絶望と悲しみ
いってー‥‥‥あそこまで殴るか?普通。
前の召喚で貴族というものが大嫌いになった俺は、パーティーに出ず以前使っていた部屋で1人、酒を飲んでいた。
「アイツらには一応貴族の言うことは信じるなって言っといたけど、大丈夫かね?一応ユリウス達に世話を頼んどいたけど‥‥」
「心配なら見に行けば?」
間違えた、1人じゃなかったな。
「今更行くのはめんどくさいし、まだ飲んでる途中なのにメイドに下げさせるのもなんか悪い気がするからな。それにどうせ、明日になって城のなか歩いてたら貴族とは嫌でも顔を合わせるからな。ユリウス達を信じるさ」
「ふーん。それで良いなら良いけどさ‥‥‥しずく大変そうだったよ?」
「どんな感じだった?」
「んとねー、最初は貴族って人達に囲まれてたんだけど、ユリウスとタツが間に入って近寄れなくしてた!タツの気迫凄かったよ!!」
「あぁ‥‥‥それなら大丈夫だな。皐月は?」
「さつきはねーオロバスに引っ付いてたけど、奥さんいるって知ったら落ち込んでたよ!それがあって貴族は別の意味で近づけてなかった!」
あぁ、知ったんだ‥‥‥後でフォロー入れとくよう雫に言っとこう。
「他の奴らは?先生なんかは大人だし、大丈夫だろうけど」
「他の人達は出てきた料理に興味津々で、話聞いてなかったよ!無理やり話そうとする人達には、フィーとレラの魔力で追い払った!!褒めてー」
‥‥‥ご愁傷様です。流石に可哀想だな。代表と話そうとすると王族出てきて、他の奴らは料理に夢中。なんとか話せそうな奴を見つけても謎の魔力が襲いかかる‥‥ホント、ご愁傷様です。
つか、コイツなんかあやふやだな?子供と大人の境目だからか?精霊王がなんか後数年で成人っていってた気が‥‥しないでも無い。
「そだ、ハル!いつ頃此処でてく?」
「ん?なんかあるのか?」
「なんもないけどー、ママに教えとかないといけないんだー。ママとの約束なのー」
精霊王、過保護だなぁ‥‥
「うーん。まだ決めてないけど、1カ月位じゃないか?急ぎではあるけど、アイツらの面倒見なきゃだし」
「わかった!伝えてくる!!」
「今日行くのか?」
「うん。出来るだけ早めにって言ってたの」
「わかった、気をつけろよ。いつ頃帰ってくるんだ?」
「早くて明日の朝で、遅くてお昼かな?」
「了解」
「じゃ、いってきます!」
「いってらっしゃい」
フィーが居なくなり、部屋は急に静かになった。
「‥‥‥寝るかな」
メイドに酒を渡し、(結局全部飲まなかった。ゴメンナサイ‥‥‥)ベッドに横になった。
「ふぅ、やっと元の生活に戻れると思ったのにこれか‥‥疲れたな、寝よう」
俺の意識は次第に薄れていった‥‥‥
ーーーーーーーーーーー
あれ‥‥‥ここ、どこだ?
『ちょっと、起きてよ!もう出る時間よ?早く支度して』
あれ?シル?‥‥‥あぁ、これ夢か。
『そろそろ聖剣も使いこなして来たでしょ?魔族の領域に踏み込んでみても良いと思うの!』
ダメだ、ここで頷いたら‥‥‥
『な、なんで此処に魔王がくるの!?魔王城はもっと先の筈‥‥‥っ!』
ほら、こうなった‥‥‥逃げてくれ‥‥‥もう、あれは見たくない‥‥‥‥‥
『っ!ハル!』
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『大丈夫?怪我はない?』
あぁ、あぁぁぁぁぁぁ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『ゴメンね‥‥‥‥‥‥ハル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大好き‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥』
ーーーーーーーーーーー
「うわぁぁあぁぁぁぁぁぁぁァぁぁァぁぁぁぁぁぁぁァぁぁッぁぁぁぁァぁぁぁっぁぁァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
急にドアが開き、ユリウスが飛び込んできた。
「ハルッ!!大丈夫か!?」
「はぁっ‥‥‥はぁっ‥‥‥っはぁっ‥‥‥ユリウスか」
「ユリウスか。じゃないだろう!?凄い汗だぞ!!顔色も悪い。なにがあった!?」
「何でもない‥‥1人にしてくれ」
「できるわけないだろう!話してみろ。楽になる。姉上か?僕も気持ちは分かる。だから僕に‥‥」
「‥‥‥けねぇよ」
「話して‥‥ん?どうした?」
「楽になるわけねぇだろ!お前に何がわかる!?愛する人を、シルを失った悲しみ、絶望!!これがお前にわかるわけねぇんだよぉぉっっっ!?」
「っ!?」
「あ‥‥‥悪い」
「いや、確かに僕の、僕達の感じている悲しみとお前の悲しみは全くの別物だ。此方こそ悪かった」
「いや、ホントに、悪かった‥‥お前に当たっても、なにもならないのにな‥‥‥」
「‥‥‥ハル?」
「っ!!」
雫‥‥いや、雫だけじゃない。皆いる‥‥‥
「悪い‥‥‥風、当たってくる」
そう言い残し俺は窓から飛び出した。
「ハル!!!」
後ろで雫の声が聞こえてくるが、何も返さない。いや、返せない。