墓参りと昔話
「あー、くそ。やっちまった‥‥‥‥」
俺はユリウス達から逃げ、1人城下を歩いていた。周りは新たな勇者達を称える祭りで賑わっている。俺はそれを冷めた目で見ながら、歩いていた。
よく覚えてないが、花屋にフラフラと入っていき、ある花を買った。そしてまたフラフラと歩き、気付いたらシルの墓の前まで来ていた。
「‥‥シル。ごめん。こんな気持ちで来るつもりなかっ‥‥‥いや、違うな。もう此処には来るつもり無かったんだ。フィーには1ヶ月って言ったけど、ホントは今日にでもでるつもりだ。此処にいると、色々思いだしちゃうからな‥‥‥」
俺は墓の前に花を添えた。
「これ、確かお前が好きだって言ってた花だよな?‥‥‥ごめんな。よく覚えて無かったんだ。これと似てたと思うけど‥‥間違ってたら、ごめんな」
「いやー?あってるよ?その花で!」
「!?」
瞬時にその場から離れ、それと同時にアイテムボックスから剣を取り出し、後ろにいる声の主を見るために振り返った。
「あはハは!直ぐに飛び跳ねるのは変わってないねぇ、あの時みたいダ!‥‥‥いや、あの時はユリウスもいたから、全部が同じってわけでもないね?それに酒場じゃないし!!!」
「なんで、なんで此処にいる‥‥‥っ!?」
「久しぶり!ハルッ!!元気だったかい?」
「ルークぅぅぅぅっゥぅっぅぅぅゥゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
俺の手の中にある剣は、真っ直ぐとルークの首元に伸びていき、その瞬間剣と腕が消えた。
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時は少し遡り、王城
「僕がバカだった。こっちでは五年でも、向こうでは‥‥ん?そう言えば聞いてなかったな?どのくらい経っているんだ?」
「あれ?さっき話してましたよ?勇者決めるときに」
「ん?‥‥‥あぁ、僕は途中から来たからな。聞いてないんだ。レラは聞いてるとはずだが?」
「ハルに見とれてて聞いてなかった」
そんなどや顔で言わなくても‥‥‥
「1日も経っていません」
「1日!?」
これにはレラさん意外全員が衝撃を受けたようだった。
「それより、追いかけないと!」
「あ、あぁ‥‥いや、タツ。今は独りにしておこう。逆効果だ。今行っても」
そう、今言ってもなにも変わらない。だから‥‥‥
「殿下、教えてください。『シル』という女性の事を。ハルは、私達を危険に晒したくないみたいで、その女性の事はなにも教えてくれませんでした。だから、教えてください」
「‥‥‥そうか、勇者だった。ということは皆知っているな?」
その場にいた全員が頷いた。
「詳しく話して貰ったのは私とタツ、それに皐月だけだと思います」
「俺達は勇者決めるときに少し聞いたぐらいだな」
先生‥‥‥いつの間にきたの?
「では、詳しく話そうか‥‥‥此処じゃなく、食堂で話そう。聴きたい者だけ着いてきてくれ」
そう言って殿下は出て行ってしまった。クラスメート全員が行くのは多すぎるだろうということで、代表として私とタツ、皐月、先生が着いていった。
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「ん?他の者は?」
「全員は多すぎると思ったので、私達だけで来ました」
食堂にはレラさんに、ラフムさん。オロバスさんもいた。
「そうか、別に全員でも良かったのだが‥‥‥まぁ、後で話しといてくれるか?」
「はい」
「よろしく頼む‥‥そうだな、アイツがこの世界に来た時のことから話そうか‥‥‥」
そう言って殿下は話し始めた。途中、所々3人に補足して貰いながら。その話は、私達がハルから聞いていたものよりも残酷で、ハルがどの位私達を自分の問題に近付けたく無かったのかが分かる話だった。
そして、全ての話が終わった。
「ふぅ、すまないな。少し長くなった。さぁ、ハルを迎えにいこう」
そう言って殿下達は皆席を立ち扉の方へと向かっていく。私達は動けない。身体が動かない。
「‥‥すまないな、思ってたよりもダメージが大きいようだ。僕達で迎えに言ってくるから、待っててくれ」
そう言われて私達は、ようやく動き出した。
「ま、待ってください。私達も行きます」
「‥‥無理はしないほうがいい。この後、どういう顔でハルに会うの?」
「それは‥‥っ!」
「キチンと気持ちを整理してから会わないと、傷つけるだけ。‥‥少し休んで」
「‥‥‥はい」
「ハルの部屋で待っていてくれ、すぐに連れてくる」
「お願いします」
そう言って殿下達が扉を開けようとしたとき、
『!?』
「な、なにかあったんですか?」
「レラ!!結界の確認!オロバスは父上達の下へ!!ラフムはティナを守れ!」
『了解』
な、なにがあったの!?いきなり大きな声を出して、皆に指示を出す殿下を見て、何かが起こったのはわかったがそれ以上はわからず、私達はただオロオロとしているだけだった。
「すまない。事情が変わった。これより君たち勇者パーティーと父上達を安全な場所に連れて行く。騎士団長が付くが、気をつけてくれ」
「ま、待ってください!なにがあったんですか!?」
「先程、巨大な魔力が一気に爆発した。あの魔力はハルのものだ。その魔力が一気に爆発し、爆発したと思ったら次の瞬間には消え去っていた。多分、今ハルは戦闘中で、魔力が消える程の攻撃を受けたのだと思う」
攻撃?なんで!?
「ハルは無事なんですか!?」
「それを今から確かめに行ってくる。だから君たちは安全な所に‥‥」
「ふざけんな!俺達も行くに決まってるでしょう!?」
「自分の生徒を守れないでなにが教師だ!?俺も行く!!」
「私も!ハルを守る力になりたいです!!」
3人は『安全な所になんて居られるか!!』という風に声を荒げる。が、ここで結界(?)という物の確認に行ってきていたレラさんや、他の確認をしていた二人と、連れられてきたティナさんが帰ってきた。
「‥‥足手まとい」
レラさんが発した言葉は、私の心に重くのしかかった。
「レラ!そんな言い方しなくても!!」
「ティナは甘い。ストレートに言わないと、この子達はきっと勝手に付いて来る」
「だけど‥‥!!」
「いえ、大丈夫です‥‥ハルを、よろしくお願いします『『雫!?!』宇都宮!!?』‥‥2人とも、先生。ここは皆さんに任せましょう。私達は足手まといです」
「けどっ!?」
「タツ、行きたいなら強くなろう?けど、今は無理だから‥‥皆で、ハルを守れるように、次は私達の手で守れるように‥‥‥っ!!」
「‥‥わかった。よろしくお願いします」
3人共、悔しそう‥‥でも、今は無理。なにもできない‥‥‥
「任せろ」
そう言って私達の頭ポンポンと叩いて言ったのはオロバスさんだった。
「小僧にはここで死なれたら困るからな。それに、アイツには返しきれん程の借りがある」
真似するように叩いたのはラフムさん。
「大丈夫。元勇者パーティーが集まってんだ。ちゃんと連れ帰ってくる」
「はい‥‥!お願いします‥‥‥っ!!」
そう言って元勇者パーティーの皆とティナさんは飛び出していった。