偽勇者認定
「そう言えば、勇者御披露目ってなにするんだ?」
「おまえの時と同じ、のはずだったんだがな‥‥この人数は流石に無理だ。そろそろ決めて欲しいのだが‥‥」
だよなぁ、まだ後ろで騒いでるよ。早くしねーともう着いちまうぞ‥‥‥
「なーに、めんどくせーって顔してんだよ。ハル」
ん?誰だ?この人
「‥‥‥も、もしかして忘れたのか!?そりゃねーよ!風呂覗きとかその他諸々一緒に行った仲じゃん!?」
風呂覗き‥‥‥あ、
「お前、ラフムか!?誰だかわかんなかったぞ!?」
元勇者パーティーの中で、一番年下だったラフムは、五年経ち俺と同い年となっていた。
わかるわけねーよ。どんだけデカくなってんだよ‥‥‥
「まぁ、五年だからなぁ、しょうがねーよ!」
「それで?今度は誰の覗きにはまってんだ?」
「いきなりだな‥‥‥もっと感動の再開的なものはねーのかよ?」
「そんなもんねーよ。ほら教えろ。そして俺も混ぜろ」
「‥‥‥変わってねぇなぁ」
そりゃ、1日経っていませんから。
「その話は後な。そろそろ限界だからさ、急いでくれって言いに来たんだよ」
「ちゃんと仕事してんのな」
「当たり前だろ。人をなんだと思ってやがる」
「変態のクソガキ」
「このやろ‥‥」
だってそれしか無いし。
「良いから早くしろ。本当にヤバいぞ。父上が涙目だ」
いつの間にか着いていたらしい。‥‥‥大の大人が泣きそうになりながらこっち見んな。
「わかってる‥‥‥おい!決まったのか!?」
『まだ決まってない!』
おっせーよ‥‥‥
「あー、もう!先に俺達が出るから、後からこい!もう全員だ。勇者なんて決めなくていい!!めんどくせぇ!!!」
「お前が決めろっていったんだろ!?」
「そりゃねーよ!」
「私のニート生活どうしてくれんの!?」
「知るか、早く決めないおまえ等が悪い!レラ、フィー、ユリウス、ラフム、いくぞ!!オロバスはどこだ!?」
「此処に居るぞ。小僧、久しぶりだな」
老けたなーオロバス。
「よし、色々と話したいけど、取りあえずいくぞ!」
「「「「「了解」」」」」」
「雫、タツ、皐月!コイツら落ち着かせてから、俺が合図したらででこい」
「わかった」
「行ってこい」
「あのオジサマ誰!?」
1人なんかおかしいのいるが、まぁ大丈夫だろ!あと皐月、オロバスは既婚者だぞ。
ーーーーーーーーーーー
「‥‥おぉ、やっときたな!後は任せたぞ!!」
コイツ丸投げしやがった。皇帝のする事じゃねーよ。
「ったく‥‥‥レラ、黙らせろ」
「ん‥‥‥どーん」
その瞬間、俺たちの頭上で爆発がおき、騒いでいた国民達が、一斉に静まった。
「サンキュー‥‥皆、驚かせて済まない!先程、今代の勇者が召喚された。これより、勇者認定の儀を始める!!」
‥‥‥あれ、なんでこんなに静か?なんかやっちゃった?
次の瞬間、先程よりも大きい騒音が鳴り響いた。
「勇者様だ!」
「勇者様ってもう少し大きく無かったか?」
「ばか!俺は戦場で一緒に戦ったんだぜ?小さくなってようが間違えねぇよ!」
「うーん。五年経ってんのに憶えてるもんだな」
「当たり前だろう。お前はこの世界を救った英雄なんだから、五年程度で忘れるわけ無かろう。‥‥‥多少小さくなっていてもな」
このやろう‥‥‥自分がデカくなったからって。
「まぁ、五年分老けるよりは小さくなる方がましだな!」
「老けただと!?」
「そうだよオッサン!」
「オ、オッサン‥‥‥斬り捨てる!」
「やれるもんならやってみろ!」
「こらこら、こんな場所でケンカを始めるな!殿下もです!!国民の前ですぞ!?」
「だか、あいつが!」
「会えて嬉しいのは分かりますが、少し堪えてくだされ」
へー会いたかったんだー
「な、なにをデタラメを‥‥こら、ハル!ニヤニヤするな!!」
「やっぱり勇者様といると生き生きしてるなー、殿下」
「だなぁ、あれこそ本物の殿下だよな!」
「いっつも本物だぞ?」
「じゃ、本当の殿下だ!」
「お前、いっつもは本当の殿下じゃないんだ?」
「ハル‥‥‥本気で斬るぞ?」
アハハハハ‥‥‥からかいすぎた。あの目はマジだ。
「さ、さて、今代の勇者達にきてもらおうか!」
『フィー、演出頼んだ』
『はーい、了解!』
幻影の魔術で煙を出し、その中を雫を先頭に歩いてくる。
「こいつらが今代の勇者様だ。皆俺の知り合いだからな。優しくしてやってくれ!城下に降りたりする事もあるだろうからな!!‥‥‥手でも振ってやれ」
雫達が手を振ると、更に大きな歓声が響いた。
‥‥圧倒されてるな。
苦笑いしながら見ていると、懐かしい宝剣を持った皇帝が歩いてきていた。アレ取りに行ってたのか。
「待たせたな。それで?偽勇者は誰に決まった?」
「決まんなかったから、全員勇者ってことにしました」
「は?全員?大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。俺の登場でなんかハイテンションになってるんで、余程のことがない限り疑問には思わないでしょ」
「そ、そうか?」
そうですよ。
「うむ、ではこの宝剣はどうする?渡さん訳にもいくまい?」
「詳しいことは後で話しますが、俺の『勇者』の素質を分け与えた人物がいるので、ソイツにしようかと」
「素質を分ける?そんな事が出来るのか?というか、素質とはなんだ?」
「それは後で話しますから、今は先に進めましょう」
「うむ‥‥‥そうするか。では、その者を前に」
「はい‥‥‥雫以外は後ろに下がってくれ。雫、来てくれ」
「なに?」
皆まだここにいたかったのか?さっきまで嫌がってた癖に。‥‥‥そんな目で見んなよ。
「俺が言うとおりに動いてくれ。これからお前を勇者代表として宣言するから」
「は?なんで私?」
「俺以外の勇者候補はお前しか居なかったから」
「では、始めるぞ‥‥‥‥
ーーーーーーーーーーー
それから雫は拙いながらも勇者認定の儀をやり終えた。終わった後にボコボコにされたが‥‥‥雫以外の奴らにも。まぁ、そうだよな。
それからは城下では祭り、城では勇者達と貴族、王族だけのパーティーが催された。




