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言うなよ‥‥


どうしようかねぇ‥‥

今は精霊王のいる次元からの帰り道。フィーは一人、前を飛んでいる。偶に此方をチラチラと見ながら。


ホント困った、皆になんて言えば良いんだよ‥‥


なんでこんな風に悩んでいるのか。いや別に精霊武装の顕現に失敗した訳ではない。それは問題なく顕現した。顕現したのだが‥‥なんていうか‥‥‥


「ねぇ、ハル‥‥」


「なんだよ、フィー。今考え事してるからさぁ‥‥‥」


話を中断しようとするハルの言葉を無視して今言われたくない言葉ナンバーワンを容赦なく放った。
















「精霊武装、ショボかったね」







「言うなよ‥‥」


そう、ショボかった。元勇者なんだから、精霊武装も凄いだろう。なんていう考えは甘かったらしい。見た目もそうだが、使える能力もショボかった。これでは他の精霊から力を借りる為のハシゴとしてしか使えない。


「まぁ、普段は見えなくなった左目の変わりになるからいいよね‥‥」


「それでもよくねぇよ。なんかこれ片方だけ赤目だし、不自然だろ‥‥‥」


俺の精霊武装、固有名『第三のサード・アイ

能力は、左目の視力をある一定の範囲内だけ自由に飛ばせるというものだ。よく漫画である『千里眼』などの劣化版。精霊王が言うには、どの精霊武装かは完全ランダム。強さや信頼度、戦闘スタイルと言ったものは契約の時だけ必要なもので、その後は関係ないらしい。普通、こういうのは強さや戦闘スタイルが関係してくるものだと思っていただけに、ホントに残念だ。というか、契約の時関係してくるなら、その後も関係するだろ普通?なんで関係してないんだよ‥‥まぁ、今言ってもしょうがない。取りあえずは精霊の力を借りれるだけで良しとしとこう。


「なんか、昔ママが言ってたけどこの『第三のサード・アイ』は完全にハズレ武装で、しかも片方しか現れないなんて、よっぽど運が悪いって‥‥」


‥‥‥そういうこと言わないでくれません?今ホントに泣きそうなんですけど。


通常、両目に効果が発揮されるものなのだが、最高に運が悪かったらしく、片目しか効果が発揮されなかった。‥‥‥両目なら『第三のサード・アイ』じゃない。なんて言われるかもしれない。が、この名前は勝手についていたものなので俺に言われてもしらん。精霊王に聞いたら初代精霊王が全ての精霊武装に名前を付けたので、文句は初代に言えと言われた。いやまぁ、俺は左目だけだから普通に『第三のサード・アイ』で良いけど、昔の精霊術使いでこの精霊武装を持ってた人は苦労したんだろうなぁ‥‥だって絶対からかわれるもん。なんで四つなのに『第三のサード・アイ』なんだって‥‥‥




    ーーーーーーーーーーーーー




そんな暗い感じで俺達は王宮の寝室へと戻ってきた。此方はまだ薄暗い。予定より少し早く帰ってきたようだ。王宮のなかは静かで、起きているものは当番の兵士位だろう。そうなればする事は一つ。


「フィー、遊びに行こうか」


そう、夜遊び。まだ王宮で稽古をしていた最初の頃、次の日が休暇の時はユリウスとシルとの3人で抜け出して、一日タップリ遊んで日付が変わるギリギリで帰ってくる。なんて事をしていた。

ひさびさにやってみるかね、今夜じゃなくて夜明け前だけど。


「ホント!どこ行くの!?」


「静かにしろ。バレたら行けないぞ?」


慌てて手で口を塞ぎ、心配そうに当たりを見回すフィーが可笑しくて、笑いそうになる。

それを必死に堪えていると、まだ手で口を覆ったままのフィーが此方を向いて首を傾げた。


「ブフッ!!くっ‥‥そ、それじゃ行こうか‥‥‥」


「ウン!」


いきなり吹き出したハルを不審そうに見ていたが、直ぐに笑顔に変わりハルの後ろをついて来る。


五年居なくて、戻ってきたと思ったら瀕死状態になったりしてたからなぁ‥‥‥少しの間だけど、目一杯遊ばせてやるかな。


こんな事を考えながら、ハルとフィーは王宮から抜けだした。




      ーーーーーーーーーー




「ねぇ、ハル?」


「なんだぁ?」


「なんでこんな所歩いてるの?城下は逆だよ?」


俺達は正門の反対にある森に来ている。

なんでこんな所に?まぁ、普通聞くよな。だってこっちには何も無いからなぁ‥‥アソコ以外は


「まぁ待てよ。行きたい所があるんだよ」


頭の上に?を浮かべながらもそれ以上はなにも言わずについて来る。


そう言えばフィーは行ったこと無かったなぁ。俺とユリウス、それにシルとティナだけかな?行ったことあるのって。


舗装された道に出てきた。良かった、道が無くなってるとかは無いな。ってことはまだアソコやってんだな。


「フィー、もうすぐ着くよ」


「はーい」


どんどん舗装された道を進んでいく。すると、一気に開けた場所に出てきて、さっき登った太陽が眩しくてハルとフィーは目を覆う。目が慣れてきて見えたのは、五年前よりも少し汚れた孤児院だった。


「なんか所々直されてるなぁ。誰かが穴でも開けたのかね?」


「なにここ?連れてきたかったのってここなの?」


「そうだよ。知り合いがいるんだ」


「ふーん‥‥」


つまんなそうだな‥‥まぁ、しょうがないかな。


「てか、誰も起きてないな‥‥」


「当たり前じゃん!今お日様が登ったばっかりだよ!?」


確かに。普通起きてこないよなぁ‥‥バカした。


「悪い、フィー。城下の方戻るか。また後で来よう」


「もー!この時間無駄じゃん!!」


「だからゴメンって。なんか奢ってやるよ」


うーん。今ぐらいしか来れないかと思って来たけど、バカしたなぁ‥‥フィーをアイツらと会わせたら絶対に仲良くなれると思ったんだけど、しょうがないな。


「ま、待ってください!!」


城下の方へと向けていた足を止め、声の主に向き直る。


「‥‥早起きだなぁ、セシリア。久しぶり。デカくなったな」


「ハルさんっ‥‥お帰りなさい!小さくなりましたね!!」


そこには、再開早々生意気な事を言ってくる、成長した姿のセシリアがいた。


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