びびってナイデスヨ?
「さて、お前ら‥‥‥覚悟はいいな?」
「何時でも良いわよ」
「早く始めようぜ!」
「ハク!頑張ろうね!!」
「なぁ、お腹痛いから辞めていい?」
コイツらに稽古をつけて一週間が経った。支給された装備も、やっと見慣れてきた。四日程前から騎士団の連中の訓練に混ぜて貰い、この四人はある程度使えるようになっている。騎士団長の所に何も言わず連れてって怒られたが‥‥まぁ、此処まで強くなったんだ。後悔はしてない!!俺はユリウス達に稽古つけて貰ってたから、夜しか会ってないんだよなぁ。全部騎士団長に押しつけたから。と言うわけで、さっきティナにコッソリとステータスを見せてもらった。そしたらコイツら‥‥予想以上に強くなってた。驚いたよ。いや、ホントに。
宇都宮 雫
称号 異世界人
侍〔鬼〕
スキル 異世界言語
魔法 火魔法上級
風魔法中級
狭間 龍一
称号 異世界人
侍〔獣〕
スキル 異世界言語
魔法 火魔法中級
涼宮 皐月
称号 異世界人
魔物使い
スキル 異世界言語
魔法 水魔法中級
聖魔法中級
精霊術(使用可)
蓮見 廉太郎
称号 異世界人
漆黒の暗殺者
スキル 異世界言語
魔法 闇魔法上級
影魔法初級
こんな感じのステータスになってました。いやー‥‥上がりすぎじゃね?雫サンはこの短期間で『火魔法上級』まで行ってるとか、おかしいよね?それに、もっと驚いたのが『称号』の〔鬼〕と、タツの〔獣〕ってなに!?聞いたことないよ!?いや、『侍』自体珍しいから知らないだけなのかもだけど!!この短期間で『称号』が変わるとか、あり得ねーだろ!?
次に皐月!!うん。まぁ普通に上がっていってて嬉しいよ?けどね?なんで城から出してないのに精霊と契約出来てるの?城に精霊なんて居ないよね?どっから出て来たのその精霊は!?
そして最後に蓮見!!コイツも規格外だよな。なんなの?なんで『闇魔法』の下位版、『影魔法』が出てる訳?普通逆じゃない?『影魔法』からの『闇魔法』だよね?お前は人間から猿に退化してくのかコラ!?
「なぁ、始めようぜハル!そんでもって、早くダンジョンとか行きたい!!」
コイツ、〔獣〕が出てからやけに好戦的だな。いや、元々か?
「うるっせーな!わかってるよ!明日から連れてってやっから、ちょっと待ってろ!!」
「そう言って、もう三十分以上ストレッチしてるじゃない。もういいでしょ?サッサと初めてよ」
「うるせーな、もうすぐで終わるから待ってろよな」
‥‥‥勝てるのか?このチート集団に?
ハルは、予想を遥かに越えた成長を見せた雫達に、びびっ‥‥‥武者震いが止まらなかった。
いや、別にびびってナイデスヨ?ただすこーし、怖いだけであって。いや、だってさ?こんな強くなるなんて思ってないし?勇者時代とは違うステータスに慣れるだけでこの四日間が終わったから、ちょっと不味いだけだし?本気だしたら一瞬だけどさ?‥‥ホントですよ?勇者は嘘を、つきません。
「なぁハル‥‥俺辞めてもいいか?お腹痛いんだよねー」
ナイスだ蓮見!お前は前回、俺と実践形式でやってるからびびったんだな!よし、これに乗っかって逃げよう。明らかに嘘だけど。
「あ、あー、そうだな。蓮見の腹がヤバいみたいだし、今日は辞めとくかー。明日は外に出るからなー」
「辞める訳ないでしょ。明日本番なら、尚更やっとかなきゃ。ほら、蓮見も嘘つかないの」
コラ雫さん!お腹痛いって(嘘だけど)言ってる人に無理させちゃいけません!!‥‥‥おい、蓮見も雫が恐いからって「治った!!」みたいな顔しちゃダメ。
「よし、蓮見もやるって!そろそろ始めましょう!!」
畜生!!裏切りやがって蓮見の奴!!!アイツを一番最初に潰してやる‥‥‥
もう逃がさない。という意思表示なのか、雫とタツは騎士団用の長剣を抜いている。さっきから黙ってるけど、皐月はなにやってんだ?
「ねぇハク、これどうにかしてよー。こんなに守ってもらわなくても、私大丈夫だよ?」
「大丈夫じゃないですよ。主に僕の心が」
「もー、心配しすぎだってば!これから実践形式の訓練だから、こんなの付けてたら意味ないじゃん!!」
あれって、精霊の固有スキル‥‥‥深く考えるのは辞めよう。気にしててもしょうがない。
「ハルさん。皐月に傷を付けたら許しませんよ」
ハクさん。無茶を言うね。本気で行かないと多分負けちゃうの俺なのに、怪我させるなとか言うの?泣いちゃうよ?
「はぁ‥‥来ないなら、コッチから行くわね」
「待たせすぎだ。もう我慢出来ねぇ!久し振りに本気でやろうぜ、ハル!!」
ホントにやるの?‥‥まだ何も言ってないのに飛びかかってこないでください。
雫とタツが、長剣に赤とオレンジの光を纏わせ飛びかかってくる‥‥なぁに?それ?聞いてないよ、というか教えてないよ。なんでそんなに魔力単体での具現化に成功してるんだよ!!強くなりすぎにも程がある!?
「えぇー‥‥やりたくねぇよ俺。勝てるわけないって」
皐月がハクとの言い争いをやめ、雫とタツの支援を開始しようとしてる横で、ブツブツ言いながら魔力を込め始めた。
せめて1対1でお願いします‥‥っ!!