衝撃の再会
「ついたー!」
久しぶり(?)だな!
「おぇーっ」
「きもちわりぃ‥‥」
「吐きそう‥‥」
「なんだこれ‥‥」
「うわっ、先生が吐いたぁ!?」
「きったねー」
うーん。カオスだな。
クラスメート全員が床に座り込み、顔を真っ青にしている。初めての感覚に身体が追い付いていないのだろう。俺は平気だったが。
「え、えっと‥‥‥勇者様方?そ、その、召喚に応じて下さり‥‥‥これ喋って大丈夫なの!?」
聖女の戸惑う声が後ろから聞こえてくる。まだまだ駆け出し。といった感じだ。シルの時とは違って、人数多いし召喚場所ズレたりってハプニング多かったからな。面白そうだけど、助けてやるかな?
「ごめんなー聖女様。アイツら初めての転送だから‥‥‥」
俺は喋れなくなってしまった。言葉に詰まって、何を言えば言いのか、何を言おうとしていたのか忘れてしまった。何故か。それは‥‥‥
「‥‥‥シル、なのか?‥‥」
「‥‥‥久しぶり!ハル!!」
シルが、死んだ筈の、最愛の女性が、ハルに笑いかけていたからだ。何故生きているのか?どうして五年経ってる筈なのに、あの時の姿のままなのか?どうしてこの事を騎士団長は言ってくれなかったのか?‥‥‥
色々と疑問は頭の中にあったが、それらを口にする前に身体が動いていた。
「シルっ!!」
「キャッ!?ちょっ!ハル!?」
シルだ、シルが目の前にいる。抱きしめてる。心音を感じられる‥‥‥今度こそ‥‥今度こそ‥‥‥守‥‥‥
「ちょ、ちょっとハル、落ちついて!私はお姉ちゃんじゃない!!妹のティナよ!!忘れた!?」
「‥‥‥え?ティナ?‥‥‥確かにつけてる香水が違うし、胸もアイツの方がぁ!?」
「悪かったわね?胸が小さくて?‥‥これ、打ち首」
は、破壊力が増してますね、ティナさん‥‥‥けど、鳩尾はダメです。
「そ、それは不味いですって、王女!今回の事は不慮の事故で‥‥‥」
「私だって、抱きつくくらいなら許すわよ!?たまに自分自身間違えそうになるし!けど、この男は私の胸小さいって!!小さいって言ったのよ!?」
「は、はぁ‥‥」
「はぁ、それぐらいにしないか、ティナ。コイツが無礼なのは昔からだし、事実小さいだろうぅっ!?‥‥お、お前、実の兄を殴るか?」
今のは自業自得だろー。アホだなーコイツ。
「いてて‥‥‥まぁ、なんにせよ、悪かったな、ティナ。余りに似てるから(胸以外)間違えちゃったんだ。許してくれ」
「今なんか余計なのが混じってた気がするけど、まぁ良いわよ。今回は許してあげる」
「サンキュー」
「じゃ、私は他の方達の所行ってくるわ。なんか大変そうだし‥‥‥」
先生まだ吐いてる。クラスの奴らは何とか持ち直したようだ。
「よろしくお願いします」
ティナは俺の言葉を聞き、嬉しそうな顔をしながら歩いて行った。
なんだよ、俺がお願いするのそんなに嬉しいのか?普段しないけど偶にはするんだぞ!
「ふぅ、やっといったな‥‥‥久しぶりだな。ハル」
‥‥‥あぁ、久しぶり、ユリウス。
ーーーーーーーーーーーー
「なんかデカくなってないか?お前」
最後に。つか、昨日会ったときはそんなに違わなかったのに‥‥‥
「まぁな、だがおまえの場合二年前に身体が戻っているのだろう?だったらしょうがないんじゃないか?こちらでは五年経ってるしな」
うーん、だからって、ここまでデカくなるとか‥‥‥‥
「ずりーよ‥‥」
「いや、別にズルくはないだろう?ま、まぁいい。そんなことよりも、よく此方にくる気になったな?」
そうだ。まだユリウスは知らないんだもんな。ルークの事、そして堕天使の事も。サッサと話してしまおう。そんでもって、面倒な事はいつも通り丸投げしてしまおう。
「あぁ。実はな‥‥‥」
「ハル。久しいな。話を遮るようで悪いが、勇者様を教えてくれんか?此方も急いでおるでな」
あ‥‥‥良いタイミングで来ますね。そして、白髪増えましたね。
「えっとですねー、陛下。まずはお久しぶりです。それでですねー」
「ん?まさかお前か?だとしたら‥‥」
「いや、俺じゃなくってね?そのー」
い、言いづらい‥‥そんな、期待を込めた目でコッチを見ないてっ!
「なんだ?早く申せ」
「どうしたんだ?」
「じ、実はですねー最初は俺で、嫌だって言ったら雫って女の子になりかけて、それも嫌で、じゃあ要らないって言ったらホントに勇者無しの勇者パーティーにしたんですよね、‥‥‥女神が」
『‥‥‥ハァァァァァァァァァァァッッ!?』
王座の間に二人の声が響き渡る。口からゲロを垂れ流していた先生を含め側に控えていた兵士までもが驚いた顔で此方を見ている。が、そんな周りの様子に気付かずに二人は叫び続ける。
「お、怒ってる?」
『当たり前だ!』
「ど、どうするのだ!?国民に今日は勇者召喚の儀式を行うから、応じて下さったらそのまま御披露目するというのを、もう知らせているのだぞ!?」
なにやってんのこのオッサン。俺の時はそんなの無かったじゃん?いや、あったけど直ぐじゃ無かったよね?ある程度落ち着いてからだったよね?
「し、しかも五年前の勇者パーティー全員集めて、新たな勇者パーティーの選別も行うと言って貴族達に各地から集まって貰っているんだぞ!どうする!?」
「親が親なら子も子だな!?」
ホントなにやってんの!?アイツら集めたら確実に何か起きるだろ。というか、コッチに被害が‥‥
「お前のせいだ!」
「どうしてくれる!?」
えぇー、どうしよ?つか、女神のせいじゃね?‥‥‥要らないっていったの俺だから俺か?いやでも‥‥
「もう、最終手段だな」
「父上もその考えか?」
「うむ」
なにすんだ?なんか面倒くさい事考えてるよね?巻き込まれるのはゴメンだぞ。
『お前に勇者をやってもらう』
「断る!」
ふざけんな!さっき勇者はいないって言ったろ?別に、勇者いなくても困らないと思いますっ!!
「お前は先代だ!誰も文句言うまい!?」
「そうだ!それに勇者パーティーも揃っている!新たな勇者を召喚するまでの間だけでいいから!」
これ、言ったら怒るかなぁ‥‥‥
「えっとだなー、俺のいた世界では俺が一番勇者としての素質があって、そこから召喚すると‥‥‥」
「お前以上が現れる事はないと?」
「そうなりますね」
「やっぱ、お前やれ」
「やだよ。もう勇者の力は持ってないし」
「国民達にそんなことはわからん。問題ない」
「アンタ自国の民を騙すのか最低だな」
「時には必要なことよ!」
あぁ。どうすんだよ。俺のせいなの?いや、俺のせいだけどもっ!!
「ハル!!」
「グフゥッ!?」
絶対にやりたくない『勇者』をやれと言われ、なんとか回避しようと頭を悩ませていると、突然腹に衝撃を感じた。と思ったら、俺の身体は玉座の後ろに吹き飛んでいた。
「「ハル!?」」
「いってて‥‥‥誰だよ」
「ハルだ!ハル!!ハル!!!」
おふぅ‥‥‥誰だか知らないけど、ご馳走様ですっ!!
胸の感触がダイレクトに俺の胸に当たり、吐息が耳に当たる。くすぐったくて、凄くヤバいです。
「ハル‥‥‥忘れた?私だよ‥‥‥?」
顔をガバッと上げて、コッチを見てくるが、僕、こんな美人のお姉さん知りません。誰でしょう‥‥って、泣いたっ!?
「まってまって、泣かないで!?‥‥って、まさかお前!?」
「思い出した?」
「あぁ‥‥‥久しぶりだな。レラ!」
「うん。久しぶり、ハルッ!!」
うーん。昨日会ったときはペタンコで、今日会ったらデッカくなってるってなんか変な感じだな。
「心外‥‥‥五年前も今も、変わらず魅力的‥‥‥っ!!」
「ぐるじっ、首しまっでる‥‥‥」
前に抱きついていた筈なのに、スルリと後ろに回られ首を絞められる。
死ぬって、これ!あーけど、背中は天国だな‥‥‥やっぱ死ぬ。
「や、やりすぎだ!レラ!!」
「ん、ユリウスは黙ってる。これは私達の問題‥‥っ!」
あ、向こうで獣王が手振ってる。やっぱ死んだか?‥‥‥いやいや、まだ死んでねぇって!俺も、獣王もっ!!
「ちょ、ストップ。謝るから‥‥」
「‥‥‥今回だけ。次はない」
こえーっす。レラさん。胸もデカくなって、怖さも倍増ですか。まぁ、魔法から物理攻撃に変わっただけマシだな。魔法は下手したら本気で死ぬからな。
「ね、ねぇ‥‥」
「ん?あぁ、どした?雫」
青い顔していた雫が、トントンと背中を叩いてくる。どうやら、雫だけ此処まで来たようだ。他の奴らは最初の所でキョロキョロとしているのが見える。
「みんな落ちついて、これからどうすればいいのか聞いてくるんだけど‥‥‥」
「ティナはなにやってる‥‥」
「なんかこの後の準備あるからってどっか行っちゃった」
アイツは‥‥そういう事は言ってからいなくなれよな。
「しょうがないな。俺が話すから、いつもの部屋開いてるか?」
溜め息を付いて、ホッとした表情のユリウスに『いつもの部屋』が使えるか聞いてみる。まぁ、使えないって言われても、無理やり使うけどな。
「ん?あそこか?今は空いてるが、全員は入らないぞ?」
「わかってる。だから‥‥‥レラ!フィー!!」
『なに?』
今までハルの中にいたフィーが外に出てくる。そう言えば大人しかったな。直ぐに出てきそうなのに。
「うおっ!?フィーにはもう会っていたのか」
「あぁ。さっき来る途中にな。レラ、これから複合魔法の『拡張』を使う。フィーは俺のサポートだ」
「ん。了解」
「はーい!」
「ホント、何でもありね‥‥‥みんなビックリしてるわよ?」
何でもは出来ないですよ雫さん‥‥‥そして後で話すからそんな目で見ないでクラスメートの皆さん。先生、口を拭こうか。汚い。
「陛下、話が終わるまで民衆をどうにかしといて下さい」
「それはいいが、何をするつもりだ?」
「決まってます。偽勇者を決めるんですよ!」
「‥‥‥はぁ?」




