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元勇者パーティー

『災厄の一族』の戦争を、『三千年』から『千年』に訂正しております。



「大丈夫か?ハル!?!」


「あぁ‥‥こんぐらい、平気だ‥‥‥」


「嘘言わないの!こんなにボロボロになって‥‥っ!!」


「あれ、ティナ?なんで‥‥‥ここに?」


「あんたを助けにきたのよ!治癒するから黙って!!」


くそっ‥‥酷いな。

ハルの左腕は無く、右の手の平はなんかしらの剣で貫かれ、左目も潰れており、足に至っては絶対に立たせまいと太ももと両足を貫かれている。さらにその全ての場所に火傷の跡もみえる。


「誰だか知らんが、僕の親友をこんなにしてくれたんだ。覚悟は出来てるんだろうな‥‥‥」


「ユリウス、そいつは‥‥‥」


ティナの聖魔法に包まれながら、まだボロボロの身体でユリウスに警告をしようとゆっくりと動かす。だが、その動きは無駄に終わった。


「なんだよハル、教えてないのかい?酷いなぁ。僕達は3人一緒の親友だったろ?」


「その、声‥‥‥」


「そうだよ!僕だよユリウス!!久しぶりぃ!!!」


驚きと、憎しみの表情のユリウスと、歓喜の顔のルーク。二人の表情が違いすぎて、まるで、それぞれお互いではない別の誰かと対峙しているように思えた。


ルーク‥‥‥ッ!?なぜ!?あの時、ハルが殺したはず!!


「驚いて声もでないかい?まぁ、しょうがないよね、君の中の僕はもう死んでる筈だもんね!けど、ごめんねぇ?あの時死んでなかったんだよー‥‥‥あっ!それとね?獣王を可笑しくしたのは僕だから」


簡単に、サラリと、まるでイタズラの事後報告をするハルのようなノリで、獣王の狂気の原因を話すルーク。もうやるべき事はやった。獣王は、もう目に入っていない。そんな感じに聞こえた。


「そんな‥‥ルーク‥‥‥さん?」


!?まずい!!


「‥‥あぁ、ティナちゃんか、久しぶりっ!元気だった?」


「そんな‥‥なんで?こんなこと、信じたく無かったのに‥‥‥」


「ごめんね、ティナちゃん」


「いや、いやよ‥‥だって、私の知ってるルークさんは‥‥‥」


「ホントにごめんね?けど、僕は君のことなんてどうでもいいんだ。目障りだから此処から消えてくれないかな?もうハルの治癒も終わったんだろ?」


「貴様っ!口を開くな!!」


獣王の事以上に、どうでも良い。眼中に無い。といった風に淡々と話す。そして、言いたいことは言ったのか、もう視界に入っていても居ないように振る舞っている。


この屑が‥‥妹の、ティナの気持ちを知った上で‥‥‥っ!!


「っ!?‥‥‥っと、危ないなぁ?ハル」


「黙れよ、その口潰すぞ‥‥‥」


ハルは、ティナの顔を己の胸に押し付けるようにして抱え、ルークに向けて魔力弾を放っていた。傷はある程度塞がっているのだろう。服は血塗れだが、破れた隙間からは傷は見えない。


「ハル‥‥‥?」


「悪かったな、ティナ‥‥お前には、会わせたく無かったのに‥‥‥」


「うぅん、大丈夫。ごめんね?無理させて」


ティナはそれだけ言うとハルから離れ、皇女としての顔に戻っていく。もう、大丈夫そうだった。


「ルークさん‥‥‥‥いえ、ルーク・カーライル。アナタをフィルニール第二皇女として、罰します」


「‥‥強くなったねぇ、ティナちゃん。けど、それだけじゃ駄目だよ‥‥‥っ!?」



「確かに、姫様だけなら辛いかもしれんが」


「俺達も一緒なら」


「‥‥‥どう?」


(((決まった‥‥‥)))


そう言って現れたのは、遅れてやってきていたレラ、ラフム、オロバスの三人だった。


「‥‥これはこれは、久しぶりだねぇ?これで元勇者パーティー勢揃い?‥‥‥あっ!ごめんね?そう言えば聖女が変わってるねぇ」


「コイツッ!!」


「落ち着け、ラフム‥‥ルーク、久しぶりだな。何故お前がこんな事をした?六年前は聞けなかったから今聞こう」


この中で一番ルークと長い付き合いであるオロバスが、進んで前に出る。本当は今すぐにでも前に出たかったのだが、ハルの回復が完全には済んでいなかった。


「師匠。久しぶりですねー‥‥うーん。ハルの回復待つのも良いですけど、時間稼ぎは無意味ですよ?」


「‥‥別にそんな意図はない。質問に答えろ」


「やれやれ、師匠は相変わらずですね。しょうがない、乗ってあげます。そうですねぇ‥‥なんで、と聞かれると答えにくいんですよ、だって絶対に信じてくれませんし」


「それでも、答えて‥‥‥っ!!」


「レラは怖いなぁ?そんなに魔力放出しなくても話すよ‥‥僕は小さい頃、ある女の子と将来を誓い合いました。が、その女の子は殺されました。僕の両親によって、家族全員」


『!?!?!』


「あれ?ちゃんと聞いてます?驚いて聞いてなかったは無しですよ?‥‥わかった、続き話しますから」


ふざけ始めたルークを睨みつけると、両手を上げて『ちゃんと話す』と意思表示をしてきた。そして、ゆっくりと語り出す。当時、まだ幼かったルークの、ハル達には考えられないような、悲しい過去を。



‥‥‥僕は何故その女の子と家族を殺したのかと両親に問いました。すると、『その子は世界から疎まれている災厄の一族の末裔だから、殺したの。アナタのためよ』なんて言われてしまいましてね。

確かに、千年前の戦争を始めたのはあのダークエルフの一族です。けど、普通に過ごしていたのに、両親も喜んでくれていたのに。ダークエルフの、災厄の一族と知った途端に殺したんですよ?

幼い僕にはわかりませんでした。今じゃもう混血となり、誰にダークエルフの血が流れているのかよくわかっていない状況なのに、僕にも流れているかも知れないのに、殺したんです‥‥僕はこの世界を嫌いになりました。

千年も経っているのに、まだ差別をしているこの世界が。確かに、戦争で多くの血が流れました。けど、それは今も同じでしょう?

何故、三千年前のあの戦争だけ、特別視してるんですか?何故、もう直接手を下した訳でもない、末裔と言うだけで小さい、僕の愛したあの女の子は殺されないといけないんですか?と‥‥‥



僕は、僕達は、なにも言えなかった。軽々しく口にしてはいけないと思った。あのルークに、こんな理由があるとは思ってもみなかった。‥‥最初に口を開いたのはハルだった。


「確かに千年前の災厄の一族の末裔だからと言って殺すのは間違っていると思う。けど、それなら殺した奴を殺して終わりだろ?なんでこの世界全てを終わらせようとする?」


「ハルは分かってないなぁ?今のこの考え方を作ったのは大人達だろう?だったら大人達は全員殺す。けど、それだけじゃ足りない。子供にもこの考え方は受け継がれている。『災厄の一族の末裔を見つけたら殺せ』っていう考え方がね。だったら、全部殺すのは面倒くさいだろう?だから世界を壊してしまえば手っ取り早いと思ったんだ!どうだい?」


バッ!!と手を広げて、魔力の回復に努めているハルに疑問を問いかける。勿論、ハルの答えは


「はっ!ふざけてやがるな。頭がおかしくなってんじゃねーの?」 


「あはははっ!!そうかも知れないね?だったら、僕をこうした世界を壊さないとね?」


「やっぱおかしくなってんな‥‥おい、お前ら、やるぞ。此処でコイツを止める」


「あ、あぁ‥‥け、けどさ、話だけ聞くとやっぱこれは大人達が悪い気がする‥‥‥」


「あぁ、だけど、それでアイツのやったことが良かったなんてことはねぇんだよ。だから‥‥‥俺が変えてやる。ルーク。てめぇが死んだ後のことは全部俺に任せろよ。俺が災厄の一族の末裔、どうにかしてやる」


「あはははっ!!そうか、君がなんとかするのか‥‥‥なにか勘違いしてないかい?確かにこんな考え方は嫌だ。けど、災厄の一族をどうにかしたいんじゃないんだよ。僕はもう全て壊すって決めてるからね。災厄の一族のことだけじゃないんだよ。これはオマケだ!僕は愛した女の子ためにこれをする!!そして新たな世界で結ばれるんだっ!!!」


「ふざけんな!んなもんその子が望んでるとは思えねぇんだよ!!」


「うるさい!僕は決めたんだよ!!そのために天使と契約を結んだんだ!!!」


「!?天使と、契約‥‥‥!?」


「そうさ!この世界を壊して、壊してできた力を使って新たな世界を作る!!そして僕はそこであの子と結ばれる!!そういう契約さ!!!」


「馬鹿やろう‥‥っ!そんなの天使が聞くわけねぇだろ!!いいか、よく聞け。その天使は堕天使!!だから‥‥」


「そんなの知ってる!だけど、それしか方法がないんだよぉ!!」


ルークが駆け出した。それに反応して、オロバスが前に立ちはだかる。


「ルーク!師匠として、お前を殺す!!」


「師匠には無理ですよぉ!!」


上から下に斬りかかってきたオロバスに、ルークは下から上に斬り、力でルークに負けたオロバスの剣は上に吹き飛ばされた。六年前、直接対峙し、剣を交える前に気絶させられたオロバスにはルークのこの力は衝撃的だった。


(っ!?ここまで違うのか!どれだけ強くなっている!?)


「師匠、死んでもらいます!」


上に向いた剣をそのまま振り下ろそうとしたが、


「!?っち、防御結界か!!」


レラの防御結界が、オロバスを守っていた。


結界を破ったということは、もう守るものはない。なら、ここできめる!


ルークは追い討ちをかけるため、体勢を立て直したばかりのオロバスに向かっていった。そこにユリウスとラフムが割り込み、それを防いだ。ユリウスは右、ラフムは左につき、跳躍して上から斬りつけた。それをルークは剣をクロスにして受け止め、力を溜めて吹き飛ばした。


(なっ!?)


(どうなってんだよ!?!!)


体勢を崩されたユリウス達はルークに斬られかけた。が、そこにレラの火球の上位魔法、火炎球をルークに向け、撃ち出した。その数、なんと二十




※火炎球‥‥基礎魔法 火球の上位版。『級』にして、中級に値する。

通常の魔法士が使える火炎球の数は、2~3個。一番火の適性のある者でも5個が限界である。(ちなみに、レラの適性魔法は水である。まぁ、本気のレラは、もう八十個程出せるんだが‥‥‥)




「っち、やっぱ魔法はうざいなぁ‥‥先に潰すかな!」


「‥‥潰されるのは、アナタの方‥‥‥っ!!」


レラは魔法からレイピアに獲物を変え、ルークを迎え撃つ。そこに結界を張り直したオロバスも加わり、ユリウスとラフムの立て直しを待つ。


(お前ら、聞こえるか!?)


((((ハル!?))))


(悪い。さっき、やるぞとか言っときながら動けなくて‥‥)


((((最初から期待してない))))


(お、お前ら‥‥)


(いいから、どうした?今は手が話せないんだか?)


(そうだったな‥‥一瞬でいい、隙を作ってくれ。俺がデカいの一発いれる)


((((了解))))


そう言って念話を切り、体勢を立て直したユリウスとラフムも加わった。


「なにか企んでるのかなぁ?まぁ、意味ないけど!!」


斬り合っていたレラとオロバスを弾き飛ばし、距離を取ったルーク。


「全員はめんどくさいんだけど!!1対1にしない?」


『誰がするか!!』 


「だよねー」


まず、ユリウスとラフムが斬りかかり、それを左右の剣でそれぞれいなし、柄で背中を叩く。倒れ込んだ二人に追い討ちをかけようとしたところにオロバスが斬りかかりそれを迎撃。斬り合っている間にレラが風魔法を使い二人を救出。それと同時に走り出し、レラの蹴りがルークの顎に直撃。ルークはその衝撃を利用しオロバスの剣を空中に逃げることで脱出。しかしオロバスは追いかけてこない。不信に思ったルークの目が捉えたのは‥‥‥








「終わりだ。ルーク」


ハルの不自然に光った右腕だった。


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