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クレアは‥‥‥まぁ、うん


うーん。少し言い過ぎたかな?

あの後、「もっと頑張らなきゃ」とかブツブツと何度も言ってたけど、大丈夫かね?あんまり無理しないと良いんだけど‥‥‥


予想以上にボロクソに言われ、今日の稽古は無しにしていたにも関わらず、自主的に何時もの訓練メニューというものをしだした雫達。ハルも「手伝おうか?組み手でもやるか?」と声をかけたのだが、先ほどのが余程堪えたのだろう。顔を真っ青にして断り、そのままハルを訓練所から追い出した。因に、いつも訓練の相手をしていたという騎士団の連中と、クレア(ナギの付き人としての仕事はどうした?)が居なかったので、先ほど邪魔をしたり、四人に余計な事を話そうとしていたユリウス殿下が代わりに相手をしている。本人は仕事が終わってゆっくりするつもりだから稽古の相手をしたくないと言って逃げ出そうとしていたが、雫に捕まっていた。ザマァである。


「さて、何しようかね?この国で出来る事って、もう王都出ないと行けなくなるからなぁ‥‥少し速いけど、もう出るかな?」


ハルはこの一週間を使って、獣王の動向にルークの目撃情報。そして未だに何もわかっていない堕天使と旧魔王城跡地に突如出現したという魔王城の情報を集めたり、『勇者』時代の自分に少しでも戻れる様にと自身の強化を行っていた。結果、獣王には今の所動きは無く(何もなさ過ぎて警戒を強めて何が起こっても大丈夫なようにしてるとユリウスが言っていた)、ルークや堕天使、そして魔王城に関しては何も進展が無いとのことだ。ルークや堕天使。魔王城に関してはまぁ、予想通りなので良しとする。というか、堕天使に関して何か情報が上がっていたら逆に怖い。だって俺も会った事無いんだもん。だから今の所、警戒すべきは獣王なのだが‥‥


まぁ、これはユリウスに任せておいて、俺は色々と各地回るか。問題はナギなんだよなぁ。連れてくか?いや、流石に不味いよなぁ‥‥


あっさりと獣王の問題をユリウスに放り投げ、ナギの今後について考える。正直、俺が居なくても問題は無いんだろうが‥‥


「俺、『パパ』だからなぁ‥‥‥」


ハルの中の『ナギ』という少女の存在は、不自然な程に大きくなっていた。この一週間まともに会っておらず、朝はナギが起きる前に出かけ、夜はナギが寝る直前に帰って来て二言三言話して寝かしつけるという忙しいパパさんのような生活をしていた。普通のパパさんなら、こんな生活でも自分の心の中を占める娘の存在はどんどん大きくなるだろう。

だが、ハルは普通のパパさん達とは違う。一週間程前に会ったばかりの少女で、自分達の召喚の余波で此方に来てしまった可哀想な少女。そんな認識だった。なのに、自分はこんなにもナギにことを大切に思っている。それが何故か‥‥考えてもわからない。


「まぁ、良いか」


『まぁ、良いか』こんな程度の問題なのだ。ハルも疑問には思う。が、考えても分からないし、重要なのは自分にとってナギは獣王の件を片付けるよりも大事な存在だと言う事だ。その事を認識し、先ほどの疑問を頭の片隅に追いやる。そして今日はナギの所でゆっくりしようと、歩き始める。


『‥‥‥』


そんなハルの様子を見ていたのは、たまたま暇だった天使だった。だが、いつもの軽い感じの雰囲気は無く、顔を青ざめていた。


あれは、完全にシルの代わりをあの『ナギ』と言う子で補ってますね。前の彼なら獣王でなくとも事件には自分から突っ込んでいって、自分が一番辛く、一番美味しい所を持っていっていたのに。事件の解決を他人に押し付けた。あの時と似てますね。彼女のためなら何でもしていた。国を滅ぼす事なんて簡単にやってのけた。あの時と‥‥‥


天使は迷った。この状態のハルは、なにをしでかすか分からない。だから落ち着くまでは此処に留まるように言った方がいいんじゃないかと。もしくは、女神様に伝えるぐらいの事は‥‥‥

だが、天使はそのどちらもしなかった。

理由として挙げられるのは二つ。

まず一つ目に、ハルはシルを失ってからそう時間が立っておらず、ここでシルの『代わり』を奪ってしまうと、本当に壊れてしまうのでは。と恐怖したから。

もう一つは、前回はキチンと暴走を抑える事が出来たのだから、今回も‥‥と考えたから。だが、天使は前回ハルが暴走したとき、暴走の余波で起こる二次災害を必至に食い止めていたから知らない。何故ハルの暴走が食い止められたのか、それはシルの存在だった。シルがいたからこそ、ハルは暴走を止める事が出来た。だが、今回そのシルはいない‥‥


天使は何事も無かったかのように女神の元へと戻る。後に、今回の天使の行動が最悪の事態を招く事を知らないまま‥‥‥




         ーーーーーーーーーー




「ちくしょう、なんで部屋の主が追い出されるんだよ。おかしくね?」


今日はナギとゆっくりしようと探し、自分の部屋に居ると聞くと、急いで部屋の前へと走り、勢い良く扉を開ける‥‥‥までは良かった。が、部屋の中は良くなかった。自分の付き人の筈なのにここ一週間ナギとばかりいて殆ど会っていなかったキナと、ナギの付き人のクレア。そして何故かセシリアが、人の部屋で着替えをしていた。なんで着替えをする事になったのか知らないが、何故か着替えをしていたのだ!ありえないだろ‥‥‥まず、男の部屋で着替えるのもおかしいし、見られた後のアイツらの反応もおかしかった。

まずキナ。こいつはナギがいるというのに誘って来た。痴女かコイツは?

次にセシリア。うん。コイツの反応は一番まともだった。逆に安心したもん。

そして最後にクレア。コイツが一番謎だったなぁ‥‥‥なんでコイツを最後にしたのかと言うと、コイツはキナの様に誘って来るでもなく、セシリアみたいに叫びもせずに、こっちを一目見てそのまま着替えを再開したのだ。意味が分からん。


「しっかし、キナは着痩せするタイプだったのか。良い事を知った。クレアとセシリアの下着姿は久しぶりに見たが、セシリアはでかくなってたなぁ。クレアは、まぁ‥‥‥うん」


「良いんですよ?五年前と変わらず絶壁だったって言っても?」


‥‥‥すいませんでした。


「あら?なにがすみませんか言ってくださいよ。私たち三人の着替えを見てしまった事ですか?それとも、私の胸の感想で言葉を詰まらせた事ですか?ほら、正直になってください?」


許して‥‥‥


「イヤですよ?」



















その日の夕食は、血の味しかしませんでした。

けど、一番堪えたのは‥‥‥


「おねぇちゃんたちのおきがえのぞくパパなんて、だいっきらい!!」


その日は、一緒に寝てくれませんでした。


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