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パラレルワールド

作者:

 ある日の夕方。 外を歩いていたらキミに出逢った。


 出逢いのきっかけなんてものは存在しなかった。

「散歩、ですか?」

 そう、存在しないんだ。


 当然のリアクション、高谷祐一は驚いた。

「…え……っと…?」

「私は…うん、世界が見れるから、散歩は好きです」

 会話が成り立ってない、いや既に会話になっていない。 祐一は気づいてしまった。


 話しかけてきたってことは以前に会ったことがあって、身近にいるってことだろう…? 久々に会ったとしたならば第一声が

「散歩ですか?」なんて…特別な状況下にでも置かれていない限り、ありえないと思う。

 …どっちにしろ僕には見覚えがない。

「あの…すみませんが、どちらさまですか?」

「………?」

 首を傾げたいのは僕の方です。と言いたい祐一だった、が

「覚えて、ない…?」

 この人がそう言った瞬間、無意識の内に首を傾げてる自分がいることに気づいた。

「覚えて、ない…じゃなくて…えと」

 あなたのことを知らないんです。と、声に出す前に、声に消された。

「涙に刃と書いて、うるは…涙刃です」

「涙刃、さん」

 発音しても…呼んだ経験はないし、聞き覚えのない名前だ。

 それにしても変わった名前だな。と認識してしまった祐一。


「僕は涙刃さんと会ったこと…ない、ですよね?」

「ない、のですか?」

 この人は色々な部分が変わってるな。と認識してしまった祐一。

「そう思うんですけど…あ、そうだ」

 僕の名前を言ってみて下さい。と言おうとしたけど出来なかった。

「高谷祐一さん…高校二年生…組は1-A…身長、体重」

 …etc。僕の何もかもを言われた。

 驚いたと言うか、怖い。


 祐一は考えた。この人は、言いたくないが、ストーカーなのではないか。と。

「……その表情から察するに、本当に私のことを覚えてないみたいですね。 私、祐一さんとは同じクラスですよ? ど忘れでもしたのですか?」

 こういう状況のとき、人間は思考能力をフルに発揮する。 もしくは混乱して錯乱状態になる。 状況に選るが、選択はランダムに決まる。

 だが運が良い。祐一は前者に選ばれた。


 例え同じクラスだとは言え、僕の個人情報全てを知ってるはずがない。

「…僕はあなたを知らない。だけど、あなたは僕を知っている、個人情報、全てまで。 …ありえないんじゃないですか?」

「私たちの学校の規則では、月に一回、自分の個人情報を教員に報告して、変化があったら掲示板に公開…でしたよね?」

「え?」

 そうだっけ? いや、仮にそうだとしても、僕は個人情報を晒さないし、そんな規則があるなら登校拒否にでもなるだろう。 …結論。そんな規則はない。

 この人は何を言ってるんだ? 祐一は少し苛立ちを覚えてきたところで、涙刃に言われた。

「ということは、祐一さんも私の情報を知ってるはずですよ? 掲示板を見ているならば」

「そんなわけ…?」

 頭の天辺から何かが流れ込んでくるような感じがした。


「みなさめ…水雨、涙刃。僕と一緒のクラスで、最近のスリーサイズは」

 数秒経ったら体をびくんと震わせ、祐一はハッと気づいた。 僕の方が何を言ってるんだ。

「…は…っ!? ぼ、僕は、何をっ…」

「…昨日公開されたばかりです…もうそこまで…」

頬を赤らめ俯き加減に、涙刃はそう言った。


「とにかく、祐一さんは私を知ってるわけです。 やっぱりど忘れだったんですね」

「……そ、そう。ど忘れ…」

 涙刃は

「良かった」と言い、くすっと微笑んで、胸を撫で下ろした。

「祐一さん、記憶喪失にでもなってしまったのではないかと、驚きました」

「う…ん」

「あら、もう暗くなってしまいましたね。 私は帰宅します。 では、また明日学校でお会いしましょう」「……え、ああ」

 さようなら。と言った頃には既に、遠くにいる彼女の背中姿が見えていた。






『世界には平行世界、つまり、パラレルワールドという、私たちの知らない、数多の世界が存在します。 そして…』

 いかにも胡散臭いことを語っているオカルトマニアらしき人物の番組を見ながら、夕方…彼女のことを思い出していた。

「明日になったら…いつも通り、宿題を写させてもらおう」




 そして翌日。


 祐一は心の中で決めていた。 昨日、ど忘れとは言え、本当に忘れちゃっててごめん。涙刃に謝るつもりだ。

 涙刃の席は、すぐ右隣。




「涙刃…あれ?」

「ん?」

 その席にいたのは炎粉美燦灯(ほむらみさと)。僕の幼なじみ。

 なんで美燦灯が…?

「ようユウちゃん。何か用ー?」

「用って…美燦灯、席ちが…」

 間違ってない。この席は、たしかに涙刃の席だ。 でも、この席は、美燦灯の席でもある。

 授業中、常に会話してるから…。

「…何でもない。ところでさ、昨日のオカルト狂番組…」

「アレね、見たよ。なんかいかにもって感じだったね。 …ユウちゃん…もしかして、あの人の話信じてるのー?」

「信じるわけないだろ!」

「だよねー。あははははっ」

「…美燦灯はどうなんだよ」

「えっ? あああ、あたし? ユウちゃんったらやだなあ、信じるわけないじゃん」

「本当か?」

「………」

「………」

「………うん」

「返事遅いな!」




 下校中でも祐一は考えていた。

 同一人物ではないか? いや、それはありえないか。 僕の記憶違いか? いや、それもありえない。 …もしかしたら違うクラスか? …どうだろう?

 結局結論に辿り着かないままで終わり、重大なことに気づいた。


「…そういや今日、一日…月の始めじゃないか!戻らないと!」

 忘れていた。いつもの様に教員に自分の情報を渡すことを。

 祐一は学校へとダッシュした。




「それは良かったな。高谷」

「いや、ですから、最近身長が伸びたみたいで…!」

「……だから…良かったな。って言ってるだろう。 何か不満でもあるのか?」

「……何でもないです…さようなら…」

「?ああ……」



 規則…あったはずだよな…? 褒めるだけって…意味がわからない。

 でも、規則はない、けど、ある。 何でだ…?



 学校の入り口まで着いた頃には、さっきまでいなかった一人の制服姿の少女が、まるで木の様に動かないでぼーっと立っていた。

「……涙刃?」

「あ……祐一さん」

「どうしてこんな所に………じゃないや。 昨日、本当に忘れてて…ごめん」

「いえ…それは別に気にしなくても大丈夫です……ところで、お話はそれだけですか?」

「うん…? 一応まだあるけど……え?」

 もちろん、驚いた。

 「話はそれだけ?」って。事前に話があることを知っている…? あれ?どういうことなんだ?

「まだあるのですね。どうぞ、話して下さい」

「えーと……うーん…そう、なんでこんな所にいるんだ?」

「なんでって、祐一さんが

「話があるから、放課後、門で待っててほしい」って…」

 更に驚いた。 ますますわけがわからない。 祐一は混乱しすぎて、ふらっと倒れそうになったが、何とか持ちこたえた。

「ぼ…僕は今日、涙刃に会ってないんだ。 そんなことは…絶対にない」

「…? 私は祐一さんに会いましたよ?」

「…涙刃の席にはアイツがいたのに…」

 小声で、独り言のつもりでそう言ったはず。



「…あいつ…炎粉…美燦灯さん…?」

「うん、美燦灯………………」



 遂に祐一の思考回路がショートした。

「……なんで" あいつ "だけで?」

「え……今日の朝、急に

「ここ、炎粉…炎粉美燦灯の席だよな?」って…祐一さんが聞いてきましたから…」

 その瞬間、あることを思い出した。

「………わかった。話はもう終わり」

 祐一は自宅へ走った。

「…ゆ、祐一さんっ?」




 帰宅してから真っ先に美燦灯の" ケータイ "に電話を掛けた。


 電話の呼び出し音が一度鳴り、二度鳴り、三度目の途中でやっと繋がった。

『はーい、炎粉美燦灯です。番号的に…ユウちゃんかな?』

 話すことは…もう決まっている。

「ああ、僕だ。 美燦灯、今どこにいる? いや、質問の内容がちょっと違った。 外の……学校のどの辺りにいる?」

『えぇっ!? なっ…家からなのに…? …すごいねユウちゃん。 超能力でも持ってんじゃないの?』

「うん持ってないから。どこなんだ?」

『入り口辺りだけど帰ろうと思ってたトコ。 ってゆーかユウちゃん帰るの速すぎじゃないスか?』


 たぶん、僕の推測は当たった。 我ながら、色々な意味で信じ難いけど。

 いや、ある意味では信じてない。信じちゃいけないことかもしれない。




《簡単に説明すると、ここの空間の人間が別の所に行くと、そこの空間にどんどん慣れて、いつしか" ここの空間とそこの空間 "…二つの空間が混ざり合い、空間は潰されて、なくなってしまうのです》




 意味はあまり理解出来なかったけど、たぶん、そういうこと。

『ユウちゃーん? おーい?』

「話はそれだけ。それじゃ」

『へっ? そ、それだけ? なんか寂』

 がちゃ。受話器を戻した。



 今日は早く寝よう。それでまた明日、涙刃と話そう。 これは大事なことなんだ。って。




 翌日。の放課後。

 どこを探しても涙刃は見つからなかった。


 そのまた翌日。放課後。

 涙刃を探した。けど見つからなかった。


 そして三日目の放課後。

 やっぱり涙刃は見つからない。

 諦めて家に帰ろうとしたとき、頭の天辺から何かが抜け出した様な感じがした。


 祐一は今の自分の状況を考えた。




「僕は、何をしてたんだ?」




 帰ってニュースを見ていたら、何かのオカルト番組の主役(?)が失踪したらしい。

 世の中は物騒だな。祐一はそう思った。



 あと、助かったような、助からなかったような、そんな意味不明のモヤモヤした感情が生まれた。

本当に意味不明な結果で終わってしまいましたが、色々な話を繋げて推理していけば真相が理解出来ると思います。 近い内に別視点の番外編(?)みたいな話も作るつもりですので、それもヒントにして推理して下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一週目でもやもやしたイメージが出て、二週目でちょっと解りました。けどなかなか解りにくいですね…それがこの小説の味でもあるのですが。  少し話の展開が速く感じられましたが、いいと思いますよ
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