城へ
雫達と一旦別れた俺は、此方に向かってきている騎士達を迎えに行くことにした。
『フィー、なにかあったらさっきの女の子の所に行け』
『あのしずくって子?』
『そうだ』
これでなにかあってもアッチは大丈夫だな。
フィーと話している間に此方に着いたようだな。警戒されてるけど‥‥‥
「お前は、勇者に関係のある者か?」
「あぁ、そうだな」
「おぉ!では、あなたが勇者様ですか!?」
「いや、違うけど?」
「え?」
「ん?」
関係はあるとは言ったけど、勇者とは言ってないぞ?なにいってんだ?コイツ。
「で、では勇者様は誰だ?」
「居ないけど?」
「ん?」
「ん?」
ステータス画面をどうやって見るのかもわからない奴が、勇者かどうかわかるわけないだろ?それにホントに居ないしな。
「まぁ、勇者の件は置いといて、お前たちフィルニール皇国騎士団の奴らだろ?ちょっとユリウスに会いたいんだけど、どうにかなんない?」
「な、貴様!勇者でもないのに、殿下に会わせると思っているのか!?それに、呼び捨てとはなんだ!不敬罪で切り捨ててやる!!」
うわー、コイツホントに騎士団かよ?普通は王族の知り合いって可能性疑うもんじゃね?あれ?違うか?
「た、隊長、やめてください!この人たちは今来たばかりでなにも知らないんですよ!?」
おぉ!話の通じる奴もいるじゃん!!
「えぇい、だからお前はアホなんだ!今来たという奴が殿下の名前を言えるわけないだろう!!スパイかなにかに決まっている!!!」
あ、そう言えばそうだな。普通召喚されたばかりの奴って、そんなもん知らねーよな。失敗した。
「そ、そう言えばそうですね!スパイめ、切り捨ててやる!!」
ホントにアホの子だな。
「おい、良いから早く上の奴ら呼んでこいよ。そうだな、これを護衛騎士団長にでも渡せばわかる」
魔力と殺気を少しだしながら、王家の紋様の描かれた短剣を取り出した。
いやー、ユリウスから預かったまま忘れてたの思い出してよかったー。
「わ、わかった。待ってくれ、殺さないでくれ」
ん?この程度で耐えられないとか‥‥‥
「おい、お前ら本当に騎士団の連中か?それとも五年で此処まで不抜けたのか?」
「ご、五年?なにを言っているのかわからないが、と、取りあえず渡してくるので待っていてくれ」
「ん?近くにいるのか?」
それにしては反応がないんだが‥‥‥
「ゆ、勇者様方を一刻も早く城に連れ帰るために、簡易版の転送魔法陣を用意してあるんだ」
なんだぁー。じゃ、それで全員運べるな。つか、勇者関係者だからって、国家機密レベルの事をペラペラと喋るとは‥‥‥
「じゃ、それで全員運べるな。そこまで案内してくれ」
「こ、この転送魔法陣を扱えるのはごく限られたものだけだ!お前のような者に使える訳がないだろう!!」
まぁ、そう思うよな。
「んー。じゃあさ、先にそこに連れてってくれよ。それから考えよ。な?」
俺は魔力の放出量を少しだけ上げた。
「わ、わかった。そんな魔力量をしているのだから問題ないだろう。うん。わかった連れて行きます。だからそれ止めてくれ、立っているのもつらい‥‥‥」
むぅ、軟弱になったなー。騎士団も
「よし、アイツら呼んでくるから待っとけ」
そういい残し、俺は来た道を引き返していった。
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『なぁ、フィー。騎士団ってあんなだったっけ?』
『あれは獣王のオジサンの襲撃に備えて、ユリウスが見回りのためだけに作ったの!だから基本的に、まだまだひよっこの新人しかいないの!』
ふーん。そういうことか。それよりも、気になる言葉をぶち込んできたねフィーさん。
『獣王ってあの?』
『うん。オジサンだよ』
フィーがオジサンって言うのはアイツしか居ないよな‥‥‥けど、なんで襲撃?
『なにがあったんだ?』
『よくわかんない!』
そっすか、ありがとうございますフィーさん。
全く役に立ちませんでした。フィーさん‥‥‥
『けどね、ユリウスに最後連れてってもらったときねー、なんか変な感じしたよ?』
変な感じ?
『うん。なんかやな感じ‥‥‥あ、ルークみたいなの!』
!?ルーク!?‥‥‥アイツ、もう動き出してるのか。
『そ、か。ありがとうな、フィー。もう少ししたら出してやるから、待っててくれ』
『はーい』
獣王はもう、無理だな‥‥‥
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「おい、皆!移動するから着いてきてくれ!」
「おい、蓮川!お前一人で勝手に‥‥‥」
「先生ごめん。今は話してる余裕ない」
「ハル!話は終わったの?」
「おう。終わったよ。これから移動する。皆に説明したいから、静かにさせてくれ」
コイツらほんとうるせー‥‥‥
「わかった。‥‥‥みんな!静かに!!」
‥‥‥流石だな。よし。
「皆、聞いてくれ!さっきも言ったとおり、すぐに移動する。これから少し歩くから着いてきてくれ!!」
「そ、そんなの聞くわけねーだろ!」
「そうだよ!」
「アイツら信じられるのかよ!」
「そ、それに何でおまえそんなに冷静なんだよ!まさかグルじゃねーだろうな!」
「はやく家に帰してよー!」
「もういいでしょ!?」
ほ、ホントにうるせー‥‥もう腹括って魔法でもみせて黙らせるか?
「いいから付いて来いよ!文句あるなら後で言え!!どうせここにいてもしょうがないんだ!!!」
うーん。流石だなぁ、タツは。
「そうだよ!いっつもはバカだけど、こういうときは頼りになるの皆も知ってるでしょー?取りあえず付いてこーよー」
うん。皐月は褒めてるのかバカにしてるのかハッキリしような?
「ま、まぁ、二人がそう言うなら‥‥」
「取りあえず、なぁ?」
「ここにいてもしょうがないし」
俺が言っても聞かない癖に‥‥‥
「よし、皆!蓮川についてくぞ!」
先生も賛同してくれた。これならOKだな!
「後でどういうことか話して貰うぞ」
はい。
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「ついたぞ。ここだ」
俺達は、召喚された場所から十五分ぐらい歩いて転送魔法陣のある場所まできた。
「なんか早く感じましたね。隊長」
「そうだな。なんか早さが異常だったな」
まったく、こいつらがアホで助かった。全員に隠れて俊敏力上昇の精霊魔術はめんどかった。
『サンキューな、フィー』
『うん!』
『ねぇ、何で三十分が十五分になったの!?しかもこの人数で!』
『魔術使った』
『なんでもありね』
なんでもはできないけどなぁ‥‥‥
「なぁ、連絡用のマジックアイテムとかないのか?」
「あるにはあるが‥‥‥お前には使えないぞ?今持ってきてるのは魔力を登録したものしか使えないからな」
めんどくせーやつ持ってきやがって‥‥‥
「じゃ、お前が使えよ。騎士団長に連絡入れられるか?」
「あぁ、できるが‥‥‥まさか」
「あぁ、でたら替わってくれ」
「できるか!?そんなことしたらクビだ!クビ!!」
「大丈夫だから、な?」
魔力放出ー
「わ、わかったから。それ止めてくれ‥‥‥」
話のわかる隊長さんで助かるよ。
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『なんだ?勇者は見つかったのか?』
「えっと、それがですね‥‥『やっほー、久しぶりー』ちょ、まだ出てくるな!」
いいじゃねーか。つか、騎士団長老けたなー。
『む?その小僧が勇者か?どことなく元勇者に‥‥‥ん?!』
あ、わかってくれた?
「そうです!元勇者です!!久しぶりー騎士団長」
「ふぁっ!?」
驚いてるね、隊長さん。
『だ、だが、なんか幼い気が‥‥‥』
「天使が混乱しないようにって身体を元に戻したんだよ」
『て、天使‥‥いや、お前ならあり得るか?』
「まぁ、それはいいからさ、そっち行っても大丈夫?」
『ま、待ってくれ!今陛下や殿下達を集める!!も、もう少しだけ‥‥‥』
慌ててるなー。
「出来るだけ早くね」
『うむ。では、後でな』
よし、じゃあ準備始めますか。
「よし、今から転送魔法陣を使う。今から描かれる円の中に入ってくれ」
「な、なぁ、お前何者?」
「それも後で話すから、今は従ってくれ」
『こ、こちらも準備できたぞ!』
よし。いくか!
「跳ぶぞーちょっと気持ち悪くなるかもだけど、我慢してくれ!」
「「「「「「えっ」」」」」」
「じゃ、転送開始!!」