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化物フレンド  作者: 日向 葵
出会いと始まり
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第3話:化物少女と友達になる

「あなたは誰?」

「わ、私はこの森に住まう化け物の調査をしに来た冒険者よ。」

 「そう…」


そう答えた少女は、すごく悲しそうな表情に変える。

そんな少女を見たとき、私の震えが止まった。そして、何か懐かしいような気もした。

私が冒険者になろうと思った時よりも前の私と同じだ。誰も助けてくれない。誰も頼りにすることができない。そんなときの私にそっくりだ。そんなことを思いながら少女を見ていると、わけのわからないことを言い出した。


「あなたも私を殺しに来たんだ。」


私が、この少女を殺しに来た?

一体どういうこと。この少女が化け物だっていうの。こんな私よりも少し小さい少女が?

でも、よく見ると、手には、魔獣の傷をつけたであろう鋭い爪を持っていた。見た目は人に見えるけど、少し人とは人と違うものを持つ化け物の子供。化け物だから誰にも受け入れられず、誰もから襲われる、この世界で一人ぼっちの女の子。その表情は悲しみに満ちていて、本当は誰かと一緒にいたいのに、その望みがかなわなかった。


「だったら、殺される前に殺してやる。」


悲しみの表情から、殺意を持った目に変わった。でも、不思議と恐怖が沸いてこなかった。私から湧いた気持ちは…


あの子を助けたい。


そう思ったのなら、あとは行動だ。でも、どうすればいい。今の少女からは悲しみよりも殺意を強く感じる。きっと、今までも同じようなことがあったのかな。でも、誰も助け手はくれなかったんだ。だから、こんなにも強い殺意を向けることができる。この警戒を解くことは一筋縄にではいかない。先ほどまで食べていた魔獣の上で鋭い爪を構えて、攻撃態勢に入る。このままでは私の命が危ない。でもあの子に攻撃したくない。

だって、あの少女の殺意の奥は悲しみで満ちているのだから。だから絶対に助けるんだ。


そして、少女に向かい合ってあることに気が付く。少女の足元に魔獣。それは、大型の獣で鋭い爪と牙を持っている。今回の討伐対称の特徴は大きくて鋭い爪をもっていることだ。それ以外に特に大きな情報が載せられていなかった。だったら、この獣を差し出せば冒険者ギルドを誤魔化せるかもしれない。だったら、この少女とは戦わなくていいんだ。

でも、それだけでは彼女の心を助けることはできない。深い深い悲しみだ。

でも、最初はこの場を収めることを優先に。


「私は、この森にいる鋭い爪の化け物を狩ることだからあなたを借りに来たわけじゃないわ。もしかしてなたも冒険者。そこの魔獣を狩ってくれたの」

「…どういうこと。私は化け物の子よ。私を狩りに来たんじゃないの」

「あなたは化け物の子かもしれないけど、あなたを討伐しに来たわけじゃないわ。私のさっきも言ったけど鋭い爪をもつ化け物。つまり、そこの魔獣だと思うの」

「そういって、私を油断させるだけでしょう。前にも同じようなこと言われたことがあるけど、すぐに襲い掛かってきた。私が化け物の子だって知っているから。私を殺しに来たのよ」


 少女は攻撃態勢を止めない。彼女の心の傷はそれほどまでに深いのだ。でも、こちらだってそれだけでは諦められない。かつて私が助けてもらったように、私も助けたい。


「私は、あなたを殺しに来たんじゃない。私はあなたを助けたいのよ」

「助けたい。一体どういうこと。私は助けてなんて言ってない」

「そう、でもあなたはとても寂しそうに見えたのよ。だから…」

「だから何。だから何なのよ」

「だから、私と友達になって一緒にここを出ましょう。ここで一人でいるよりも、この世界にはもっと楽しいことがあるはずよ」


この少女の寂しさは尋常じゃない。化け物の子供というだけで誰にも受け入れられず、理不尽に攻撃されてきた。だからこそ、寂しい思いをしながらもずっと一人で生きてきた。


だったら、一人ぐらい受け入れてくれる人がいたっていいじゃない。そして、それは私がこの子にとって初めての受け入れてくれる人になるんだ。

もう寂しい思いはさせないよ。


そう願いを込めて、少女に向かっていう。

もしかしたら、少女には私の言葉が届かないのかもしれない。でも、諦められるか。


「私と一緒に行きましょう。あなたは化け物の子かもしれないけど、人間ではないのかもしれないけど、こうやって言葉を交わせる。だったら一緒にいてもいいじゃない。一緒パーティー組んでいろんな所冒険して、楽しいことをいっぱいしよう。こんな寂しいところから私が連れ出してあげる。だから、私の友達になって。そして、一緒に行きましょう」

「友達?」

「そう友達」


少しは警戒をといてくれただろうか。

もしといてくれなかったらどうしよう。

すごく不安になったが、それはすぐに吹き飛んだ。


「そんなこと言ってくれたの初めて…」


そういいながら少女の目から一粒の雫が落ちる。

ココロのカギが一つはずしてくれたような気がした。一歩、近づけたような気がした。

 でも、彼女はまた少し警戒した表情でこう言ったんだ。


「もし、嘘だったら絶対に許さない」


嘘なんてつくわけないじゃないか。

昔の私とそっくりな少女を連れ出して、これから二人でこの広い世界を見に行くんだ。

今日はそのための第一歩。

人とは違う小さいけど鋭い爪をもった手。

私はその手を手に取って、

「嘘なんて言うわけないじゃない」

 そう言って、取った手を引っ張って私は少女をこのさみしい森から連れ出した。

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