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ほら、笑って笑って!!


剣と剣がぶつかり合い、火花が飛び交う。赤とオレンジ、そして青色の魔力が絡まりあう。


なんで『硬化』を定着させた上で魔力纏わせた『魔導剣』と、ただ魔力を纏わせてるだけの訓練用の剣が互角なんだ?コイツら魔力配分考えてんのか?まぁ俺の『魔導剣』の強度を考えたら、この魔力量も当然か?


「余裕ね、ハル?私達なんて考え事しながらでも楽勝なの?」


「そんな事ねぇよ?今もギリギリだ。だからその左手にある『火球』をこっちに向けないでくれる?」


「それはよかったわ。けど‥‥そのお願いは聞けないわねっ!!」


雫の作り出した『火球』が、ハルの腹目がけて撃ち出される。いや、撃ち出す。というより、押し付けるようにして、左手を持っていこうとする。が、当然何もせずに見ている元勇者では無い。雫の左横にいたタツが、剣を振り下ろして来る。それを避けてタツの腕を、先日完成した『義手』で掴み、そのまま雫に向かって投げ捨てる。


「のわぁっ!?」


「きゃっ!?」


横から飛んで来たタツに驚きながらも、怪我をさせないようにと『火球』を消せたのは上出来だろう。しかし、回避が間に合わずそのまま壁へと激突。壁とタツに挟まれサンドイッチの具材の部分となった雫は、そのまま気絶。タツも衝撃で動けないようだ。まだタツは戦えると判断し、意識を刈り取るべく追撃に向かおうとする。


「っ!?‥‥ちっ」


が、そこにいつの間にか皐月と契約していた『ハク』と言う精霊の、固有スキルであろう六本の短剣の内一本が邪魔をする。先ほどの雫やタツの攻撃と違い、間合いが決まっておらずやりにくい。ハルのイライラがどんどん溜まっていく。


うっざいなぁこれ。本当に固有スキルか?フィーの固有スキルもこんなヤツなのかなぁ‥‥


まだフィーは固有スキルが使えないので、もの凄い羨ましそうな目で短剣を追う。その様子に、何も知らないハクは、自身の固有スキルが穢れると思ったのか、少し短剣を引く。


「‥‥しまっ!?」


その隙をハルが逃すはずが無く、一気に短剣を通り越して皐月の遠隔治癒魔法で身体を癒していた雫とタツに近づく。が、いきなり頭上が暗くなり足を止める。


「よしっ!これで決める!!『黒流星』」


上を見ていたハルが、声の方へと目を向けると、ドヤ顔になりながら肩で息をしている蓮見が視界に入る。

まじでうぜぇ。そんなことを思いながら蓮見から頭上の黒い煙に目を動かす。すると野球ボールぐらいの大きさの黒い塊がどんどん落ちて来る。このまま自分の周りに落ちてきたヤツだけ『魔導剣』で斬っても良いが、それでは面白くないと思ってハルが魔法を一瞬で構築する。右手で火魔法を、そして左手で聖魔法をコントロールし、二つを重ねる『複合魔法』


「『聖天の炎』」


普通の炎よりも明るく、熱いというより、暖かいというのが合った天使の翼のような形をした炎が、ハルを包むように出現する。蓮見の作った『黒流星』が落ちてくる。が、『聖天の炎』に当たる前に半分ほどの大きさになり、炎に当たると完全に消失してしまう。目を覚ましたばかりの雫を含め、その光景に唖然とする。特に、「これで決める!!」なんて言っていた蓮見は、目を見開き口を大きく空けて固まっている。それから少しして、『黒流星』と『聖天の炎』が消え、デコボコになった地面を、散歩でもしているかのようにハルが『魔導剣』を肩に乗せ歩いて来る。


「蓮見、これ闇魔法の上級だろ?よくこの短時間で発動できるまでになったなぁ‥‥まぁ、まだまだ威力が足らないし、闇魔法ってのは基本、パーティーの補助に使うものだ。本来はこんな大技使わないからな?こういう訓練の時だけだ。ちゃんと覚えとけ。後、お前は魔力がそれほど多くないからな。これからは魔力を増やす訓練を多めにやれ。上限は人それぞれだけど、少なくとも上級一発で動けなくなるってのは無いはずだ。それから‥‥‥」


「まだ俺たちは動けるぜっ!!」


「終わるには少し速いんじゃないかしら!!」


完全に回復した雫とタツが飛びかかる。そんな二人にため息をつきながら


「お前ら、『黒流星』の中に飛び込んで無傷で俺の所まで来る。ぐらいして欲しかったなぁ」


『魔導剣』で二人を薙ぎ払い、もう一度サンドイッチを作る。今度は二人とも気絶したようだ。その様子に満足したのか、満面の笑みでウンウンと頷くハル。親友達のそんな姿見て笑ってるとか、クズ以外の何者でもない。


「くっ!皐月、援護を!!」


二人がやられて頭に血が昇ったのか、またはそんなハルを見てムカついたのかはわからないが、ハクが六本全ての短剣を自身の周りに浮かせて突貫してくる。


「アホかお前は。皐月の契約精霊なんだろ?だったら主から離れるな。お前の主は今んとこ一番戦闘能力が低いんだ」


皐月がハルの動きを止めようと急いで作られた『水牢』を、魔力を纏わせた左手で壊し、『魔導剣』を使い一瞬で短剣を全て叩き落とす。そして『水牢』を壊したまま魔力を纏わせていた左手を、ハクの腹に思い切り叩き込む。


「ごふっ!!」


さすがに魔力の纏った拳は、精霊でも耐えられなかったようだ。そのまま倒れ込み気絶してしまう。残ったのは、少し魔力が戻ったのか、プルプルと生まれたての子鹿の様になっている蓮見と、戦闘能力が一番低い皐月だけ。


「‥‥まいった。降参するね。私だけじゃ勝てないもん」


顔を下げ、俯きながら降参をしてくる。そんな皐月にハルは、頭にそっと手を置き撫でてやる。


「ん。ちゃんと降参できたな。1人で突っ込んで来るとかバカな事やってたら説教だったが、ちゃんと自分達の負けを認める事が出来た。偉いな、皐月」


「お前は負けが決まっても構わず突っ込んで来てたからな。ハル」


外野は黙っとけ


頭を撫でられて嬉しそうな皐月に和んでたのに、外野のせいで雰囲気が壊れた。なんでこんな所にいるんですかねぇ?ユリウス殿下?


「心配するな、仕事は終わらせている。それよりも、タツ達を起こさねばな」


コイツの仕事もっと増やしていいと思うよオロバス?というか増やせ。




              ーーーーーーーーーーーーーー




雫達を起こして、とりあえず反省会


じゃあまずは雫から

全体的に良いんじゃないかと思う。が、最初の『火球』を消した後だな。まだまだ魔法に慣れてないのがわかるな。消してから動こうとするんじゃなくて、二つの事を同時に出来るようにならなくちゃな。あとは言う事無いかなー。お前ほとんど寝てたし。


次はタツだな

お前は魔法を使え!使えるもんは全部使えよ‥‥なに?魔法と剣二つ同時は難しい?知るかそんなもん。自分でなんとかしろアホ。お前は雫よりも剣に込める魔力の量が多いと思ったら最初から使う気無かったのか。なるほどー‥‥‥アホかお前は、ちゃんと使いこなせ。


全く、次は皐月な

特に問題無し。ちゃんとヒーラーとしての役割を果たしてたな。最後もちゃんと降参したし。大事なんだぜ?自分で負けを認められるって‥‥おいユリウス、うるさいぞ。お前らもそんな話に興味持つな。


ったく、次は蓮見だが‥‥まぁさっき言ったし良いよな。んじゃ最後にハクな。

お前はアホか?主である皐月を守るのは良いが、なんで最初一本しか雫達の回復の足止めに寄越さなかった?あんなん本当なら一瞬で抜けたぞ。‥‥‥手加減してやったんだろ?あそこで終わったらつまんないと思って。あと、最後なんで六本全部攻撃に回した?というか、なんで1人で突っ込んで来たんだよ。あそこで普通降参か、皐月が雫とタツを回復させるまで防御に徹するのが普通だよな?なにバカやってんだ。頭に血が昇って突っ込んで来るとかガキかお前は?

ふー、言いたい事はほとんど言えたな。あれ?なんで全員暗いの?ほら、笑って笑って!!


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