理か。三年も端っこ歩いてるからな。あぁ、なんか一年を先に歩かせてそれを守るように二年と三年が‥‥俺たちは動物園から逃げ出した猛獣か?いや、それよりも酷いかも。
「えっ!?出ないの?なんで?」
皐月も、さっきの二人と同じように有り得ないと言った表情をぶつけてくる。
「今度な。ほら、学校着いたから。この話はおしまいな」
俺が動き出したので、周りにいた生徒がビクゥッと震えた。違うんです。怖くないんですよ。普通なんです‥‥
無理やり話を切ったので、全く納得せず、後ろで騒いでる二人と、それを何とかしようとしているタツをほっといて、俺は学校に入っていった。