第8話:逃げ出したヴェルディ
外に出た私が見たものは、ヴェルディが変な男達に威嚇している姿だった。
「おい、てめえが一人で数人席を陣取ってんじゃねよ。クソガキが」
「そうだ。クソガキ。俺様達が飯くいに来てるんだ。てめぇみてえなクソガキが邪魔してんじゃねーよ」
やばい。すごく下らないことなんだけど。
というか私が少し席を外したからこうなっているわけ。
「ガルルルルルルルル。私は友達と一緒にいた。少し席外していただけ。文句言うお前ら敵」
「クソガキが。ぶっ殺してやる」
そう言って男たちが抜刀して、ヴェルディに斬りかかる。
その姿を見てヴェルディは相手が自分を殺そうとしている敵だと感じ取ったらしく、殺気を放ち攻撃しようとする。男達は殺気にびびったがそんなのは関係ないとばかりに突撃していった。
そんな間に私は入って二人の攻撃を止めた。
実は私って結構な実力者なんだ。冒険者の登録はしたばっかだけど、私を連れ回した冒険者が相当強くて、ついていっている間に私も強くなった。ヴェルディと会ったときはものすごくビビったけど、あれはきっと虫のせいね。
あ、ヴェルディは化け物で魔獣も簡単に狩ってしまうほどだから私が受け止めきれない。
とりあえず男たちとヴェルディの衝突は止められたが、私の右上には引っ掻き傷ができ、血が流れる。ヴェルディの攻撃を受け止めきれなくって少し怪我をしてしまったようだ。
そんなことよりも、この場をどうにかすることを考えよう。
「ねえ、私の友達いじめないでくれるかな」
「なんだてめえ。関係ないだろ」
私の友達っていたのに関係ないことはないでしょう。怒りに我を忘れたのか人の話を聴かない奴だな。
私は、1人の懐に入って全力全開で殴りつけた。男は吹っ飛んで壁にぶつかって倒れる。そんな様子を見た周りの男達は実力の違いを見て戦意を失ったようだ。今のがきっかけで少しは頭冷えたかな。
別の男がもう一人の男を担いで、覚えてろよーと吠えて逃げていった。
といあえずバカは追っ払った。ご飯にしようと思い私はヴェルディの方を見る。
ヴェルディは俯いて、今にも消えてしまいそうな状態になっていた。そして、かすれた声で
「リム、腕…」
私の腕はまだ引っかき傷によって血が滴り落ちていた。ちょっと痛かったが、大怪我って言うほどでもない。こんな傷で住んでいるのもヴェルディが無意識のうちに力を抑えたんだと分かる。きっと怪我を心配しているんだろう。
「このぐらいなら大丈夫よ。心配してくれてありがとうね」
でも、その言葉を聞いたヴェルディはなぜか泣き出してしまう。今にも壊れてしまいそうな表情で、血のついた自分の手を見つめていた。
私は、自分の怪我を心配してくれているんだと思った。
だけど違った。
ヴェルディが思っていることは自分自身で私を傷つけてしまったことを気にしているのだ。
震えて、泣いた小さな化け物の少女は私から逃げるように逃げていった。
待って、と叫びながら私も追いかける。
でも、私とヴェルディでは身体能力が違う。
私からどんどん遠ざかっていくヴェルディ。
そして、私はヴェルディを見失った。
ブックマーク、感想を書いていただいてありがとうございます。
評価していただいたらとっても嬉しくて創作意欲が倍増します。
これからもよろしくお願いします。