勇者は誰?
「いや、お前がやれよ」
なんて言ってくる陛下を無視して、俺はクラスメート達を連れ、いつもの部屋の前に来ていた。
「なぁ、ここでなにするんだ?」
「みんな不安そうで今にも爆発しそう何だけど」
「中で話すから、もう少し待ってくれ」
「そういってどんだけ経ってると思っている‥‥っ!!」
うわー、先生顔コワーイ。さっきまで吐いてた人とは思えな~い。
「ちょ、ちょっと待ってて下さい。レラ、フィー、いくぞ」
『はーい』
ーーーーーーーーーーーー
うん。五年経ってるから、なんか所々古くなってるな。
「はやくやっちゃお?」
「そうだな。んじゃ、複合魔法『拡張』の術式を構築‥‥‥俺が大雑把にやるから、細かいのよろしく」
「ん。りょかい」
「よし、いくぞ。フィー、頼むな」
「はーい!」
息を大きく吸い込み、魔力を込めた。
『拡張開始』
うーん。やっぱり魔力吸われる感覚懐かしすぎてやばいな‥‥
「大丈夫?顔つらそうだよ?」
「大丈夫だよ。これぐらい」
やっぱ『魔力無限解放』無くなったのは痛いな‥‥‥思ってたよりもつらいぞ。
「‥‥‥‥拡張成功!」
よし、元々の部屋の大きさから三倍近くまでになってるな。これ三時間位しか持たないハズレ魔法だけど、こういう時は役にたつよなー。
「よし、皆を中に入れよう」
ーーーーーーーーーーーー
「さて、話して貰うぞ?蓮川。此処はどこで、なんで俺たちは此処にいる?そしてお前は何者だ?まぁ、さっきの会話を聞いてたから、ある程度の予想はつくが‥‥」
さっき吐いてたのによく聞いてるな。
「まぁ、一個ずつ説明しますね。此処はフィルニール皇国の城で、俺達は今回の勇者として此処にいます。そして俺は先代の勇者で、昨日の夜召喚され、昨日の夜にまた戻ってきました」
「‥‥‥‥まじか?」
まじです。つか、聞いてたんじゃないの?‥‥‥勇者とは言ってなかったっけ?
「今日なんか様子可笑しかったのはそのせいか‥‥まてまて?昨日の夜召喚されて、なんで昨日の夜に戻ってきているんだ?」
「そこら辺は女神達のおかげですね。二年こっちの世界にいたんですけど、時間も身体も混乱しないようにって戻してもらいました」
「今度は女神‥‥」
混乱してるねー。ほかの奴らは信じられないみたいな顔だな。当たり前か
「まぁ、話はわかっただろ?それでだな、俺達はこれから、偽勇者役を決めなければいけないんだが‥…誰かやりたい人!」
‥‥まぁ、いねーよな。
「と、とりあえずで良いんだよ。他の案が決まるまでの。な?」
「いや、お前がやれよ。先代の勇者なんだろ?」
「そ、そうだよな!まだよくわかってないけど、お前が先代なら今回もお前がやった方が色々楽じゃん!」
「それは断る。俺はもう勇者はやらない」
「な、そんな勝手が許されんのかよ!」
「そうだそうだ!お前が勇者やるんなら俺達必要ねぇんだから元の世界戻せよ!!」
「はやく帰りたい!なんでも良いからはやく決めてよ!!」
「だまれ‥‥っ!なにも知らない奴らがハルに全部押し付けようとするな‥‥‥っ!」
「ヒッ!?」
「な、なんだよ!どうせお前も元勇者パーティーなんだろ!?なら蓮川の方が良いだろ!!」
「そういうことをいってるんじゃない‥‥っ!」
まったく、皆怯えてんじゃねーか‥‥。状況把握をちゃんとしてるヤツもいるな。てか、俺が良いって所も否定しろよ‥‥‥
「レラ、もういいよ。魔力抑えろ。後は俺が話す。外出てろ」
「でもっ!」
「良いから」
ありがとうな‥‥‥
「‥‥‥わかった」
よし、
「さて、もうおまえ等も怖がらずに済んだだろ?それよりも早く決めよう。もう時間がない」
「だ、だから、お前がやって、俺たちは帰るから‥‥」
「それは無理だな。召喚陣が一緒だから全員一緒じゃないと帰れない。だからおまえ等は此処に残るしかない」
まぁ、他にも帰る方法がない訳じゃないけど‥‥これは賭けだしな。言わなくて良いだろ。もっと酷くなるかもだし。
「そ、そんな‥‥‥‥‥」
「ふ、ふざけんなよ!」
「いやぁー!!」
「はぁ、落ち着けおまえら、あっちに戻るときは時間は数時間経ってるか経ってないかぐらいだから問題ないよ。まぁ、死んだらもう戻れないけど」
「ふ、ふざけんなよ!」
「どうすんだよ!」
「んー、じゃ、こっちに残りたいと思えるような情報をやろう。男子共、この世界にはエルフに獣耳、しかも全員が美少女!勿論人間もな、しかも奴隷もいるぞ!戦って惚れさせるもあり、金を集めてこの世のものとは思えないほどの美少女を買って自分の物にするもよし!勇者パーティーってだけで女の子なんて群がってくる!しかも、こっちのことは彼女にばれる心配なし!‥‥‥これでも帰るのか?」
『‥‥‥‥‥‥残るー!!』
だろうな。思春期男子はこんなもんだろ‥‥‥俺も最初は同じようなもんだったし。後の事はなんも言ってないから責任持たんよ。
女子の目がゴミを見るような目だな‥‥‥‥‥女子もフォロー入れとくか。
「女子にも良いことを教えてやろう。この世界の男は向こうみたいにヒョロヒョロなのは居ないぞ。確かに冒険者やってるやつはゴツくて暑苦しいが‥‥‥中には俺より勇者みたいな感じの奴もいる。まぁまぁかっこいい奴も多いよ。しかも、そこでなにも言わずにただ突っ立ってるユリウス君は王族!『!?』
そして次の皇帝!コイツの場合正妻は厳しいかもな‥‥まぁ、世界救えばその限りでもないが。どうする?」
『僕に話をふるのか!?』
『まぁ、いいじゃねーか。どうせまだ結婚してないんだろ?』
『それはそうだか‥‥‥っ!?』
「ちょ、ちょっとぐらいなら‥‥‥」
「ねぇ、なんか残ってもいい気がしてきた‥‥‥」
「どうせ時間そんなに過ぎないって言うし‥‥‥」
『ほら、お前のお陰でなんとかなった!』
『後で覚えてろ‥‥』
『まぁまぁ』
よし、もう一押しだな!
「更に、これから国民の前で勇者御披露目があるからな!此処で出とけば今後色々とやりやすいかもよ?」
「俺が!」
「いやいや、俺がやる!」
「ちょっと、こういうのはレディファーストよ!」
「んなもん関係ねぇ!」
よし、これで問題ないな。
「で、なんでおまえ等はそんな難しい顔してんだよ」
「いや、だって‥‥俺達が勇者の代わりって、出来るのか?すぐにばれるんじゃ‥‥‥」
心配性だな。タツは‥‥‥
「大丈夫だよ。おまえ等が使い物になるまでは俺が前にでる。その後はおまえ等に此処は任せるけど」
「その後って、どこかいくの?」
「あぁ、俺はちょっと昔の因縁を片づけないといけないんだよ。今回こっちに来る決意を決めたのも、女神にそれを聞いたからだ」
「大丈夫なの?」
おまえもか‥‥雫
「大丈夫だよ!ハルは先代勇者だよ?問題ないって!」
「けど‥‥」
皐月には一番頑張って貰わないとな‥‥
「こいつらの面倒はお前に任せるぞ?暫くはここに居るが‥‥」
「うん!わかってる!!」
頼もしいな。暴走を上手く止めてくれ‥‥‥‥
「さて、そろそろ決まったか?」
「だから、俺が勇者だって!」
「あんたみたいなのが勇者やれるわけないでしょ!」
「なんだと!?」
‥‥‥はよ決めろ
「殿下、先代勇者様。そろそろ来てくれとの陛下からの伝言を伝えに参りました」
よし、行くか。




