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無事到着
下手です。
この世界には、49人しかいない。世界といっても地球全体に無数ある国々ではなく、その空間という意味だ。
植物も建造物もあるし、他の動物、虫、魚などはきちんといるが、やはりその数はその空間に見合ったものになっている。こぢんまりだ。ちなみにその49人は全員が若人で、この状況について
「何これ?」
と一致した感想を抱いていた。
しかし、すぐ思い出した。自分たちは実験台だったと。ここは人間が自分たち49人だけしかいない狂った場所だと。バトルロワイヤルじゃないが、閉鎖空間で、常軌を逸したことの舞台だと。
「日本語が通じない人はいないようでよかった」
「でもどうすんのかな、これから」
「それは決まってる。ここが例のアレなら、もうすることは一つでしょ」
「情報を集めていくんですね」
彼らは各々準備していた道具をおもむろにチェックしはじめた。これからのことに思いを馳せる。
期待。躊躇。戸惑い。 大なり小なりの、後悔。
彼らは本質的に人間ではなくなってしまった。けれど、それに見合うだけの価値を、かならずここで見出すと、誰ともなく、呟いていた。