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滅茶苦茶可愛いな。


ナギに「へんたいさんなの?」と言われ燃え尽きて暫くして、城の裏門が見えてきた。


「パパ!すごいよ!!おっきいドア!!!」


「あぁ、けどこれは裏門だからな、正門はもっと大きいぞ」


「ホント!?」


嬉しそうに聞いてくるナギ‥‥滅茶苦茶可愛いな。天使、いや、女神‥‥‥それ以上だな!!


「あぁ。ホントだ。今度からは正門から入ったり出たりするからな。その時にでも見よう」


「うん!!」


本当に嬉しそうだなぁ‥‥滅茶苦茶可愛いな。


「親バカ速すぎませか?」


うるさいオバサンだな‥‥


「そうですか斬られたいですか。ならそうと言ってくれれば良いんですよ」


「スイマセンっした!マジで勘弁してください!!」


「全く‥‥ほら、入りますよ。着いたら直ぐに中庭に行って下さいね」


なんで中庭だ?アソコでなんかやるのかね?


「訓練は明日からですが、今日は皆さんのステータス確認だそうですよ。私は馬車を置いたら直ぐに追いかけますので」


なるほどなぁ。まぁ、ステータス確認って結構時間掛かるからなぁ。


「了解‥‥着いたな。行くぞ、ナギ」


「うん。クレアさん。あとでね!」


「勇者様が‥‥いえ、ハルさんが変な所行かないようにしっかり見張っててくださいね。ナギ」


「うん!!」


クレアよ、俺はそんなに信用無いですかね?


「はい」


何も言ってないのになんでわかるんだよ‥‥‥




     ーーーーーーーーーー




馬車を降りてクレアと別れ、ナギの手を引きながら中庭へと歩く。その間、ハルは五年経って変わった所がどこなのかを間違い探しのようにキョロキョロと当たりを見回し、ナギは新しい物が沢山あると喜び、驚きながら歩いている。

目を輝かせながらキョロキョロしてるナギ。滅茶苦茶可愛いな。

そんな風にノロノロと歩いていたせいで、馬車を戻しに行っていてハル達よりも遅い到着の筈のクレアが先についており、ハル達が中庭に着いたときには、クレアが鬼の形相で待ちかまえていた。


「ハルさん?何してたんですかね?」


「い、いや?普通に歩いてきたぞ?なぁ、ナギ?」


必死に首を縦に振るナギ。別にどこかに寄り道していた訳では無く、単に歩くのが遅かっただけなので、怒られるような事はしていない‥‥そんなに首を振ってたら俺が嘘付いてるように見えないかな?


「ナギ?私、言いましたよね?変なところに行かないようにと。言いましたね?」


先ほどよりも必死に首を縦に振るナギ。もう泣きそうですね。


「あ、あのー‥‥勇者様と、其方の小さい子は、真っ直ぐに中庭へと向かっていましたよ?‥‥‥歩くのは遅かったですけど」


救世主現る。クレアに向かって俺達の潔白を証明してくれたのは、この城に仕えているメイドの女の子だった。マジで助かりました。


「‥‥どういう事ですか?順番に説明なさい」


「は、はいっ!えっと、私は洗濯物を裏の方へと運ぼうとして持って行くところでした。この中庭を通って、ちょうど裏門の近くを通ったとき、勇者様が見えて、横に女の子もいました。それで、迷ってるのかと思ったんですけど、女の子にここの説明をしていたので、迷ってる訳じゃ無いんだなって思って、そのままそこを通り過ぎたんです」


「‥‥それで?」


「えっと、洗濯物を裏に持って行って担当の子に預けて、戻ってくる時にも先ほど見たときと殆ど変わらない場所でキョロキョロしながら色々と話していました。それを三回繰り返して、四回目でやっと中庭に着いて、お困りのようでしたので話させて貰いました」


「なる程、ありがとうございます。通常の業務に戻って良いですよ」


「はい。では、勇者様。何かあったら遠慮なくお申し付けください」


ハルに向かって一礼をして、そのまま中庭を立ち去ろうとする女の子。


「いやいや、待って待って?君が俺の付き人なの?」


「はい。言ってませんでしたか?付き人に選ばれたキナです。一応、辺境泊の娘です」


‥‥辺境泊の娘?


「は?いや、辺境泊の娘がなんで城で洗濯物を運んでる?そんなのありえないだろ」


普通は辺境泊の娘って言ったらどこかに嫁いだりする。こんな所で働いている訳がない。


「まぁ、その辺はまた今度。今は仕事が有りますので、これで失礼しますね。夜には付き人の仕事に戻ります」


「え?いや、ちょっと‥‥‥」


ハルが止めようとするのを無視して、スタスタと歩いていってしまった。

なんだったんだ?つか、辺境泊って‥‥‥アイツの所じゃねーよな?


「ゴメンね、ナギ。そうよね、アナタにとって此処は見たこと無い物だらけだもんね。歩きが遅くなって色々見ちゃうのも頷けるわ。怒ってゴメンね」


「うぅん。わたしも、ゴメンナサイ‥‥」


「良いのよ、ナギ‥‥‥」


抱きしめ合う二人。なんか俺があの子と話してる間に終わったみたいだな。良かった良かった。


「さぁ、説教も終わったみたいだし、先に進めても良いか?」


「あぁ。悪いな、待たせた」


「全くだ。お前は何時も待たせすぎだぞ?こちらにも騎士団団長としての仕事があるんだ」


「大袈裟だなぁ。そんなに待たせたつもりは無いんだけど?」


何を言ってるんだコイツ?みたいな顔でハルを見る騎士団長。その顔ムカつく。


「‥‥まぁいい。皆には今魔力の流し方を教えている最中でな。見てやってくれないか?私たちでは教えるのは難しくてな」


「あれ?ステータス確認じゃないのか?」


「ステータス確認には魔力が必要だと最初に教えただろう‥‥」


呆れた顔で見てくる騎士団長。めっちゃムカつくなぁ。


「もう無意識でやってたからな。魔力が必要とか覚えてねーよ‥‥まぁいいや、アイツらの所行ってくる。クレア、ナギの相手しててくれ」


「言われなくても」


ハルは騎士団長の後ろで「ステータス・オープン」と何度も唱えているクラスメートの所に向かった。‥‥笑いを堪えながら。




     ーーーーーーーーーーー




「よぉ、なにやってんだ?」


ハルはまず、変なポーズをしながら「ステータス・オープン」と唱えているタツと皐月の所に向かった。騎士団長は魔力の流し方って言ってたのに何をやってるのかな?


「あっ、ハル!!戻ってたの?‥‥腕は無いままだね。目はどうしたの?無かったよね?」


もの凄く怖いこと言ってきますね。目は確かに無かったけどさ、もうちょっと驚いてもいいんじゃ‥‥そう言えばユリウスとか、さっき会った奴ら誰も何も言わなかったな。


「殿下が、『ハルが怪我が直らないままどこかに行って戻ってきたときには、大抵の場合変な風に治って戻って来てるから、今回も腕か目のどちらかは治ってるだろうな』って、昨日の夜に言ってたからな‥‥まさか本当に変な風になってるとは思わなかったが」


あぁー、成る程ね。だから驚かないのか‥‥ところでタツ君?勝手に人の考えを読んで答えるのは辞めてくれないかな?


「はいはい、お前が分かりやすいのが悪いんだよ」


だから読むなよ‥‥


「いいから、早くやり方教えろよ。殿下達はなんか良く分かんなかったんだけど」


「‥‥まぁ、いいか。えっとだな、こっちの世界の人間にとっては魔力を扱うのは息を吸って吐くのと同じなんだよ。だから教えることが出来ない‥‥お前ら呼吸の仕方を教えられるか?」


「‥‥難しいな」


渋い顔で首を横に振るタツ。まぁ、呼吸の仕方なんて教えられないよな。


「だろ?こっちの人間は、呼吸の仕方を教える以外に、魔力の扱いを教えるって難しい事の二つ目があるんだよ」


「ふーん。じゃあ、お前はどうやったんだよ?前回の召喚の時、俺たちと同じ境遇だったんだよな?」


「俺の場合は、聖剣があったからな。あれを出すのと同じ感覚でいったら出来た」


「ずっる!じゃあどうすりゃ良いんだよ!?」


タツ達には聖剣が無いのでハルが使った方法は使えない。それを知って周囲で聞き耳を立ててた連中が文句を言ってくる。


「うるっせーな。多分もう直ぐで使える奴が‥‥」


「出来たぁ!ステータス開けたぞ!!」


出てくる。こう言おうとした瞬間、ステータスを開いた奴が出てきた。

最後まで言わせろよな。つか、魔力の流し方って言ってただろうが。話聞いとけ。


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