契約
主人公視点に戻ります
完全に詰んだ‥‥喧嘩を止めようと治癒しながら歩いてたところを精霊王が逆から歩いてきて、フィーが負けたことを知った俺は大人しく精霊王に捕まった。取りあえずフィーの所に戻るというので着いていくと、可愛らしい寝顔でスゥスゥと寝るフィーが倒れていた。
「精霊王、卑怯だぞ」
「何のこと?卑怯な手は使っていないのだけれど」
「なに言ってやがる。お前フィーに『言霊』教えてない癖に使いやがって、アイツの出来る範囲で喧嘩してやれよ」
「あら、やっぱり教えて無かったのね‥‥まぁ、良いかしら。というかね坊や、そんな事言ってるけど戦場ではそんなの通用しないのよ?わかるでしょ?」
「此処は戦場じゃねーよ。つか、教えとけよ」
全く、自分の娘に何教えたのかぐらい覚えとけよな。
「‥‥さっきは攻撃して悪かったわね。少し熱くなっていたみたい」
「別にいいさ。お前が心配してくれてんのは分かってるからな」
「言っておくけど、今回認めるのはフィーが本気でぶつかってきたから。あの子が反抗したのなんて初めてだから。今回だけよ?次来たときに今以上に危なかったら何がなんでも帰って貰うわよ」
「わかったよ。だから精霊武装寄越せ」
「あのね‥‥わかったわ。付いて来て」
俺はフィーを脇に抱え、精霊王の後へとついて行った。
精霊王が連れて行った場所は最初、精霊王と再会した場所よりももっと深い所だった。段々と暗くなっていく。もしかして騙されたか?と思い魔力を練り始める。
「大丈夫よ、騙してないから練った魔力をどうにかしてくれない?もう直ぐで着くわよ」
‥‥バレてる。
精霊王の言ったとおりそれから数分で目的の場所に着いたらしい。精霊王が歩くのを止め、此方に向き直った。
「ここが、『契約の祭壇』よ。フィーを起こして、始めるわ」
そう言って準備の為に歩いていってしまった。
急いでフィーを起こし後を追う。
「んぅー‥‥まだ眠いのに何で起こすのハルゥ‥‥‥」
「精霊武装を貰うためだよ。ホラ、早く来い」
グチグチと言うフィーを引っ張り連れて行く。
「起きたのね、フィー。じゃあ二人で円の中心に立って」
「あれ?ハルとママ仲直り?」
いや、それはお前と精霊王じゃね?
口に出そうとしたが面倒臭いので黙ってることにした。精霊王も何も言わないしな。
「さぁ、契約を始めるわ‥‥『歴代の精霊王達よ、この者の心を読み、善か、悪か、確かめよ。善で有るならば剣を、悪で有るならばその心‥‥‥喰らえ』」
「ハァ!?いきなり何言ってんだよ!?」
「ちょっと黙ってなさい!!‥‥『契約せし精霊よ、汝はこの者の為ならば、その身を邪精霊に堕とす事が出来るか?』」
ホントに何言ってんだこのアホ精霊王!?
「おい!これが本当に‥‥」
「うるさいわよ!黙ってなさい!!フィー、どうなの!?早く答えなさい!!!」
「はーい‥‥」
俺は精霊王の気迫に押されて黙ってしまった。
‥‥物凄く怖かった。母さんや陽菜が本気で切れたときとよく似ていたなぁ‥‥‥
「で、出来るよ。邪精霊になるぐらい、何でもないよ!私、決めたもん!!もう、後悔したくない!!!」
「よく言ったわ。フィー‥‥」
フィーの言葉に凄く嬉しそうな顔をして、次の言葉に繋げる。瞬間、ハルの前に聖剣と同じぐらいの光を放つ一つの剣が現れた。
「こ、これは‥‥聖剣?」
「違うわ。これは坊やの心を剣の形にしたの。さっき契約の時に言ったでしょ?『善であるならば剣を』って」
「てことは、俺は歴代精霊王達に『善』と認められたってことか」
精霊王は頷きながら‥‥‥
「そうよ。けど、さっきフィーが無理って言ったら心を食べられてたわね。善悪関係なく」
とんでもないことをサラッと言った。
「あっぶな!?そう言うのは先に言っとけよな!!」
「先に言ったら試練じゃ無くなるでしょ?」
「試練?これ試練だったのかよ」
「そう。精霊武装は二人の信頼関係が作り出す物。だから何も言わずに始めたのよ」
なんて奴だ。一歩間違ったら死んでたぞ‥‥‥
「じゃあ、剣が出たから成功?」
「えぇ、多分そろそろ‥‥‥」
目の前の剣が丸い球体になってハルの身体に吸い込まれるようにして入っていく。
「お、おぉ?‥‥なんか暖かいな」
「それで『精霊武装』の契約成功。ちょっと使ってみなさい。どんなものか私も気になるから」
精霊王が一番に興味を示す。
娘の前なのに、子供みたいに目を輝かせる精霊王。
「ホラ、早く見せてよ。ハル!!」
‥‥やっぱり親子だなぁ
「んじゃ、いくぞ!!」




