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ダンジョン&ドラゴンズ  作者: 速水
3/20

ダンジョンを造ろう!

では、改めて今回のドラゴンを見てみよう。


全長80メートル級の大型種、その爪牙は鋭く猛々しい。

昏い紫色をした鱗の表面は艶やかな光沢を放ち気品すら漂っている。

頭部の一本角は圧巻の一言である。

黒曜石を想わせる透き通った黒色、螺旋を描きながら天を示し暴力的なまでの力強さと美しさの両立を遂げている。


これぞドラゴン。伝説の体現が、ここに在る。



「い~い仕事してますねぇ~」

契約が完了した直後、俺は存分にドラゴンを堪能していた。これだけでもダンジョンマスターになった甲斐があるというものだ。無論ダンジョンマスターとしてもっともっと手広くモンスターを集めることは確定しているのだが。


「カイト、なんだかわからんがそろそろ我の鱗を撫でまわすのを止めてくれ。ダンジョンの整備もまだだろう」


ドラゴン―ヘイムダルが戸惑ったような声を上げる。もう少しこの至福の時間を堪能しておきたかったがそうもいかないようだ。


「む、確かにこのマスタールームのみの状態はマズいな。名残惜しいが続きはまた後でにしよう」


続きはのあたりでヘイムダルが震えた気がしたが多分気のせいだろう、ドラゴンが怖れるものなど無いのだから。

ダンジョンメニューからダンジョン管理項目を呼び出してみる。なお、ダンジョンコアは最初の接触でマスター登録が済んだのか持ち歩く必要が無いようだったので元の場所に戻してある。


ダンジョン操作


・2階層追加 1,000,000DP

・フロア追加 小5,000DP 中10,000DP 大200,000DP

・フロア操作 地形・環境変更・拡張(初級)5,000DP 天候設定(初級)10,000DP 

・設備追加 罠セット(初級)2,000DP/月 宝箱セット(初級)3,000DP/月 モンスター生成施設(初級)1,000DP/月

・雑貨(初級)

・物質生成 ※使用者の概念から生成、物品ごとに個別DP消費。食料可

・常設ガチャ(施設・宝物・召喚)各 1,000DP 10,000DP 100,000DP



ダンジョン拡張関係は高いなぁ、現状あまりたくさんは手を出せそうにない。ダンジョンマスターになった以上ダンジョンを発展させねばいつ侵入者達にやられてしまうかわからない。ダンジョンマスターになった影響かダンジョンを攻略されてしまった場合、俺にとって非常にマズいことになるであろうことは本能のようなものでわかるのだ。


「まずはヘイムダルを配置する部屋だな。大は無理だから中フロアで今月は我慢してくれ、残りDPの関係で来月までは戦力の拡充も難しそうだ、最大戦力として侵入者対応の大部分を任せることになると思うけど宜しく」


ヘイムダルに声をかけながら中フロアの成形し、コアルームと入口の間に差し込む。許容範囲の大きさであればフロアの形状は任意で変えられるようだった。


「承知した。我が目的についても一カ月乗り切ってからで構わん、期限はあるが今すぐどうこうというものでもないからな」


「ありがとう、頼りにしてるよヘイムダル」


初期ダンジョンのボスがドラゴンとか反則くさいがゲームではなく現実だし、ダンジョンマスターとしては守護するモンスターが強いのは良いことだから問題ない。ダンジョンメニューからフロアの地形設定を森林にしてヘイムダルの配置を設定するとヘイムダルの目前に巨大な黒い穴のようなものが生まれた。ギョッとしている俺を尻目に涼しい顔でヘイムダルはソレを潜り、消える。


「ドラゴンいるんだし今更だけどやっぱ異世界だよなぁ…」


明らかに魔法的な何かに頭を抱えたくなるが身の安全の確保が最優先であることを思い出し作業を再開することにする。

どうもダンジョンは異空間のようなものに出来ているらしく部屋の設置やモンスターの配置などはダンジョンメニューからある程度行えるようだ。もっともそこまで便利なものではなく、モンスター配置後に別のフロアに動かしたい時はダンジョン内部を移動してもらう必要があるなど配置換えが気安く出来ないよう制限もされている。まぁ、いつでもどこでも手勢を送り込めたらダンジョン強すぎだよね。


「あと作らないといけないのは光の玉を配置する部屋だな。持っていかれると困るしマスタールーム手前でいいか」


呟きながら、小さめの部屋を作り中フロアとマスタールームの間に設置、そのままマスタールーム唯一の扉を開けると確かに設定した通りの小規模なフロアが出来ていた。ダンジョンがどのように変わるかも興味があったのでマスタールームから扉を開け放したまま、祭壇地形を選ぶ。


「おぉ…」


殺風景なただの洞窟だったフロア全体が光に包まれたかと思うと、次の瞬間には石造りの建物の屋内なような景観に変わっていた。

中央に向かって階段が四方から出来ており、中央には祭壇が出来上がっている。

出来上がったばかりの祭壇へ向かい、懐から光の玉を取り出し安置する。



ゴゴゴゴゴゴゴゴッ



直後、地鳴りのようなものがダンジョン内に響く。


―「光の玉」の配置によりダンジョン内宝物ランクが一定以上を超えました。ダンジョン名獲得、「名もなき洞窟」から「光の洞窟」へダンジョン名を変更しました。―


急に脳内に響いたアナウンスに驚き、慌ててダンジョン情報を開くと確かにダンジョン名称欄が変わっていた。



「光の洞窟」

 ダンジョンコアLV1 (0/300EXP)

1階層 

配下 ドラゴン

1階層 3フロア

保有DP 35,000DP

獲得DP 

 基本 11,500DP/月

 宝物 10,000,00DP/月

特殊ボーナス 「竜の巣Lv1」 200EXP/月 「光の洞窟」 500EXP/月


フロア拡張に使ったポイントの1/10が基本収入として入り、特殊ボーナス関係はコアの成長に使う様だ。宝物のポイントが光の玉のみなのはミスリル剣とかはまだ配置されていないからだろう。置く場所も今のところ特にないので、祭壇の脇にでも一緒に置いておくことにする。


「あと確実に必要なのは生活雑貨系と食料かな。雑貨欄に確か…この初めてのダンジョン生活(人間編)とかいうのと人族用食料一カ月分あたりでいいか。全部で5000DPっと」


マスタールームに戻り、メニューから選択すると目の前に家が現れた。外観は西欧あたりで探せば見つかりそうな歴史を感じる建物だ、建築様式とかを学んだことはないので正確なところはわからないが。ポイント交換と共に足元に現れていた食料一式も家へと入れておくことにする。しかし家もそうだが食料が入っているのも木箱だ、段ボールとかあれば便利そうだったんだが。


さて、残り30,000DPでダンジョンをより使い良い形に変えてしまおう。

でもその前に…




ガラガラガラガラコロンッ!


一回だけ!一回だけだから!!



さて、ダンジョンモンスター生成のお時間です。


ゴブリン生成施設 2,000DP/月

ゴブリンを生成、維持する施設。一日5体ゴブリンを生成する。


設置地形制限なし。


・ゴブリン

亜人種 子鬼系


体は小さく、知能も低いモンスター。

しかし原始的ながらも集団で行動する社会性を持ち、道具を使う個体も確認されている。

繁殖能力が高く、本能に忠実なため脅威度のわりに女性から非常に忌み嫌われている存在である。


危険度 F



「ギャギャギャッ!」


ファンタジーの定番ゴブリンだ。ゴブリンは汚いというイメージがあるが召喚された50体は特別汚れているということは無かった、全員腰ミノ装備だったが。ドラゴンいるのにゴブリン?と思うかもしれないがやはり基本は押さえておきたい。


「お前たちはこのフロアの見回りだ、侵入者がきたら撃退するように。無駄な殺傷は禁止する」


ゴブリン達は命令を聞くと一つ頷き、そのまま森の中へと散っていった。ダンジョンマスターの命令権はダンジョン施設にて生成されたモンスターにとっては絶対のようだ。ヘイムダルは生成ではなく、召喚したモンスターなので契約の必要があったということだな。ゴブリンたちを見送りながら、もう一つの召喚施設の方へ移動する。


ヘイムダルに与えたこの森林フロアはドラゴン用に中フロアの許容限界一杯まで広げたので大体2平方キロメートルくらいの面積になっている。飛び回れるほどではないが高さも結構高めに設定しておいた。歩いて移動するのは骨なのだが、モンスターの配置やフロアの設置などと違ってマスターの移動に関する便利魔法は無いようだ。連絡手段もないし、このあたりの改善は早急にするべきではあるなぁ…現状だと非効率すぎるし、情報網の確立はどの組織でも大切だ。ダンジョンコアのレベルが上がったら便利機能が追加されてるとかなら世話はないが、それに期待して何もしないというのは自分の命が係ってる現状では悪手というものだろう。こういった状況でゲーム感覚から抜け出せないで温い行動を取った場合どうなるかなんてのはよくあるお約束の一つだからな。



グリーンクロウラー生成施設 3,000DP/月

グリーンクロウラーを召喚、維持する施設。一日3体グリーンクロウラーを生成する。

植物系フロアのみ設置可能。


考えこみながら歩いている内にもう一つの召喚施設に到着する。森の一角に設置された魔法陣に手を添え、起動を促した。

程なくして全長2mくらいの芋虫というべきモンスターが現れる。これはまた嫌いな人はとことん嫌いそうなモンスターだなぁ…


・グリーンクロウラー

クロウラー種 


大抵の林や森に生息が確認出来る一般的なクロウラー種。

基本は採食だが、生態としては雑食なので人を襲うこともある。最も、テリトリーを荒らさない限りは攻撃してこない大人しいモンスターである。

人よりも大きな巨体故のパワーと生命力の高さが脅威だが、見た目通り機動力は高くないので逃げ切ることは難しくないため危険度は低い。吐き出す糸はそれなりの強度を持ち、絡まると厄介なので注意すること。


古代とある国の姫君がクロウラー種を愛で、育てていたとの逸話が残っているが真偽のほどは定かではない。


危険度 E



こっちの世界でも物好きなお姫様は居るようだ。そのお姫様とはいい酒が飲めそうなんだが古代ってことは流石にもう生きてないよなぁ…現代日本におけるファンタジーと違い、現実にモンスターが存在し脅威となっているこの世界で同好の士を見つけるのは非常に難しそうなのでそういった存在が居れば全力でお友達になっていきたい。



「ギュビビビ」


頭上からの音に目線を向けてみると3体のグリーンクロウラーがこちらを見下ろしていた。危険度Eとか書いてあったけど現代からきた一般人としては十分やばそうにしか見えない。ダンジョンモンスターだから襲われないとわかっていなければ平然とはしていられないところだ。


「ちょっと能力の確認をしておきたい。あそこの木の幹に糸を吐いてみてくれるか?」


「ギュビビ!」


俺の命令に従って5メートルほどはなれた位置にある木へと糸を吐きだす3匹。機動力があまりないとあったが中距離はこれで誤魔化せばある程度は戦えそうだな。


「ふむ、引きちぎるのは結構苦労しそうだなコレ。」


白いその糸を両手で掴んで引っ張ってみるがびくともしない。粘性は布ガムテープくらいだろうか、ちょっとくっ付いただけなら剥がすことも用意だが大量に巻き付けられたときは対処が難しそうだ。ダンジョンに潜ってくるような人種はもっと筋力があるだろうから安心は出来ないがそれなりには使えると思う。


「よし、グリーンクロウラー達も基本は見回りだ。侵入者を見かけたら樹上からの糸吐き攻撃を基本とした妨害を行うこと、無理に攻める必要はない。また、数が増えたら交代制で別のフロアに詰めてもらう」


「ギュビビ」


こちらも一声上げると3匹で固まって森の中へと消えていった。一応こちらの命令は理解できているようなことに安心し、後姿を見送ってからフロアの奥を目指す。ドラゴンとの邂逅、そしてダンジョンマスターとなってしまったことなどで混乱していたが、落ち着いて考えてみれば俺は身一つで異世界に放り出されている。今後の行動指針を決めるためにもまずはこの世界についての知識を仕入れないといけない。情報化社会で生きてきたからこそ今のまったくなにもわからない状態には正直不安が募るばかりだ。

となれば、現状対話可能なこの世界の生き物であるヘイムダルに話を聞くべきだろう。そう、独り言ちながら俺は足早に森林フロアを進んでいった。





「ダンジョンの改装は終わったか、カイト」


フロア最奥にたどり着くとそこでは紫色のドラゴンが寝そべっていた。マスタールームでの様子と違い十分なスペースが確保されているので居心地は良さそうだ。


「あぁ、ここの裏に光の玉を安置する部屋をひとつ、他に2フロアほど造って入口とこことの間に挟んだ。光の玉の部屋での戦闘は考えてないから此処が最終防衛ラインだ。宜しくな!」


「承知した。出来立てのダンジョンなぞまず発見されてから内部の調査が始まるからな、一カ月の間に対処しきれなくなるような人数が這入ってくることはそうそうないだろう。」


「まぁ今打てる手は既にほぼ打ち終わったからこの一カ月は様子見だな。その間に色々来月に向けて出来ること、出来ないこと、やっておくべきことなんかをまとめておこう。そのために色々ヘイムダルに聞きたいのだけど問題ないか?」


「我もカイトとはもう少し話をしておく必要があると思っていたところだ。待っている間に気づいたのだがカイト、お主はもしかして『精霊の旅人』ではないのか?」


なんかカッコいい言葉が出たな、精霊さんとやらにはお知り合いになった覚えもないから違う可能性も高いが。


「その『精霊の旅人』っていうのは何なんだ?聞いたことがないんだが」


「うむ、この世界には時たま異界としか言いようのない全く異なる世界の住人が迷い込んでくることがあってな。同じく異界に種族専用の世界を持っている精霊達の眷属として『精霊の旅人』と呼ばれておるのだ。もっとも彼らと精霊には直接の関係がないことはすでによく知られていることではあるがな」


つまりは異世界人をまとめて『精霊の旅人』と呼んでいるわけか。精霊が関わってくれてたほうが帰還に関しては手がかりがあって良かったんだが世の中そう上手くはいかないようだ。


「そういうことなら俺は確かに『精霊の旅人』だな。俺のいた世界ではドラゴンは想像上の生き物だったし、ダンジョンなんてなかった。いや、古代の遺跡なんかをダンジョンと呼んでいいのであればあったかもしれないがダンジョンコアなんてものはなかったな」


「我らドラゴンの存在しない世界か、想像も出来ぬがやはりカイトは『精霊の旅人』であったか。『精霊の旅人』は人族の間でも一目を置かれる存在だと聞く、我にとっては僥倖だが無駄な争いが起きるやもしれん。カイト、ダンジョンマスターである以上すぐに他の人間族と交わる機会は無かろうが知り合ったとしても、なるべく『精霊の旅人』であることは隠しておいた方が良い」


ヘイムダルは頭を下げ、視線を合わせるとそう伝えてきた。紅い目からひしひしと真剣さが伝わってくる。


「情報は力だからな。確かにこの世界とは全く違う世界の知識や技術はそれだけで色々なバランスを壊しかねない。わかった、俺が『精霊の旅人』だってことは伏せていくことにしよう」


言いふらすことによる得よりも損のほうが大きそうだし当然だな。今更だがパートナーとしてヘイムダルと契約できたのは大きい。これが生成可能なゴブリンやグリーンクロウラーのみでのダンジョン生活であったなら手探りで情報を集めるところから始めないといけないところだった。


「もともとヘイムダルに聞くつもりではあったんだが、さっきの話も含めて『精霊の旅人』だと感づかれ無いようにこの世界の常識やらなんやらを知っておくべきだと思う。ヘイムダルの知っている限りで構わないからこの世界のことを教えてくれないか」


「是非もない。ただ、人族よりも我々ドラゴンのほうが生き物の歴史としては長い。そちらのほうから話をしていっても構わないか?ドラゴン族のことを知ってもらうのは我の目的を理解してもらうのにも必要なことなのだが…」


「マジで?!ドラゴンのこと教えてくれんの?!聞く聞く!!超聞くわ!!!いやちょっと待て、何かメモを…マスタールームに無いかどうか見てくる!!」


そう言い残して俺は奥へ続く扉へと駆け出した。生活セットで出した家に筆記具くらいあるだろう多分。

待ってろよ!ドラゴン学!!



後ろでため息のようなものが聞こえた気がしたが気のせいだろう、多分。


一話に適正な文字数ってどのくらいなんでしょうか。

現状はなんとなくの場面で分けてますが、このあたりの適正な値も掴んでいきたいものです。

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