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Knight of Zetta  作者: ナナシ
3/9

episode_01_02

続きです

 二年前のことだ。


 当時中学二年生だった優羽は、ある日の放課後、人気のない廊下で男子生徒同士の喧嘩を目撃した。怒鳴り合い殴り合っている二人は痛々しく、止めに入るような人もいなかった。


 目撃した自分が止めに入らなければどちらかが大怪我をする──、そう直感した優羽が仲裁に入ったのは必然だろう。

 男子同士の喧嘩とはいえ優羽には止められる自信があった。剣道の腕ではない。自分の知名度が自信に繋がっていたのである。


 優羽は有段者で、大会での優勝経験が何度もあった。学校ではさくらと並んで有名な学生の一人だったためほとんどの生徒が優羽のことを知っていた。それがあって、優羽は自分が止めに入ればきっと二人は喧嘩を止めてくれると思っていたのである。


 問題は、現実はそう簡単ではないということだった。


 二人は優羽のことを知っていたが、剣道をやっているという程度の認識しかなく、どれほどの腕前なのかは知らないようだった。

 それが災いしたのか、それとも女が男の喧嘩に割り込んだのが気に障ったのか、二人の怒りの矛先は優羽にまで向けられてしまった。そうなれば優羽も防衛のために剣道の腕を奮うしかない。


 部活に向かう途中だったため竹刀は手元にあった。手加減はしたのだが、その手加減がさらに災いし、怒りで我を忘れた二人はちょっとやそっとの痛みでは引かず、結局二人が打撲によって戦意を喪失するほどに叩きつけるに至った。


 その時は向こうが逃げ帰ったおかげで丸く収まったと思っていたのだが、そこで終わっていたら優羽も剣道を止めていないだろう。


 その一件が学校にバレるまで時間はそうかからなかった。逆恨みした男子生徒が学校側に訴え、優羽は停学処分になってしまったのである。

 当然、優羽は抗議した。そもそもあの二人が喧嘩をしていなければ、すぐに喧嘩を止めていればこんなことにはならなかったのだ。


 抗議がどれほどの効果を発揮したのか定かではないが、元からあの男子生徒二人は柄が悪いかったのだろう。学校から話を聞いた男子生徒の親が優羽に謝りに来て、結局、その男子生徒二人も停学処分になったのである。


 優羽も怪我をさせたのは事実だと認め、停学処分を受けることで責任を取ることにした。

 これで事件が一件落着していれば良かったのだが、そうはいかない。問題はここからだった。


 幸い警察沙汰にはならず三人が停学処分を受けることで学校としての騒ぎは治まったものの、優羽個人はそれだけでは済まなかったのである。


 運が悪いというべきか、優羽の父、礼儀は警察官だった。


 もともと、剣道は有段者である礼儀の勧められ、自分の身や誰かを護れるようにと言われて始めたものだった。

 そんな剣道で人を傷つけてしまった。理由はどうあれ、それが許せなかったようだった。なにより、有段者が素人に手を出せば犯罪である。そのこともまた、警察官の礼儀には我慢ならなかったに違いない。


 優羽はこっぴどく叱られ、人生で初めて頬を張られてしまった。

 いつもなら素直に叱られて終わりだったのだが、優羽も普段から厳しい父親に不満が溜まっていたのは間違いなく、頬を張られたのがきっかけだったのだろう、怒りが湧き上がった。加えて、礼儀は頭ごなしに叱りつけるだけで、優羽の事情はろくに聞こうともしなかったのである。


 優羽は反省をしていたからこそ停学処分を受け入れたのだ。にもかかわらず何故理由も聞かず怒られなければならないのか。


 結局は両者共に引かない大喧嘩となり、母と兄が止めに入るまで続いたのだった。

 家族を巻き込んで数時間も押し問答を繰り返した結果、優羽は礼儀に謝らず、礼儀も優羽を許さず、まるで冷戦状態のように大喧嘩は静かに幕を下ろしたのである。

 以降、優羽は礼儀と顔を合わせようとせず、口もきいていない。礼儀も礼儀で優羽を避けている。父と娘の間には、深い溝が横たわっているのだった。


「はぁ……」


 昇降口までやってきた優羽は、下駄箱からローファーを取り出しつつため息を吐く。

 さくらとの会話で二年前のことを思い出し、階段を下りる間中そればかり考えていた。


(考えないようにすればするほど考えてしまう。まったく、どうにかならないのか?)


 内心愚痴をこぼしながら靴を履きかえた。

 今でこそ父親との仲をどうにかしたいと思っているが、当時は家を飛び出そうとしていたほど父親を嫌っていた。


 頬を張られたことに対しては意外と早く許せるようになったが、喧嘩の原因とは直接関係のない部分での怒りが消えない。


 それは、兄との自由の差。


 拓馬は休みの度に旅行や冒険に行ったりと自由に生きていたのに、優羽は女の子だからという理由であまりそういうことをさせてもらえず、やることと言えば剣道と勉強だけ。確かに剣道は好きだったが、本当は拓馬のように色々な所を冒険したかった。誰の力も借りず、自分の力だけで何かをやってみたいとう思いが常に心の奥で燻っている。


(もっと前から反発してれば、あの時一気に爆発することはなかったんだろうか……)


 そう考えるのもこれで何度目だろうか。


(止めよう。気分が暗くなるだけだ)


 頭を振って意識を切り替えた。

 帰ったら店の手伝いをしなければ──、優羽はそう思って歩き出し、


「あ、優羽ちゃん。今帰り?」

 不意に後ろから声をかけられ、足を止めた。


「ん? ああ、美紀か。今日は特に用事もないからな。美紀も今帰るのか?」


 振り返ると、クラスメイトの国崎美紀がこっちを見ながら靴を履きかえていた。

 美紀は高校生になってからの友人で特別仲が良いというわけではないが、休み時間などに雑談くらいはするし、何度か昼食を一緒に食べたこともある。さくらを親友とするなら、美紀は普通の友人といったところだろう。


「まぁね。真ちゃんってば今日は用事あるとか言って先に帰っちゃったし」


 美紀は優羽の横に並ぶ。一緒に帰ろうということらしい。

 一人で帰るよりは二人の方が楽しい。優羽も断る理由などなく、一緒に歩き出した。


「真ちゃん……。ああ、前に言ってた美紀の彼氏か」

「ふへへ」


 彼氏という単語を出したとたん、だらしなく笑う美紀。優羽はまだ見たことがないが、美紀には真一という名の恋人がいるらしく、毎日のように一緒に登下校しているという。

 二人は幼馴染だったらしく、中学を卒業する時に思い切って美紀の方から告白し、晴れて恋人同士になったようだ。


 今は六月の頭であり、付き合ってから二カ月くらいだろう。今が一番楽しい時期であろうことは容易に想像が付く。


「さくらといい美紀といい、羨ましい限りだな」

「え? さくらちゃんって付き合ってる人いるの?」

「いや、そういうわけじゃないが──、ん?」


 二人揃って外にでると、暗い雲が広がっていた。梅雨時期ということもあり、いつ降り出してもおかしくない空模様である。


「降りそうだな。傘あるか?」


 優羽は自分の鞄に折り畳み傘が入っているかどうかを確認しつつ、問いかけた。


「うん、折り畳み入ってるから大丈夫~」


 ポンポンと鞄を叩く美紀。

 それを聞いて再び歩き出し、優羽は会話を戻す。


「付き合ってる奴はいないみたいだが、あいつスタイル良いだろ? だからけっこうモテるんだよ」

「あ~、さくらちゃんっておっぱいおっきいよねぇ。羨ましい……」


 言いつつ、密かに胸を隠そうとする美紀のそれは、お世辞にも大きいとは言えなかった。普通サイズを自称する優羽よりも凹凸がない。

 優羽は美紀の仕草を見てクスッと笑い、それを悟られないように口を開いた。


「昨日も他のクラスの男子に誘われたらしい。当然のように断っていたがな」

「もったいないな~」

「もったいないって、知らない奴から告白されても困るだけだろ?」

「そうかも知れないけど~」


 どうやら羨ましがっているようだが、優羽からすれば彼氏持ちの美紀の方が勝っている気がして、素直に同意できなかった。


(『彼氏がいるのとモテるというのは別物なのか……?)


 一瞬考えたが、やはり良く解らない。


「ところで、優羽ちゃんは?」

「ん? 何がだ?」

「だから、優羽ちゃんはそういうのないの?」

「わ、私か?」


 ここで自分のことを聞かれるとは思っていなかったが、美紀は普段の言動からも恋愛ごとに興味深々だと解る。故に、はぐらかしても無駄に終わるだろう。どうせ長引くなら簡潔に答えた方が楽だった。

 どう答えるべきだろうかと思案し、結局は本当のことを言うしかなかった。


「だいぶ前にだが、告白されたことならある……」


 自分で言っていて恥ずかしくなり、優羽は思わずそっぽを向く。


「なによ~、優羽ちゃんも告白されたことあるんじゃ~ん。私なんて自分からしかしたことないのに~」


 唇を尖らせる美紀。どうやら、美紀自身は誰からも告白されたことがないらしい。

 なるほど、それなら羨ましいというのも頷けた。


「まぁ、さくらの時と同じだ。私もそいつのことなんて知らなかったし、正直戸惑っただけだった。彼氏が欲しかったわけでもなかったし、普通に断ったよ」

「それでも羨まし~。あ~あ、真ちゃんも真ちゃんの方から言ってくれれば良かったのにな~」


 残念がる美紀は、小柄なこともあって子供のようだった。スタイルの良いさくらとは反対で、可愛らしさが美紀にはある。こういうところが真一という男子に受けたのだろうかとも考えたが、幼馴染なのだから他にも色々良い所は知っていたのだろう。

 なんにせよ、そういう間柄の異性がいない優羽にとっては羨ましい話だった。


(仲の良い異性なんて兄さんくらいしかいないからな)


 そんなことを思いつつ、胸元に視線を落とした。

 服に隠れて外からは見えないが、そこには首から提げたペンダントが存在している。鎖自体は市販のものだが、装飾品の部分は兄からのプレゼントだった。


(兄さん……)


 しまった、と思った時には遅かった。思い出すだけで心がざわついてしまう。今考えなくても良いのに、どうしても意識が向いてしまう。


「大丈夫?」


 じっと胸元を見ていたせいか、美紀が顔を覗き込んできた。

 美紀からすればずっと俯いているように見えたのか、心配されてしまった。

 それを見て優羽は、今自分がどんな表情をしているのか理解する。


(どうにもダメだな……)


 今まで散々辛いことを打ち明けてきたさくらならまだしも、流石に付き合いの浅い美紀にまで心配させたくない。

 なんとか誤魔化そうと、優羽は胸元に隠していたペンダントを取り出した。


「なんというか、異性との思い出なんてコレくらいだと思ってな」

「えっ? なにそれ~! も、もしかして男の人からプレゼントされたの~!?」


 ペンダントを見た瞬間、妙にテンションが高くなる美紀。どうやら上手く誤魔化せたようだった。


「残念。男は男でも兄さんからのプレゼントだ」

「へ? な~んだ、そうなんだ」


 あからさまにがっかりする美紀。解り易い性格だった。

 けれど一変し、違うところに興味を示す。


「でも、優羽ちゃんってお兄さんいたんだね~。私一人っ子だから兄弟って羨ましいな~。仲良いの?」


 美紀は一人っ子なんだな、と妙に感心しつつ、優羽は拓馬との間柄を思い返す。


「どうだろう? 確かに兄さんとはあまり喧嘩をしたことはないから、仲は良いと思うが」


 答えてから、優羽はペンダントを眺めた。

 オレンジ色に透き通ったそれは、剣の形を模している。

 剣という形は嫌でも剣道のことを思いだしてしまうが、拓馬からのプレゼントである手前、捨てようと思ったことは一度もない。


 そもそも、捨てるくらいなら最初から受け取っていないだろう。なにせこのプレゼントは中学生最後の冬休みにもらった物で、剣道を止めてから一年以上も経ってから貰ったのだ。当然、拓馬も優羽が剣道を止めたことや父親と大喧嘩したことは知っている。


 それでも──



『優羽って剣道をしてる姿が一番カッコイイと思うし、似合ってると思うんだ。優羽だって本当はこのままじゃいけないって思ってるんだろ? だから、いつか父さんと仲直りできるように、はいこれ。プレゼント』



 他人ならいざ知らず、他でもない拓馬にそんなことを言われたら受け取らないわけにはいかない。


 何より、拒否しなかったのはその言葉を聞いて初めて、優羽は自分の本心に気付いたからだった。プレゼントされるまでは思い出すたびに苛立つだけで、本心ではどう思っているかなど考えてもいなかったというのに、拓馬は優羽自身よりも優羽のことを解っていて、それを教えてくれるために剣の形を模したペンダントをプレゼントしてくれたのだ。


(兄さんには敵わないよ、まったく)


 依然として行方が解っていないのに、優羽はついつい頬が緩んでしまった。


「優羽ってさ、もしかしてブラコン?」

「はぇっ?」


 美紀の唐突な質問に、優羽は素っ頓狂な声を上げてしまい、色々な意味で赤面する。


「だって、そんな嬉しそうな顔でペンダント見つめてるんだもん。まぁ、優羽がブラコンだったとしても別に良いんだけどね。むしろ、運動も勉強も料理もできちゃう完璧超人な優羽にはそれくらいの面白味があった方が良いと思うよ」


「ブラコンじゃないし完璧でもないっ!」


 勉強が出来るわけじゃなく、家が厳しかったせいで勉強をしなければならなかっただけである。料理も母が喫茶店を経営しているから、手伝いをしている内に自然と覚えたに過ぎず、運動だって剣道のおかげだと優羽は考えていた。

 本当に完璧なのは、いつも飄々としてるくせに本心を見抜いてくる兄さんの方だ──、優羽はそこまで考え、ふと思う。


(待て。そういえば最近、兄さんのことしか考えてなかった気がする。今だって兄さんを完璧だと考えたり……。いや、確かに憧れてはいるが、それはあくまでも兄さんの生き方に憧れているだけで、別に異性として憧れているわけじゃないし、むしろただの兄妹というか家族というか……。え、なんだ? もしかして他の兄妹は違うのか? 私がおかしいのか? だ、だが、自分の理想の生き方をしている人がいたら、普通は憧れるものだろう?)


 優羽は真剣に自問自答する。

 今までずっと普通だと思ってきたが、もしかしたらおかしいのかも知れないという可能性が生まれてしまい、急に兄に憧れるこの気持ちが恥ずかしくなってしまった。


「あっはは!」

「え、は?」


 急に笑われ、優羽は美紀に振り返る。


「冗談よ冗談。優羽ちゃんすぐに本気にするんだもん。ちょっとからかっただ~け」

「なっ、お、お前な!」

「でも、そんなに真剣に悩むと、本当なのかな~って疑っちゃうよ~?」


 悪戯っぽい表情で顔を覗き込んでくる美紀に、優羽はそっぽを向いて足早に歩きだした。


「そ、そんなんじゃない! 私と兄さんは至って普通の──」

 そこまで言いかけて、ふと美紀の気配が消えたことに気が付いた。


「って、美紀? 急にどうし──」


 急に早足になった所為だろうかと思い、振り返ろうとした。

 その瞬間。


「っ!?」


 黒い影が視界を遮った直後、優羽の身体は軽々しく宙を舞った。


「ぐっ!? が……っ!」



 何が起こったのか解らない。解らないまま、優羽は地面を何度も転がった。



「かはっ!?」


 何かに背中をぶつけ、ようやく止まる。



「う、うわぁぁああああ!」

「化け、化け物だ!」

「け、警察! 警察を呼べ!」



 周囲がやたらと煩いが、地面を転がったときの激痛で頭が上手く働かなかった。どうして叫んでいるのか理解できない。


「つぅ……っ」


 傷みを堪え、必死になって現状を理解しようとする。何にぶつかったのかと思って後ろを見れば、それは電柱だった。仮に背中ではなく頭を叩きつけていたらと思うと背筋が凍るが、今は考えないようにしてその電柱を支えに上半身を起こす。

 車にでも撥ねられたのだろうかと思い道路の方を見る。


 ガードレールは壊れていない。そもそも、ちょっとやそっとのスピードではガードレールを突破できないだろう。なにより、そんな衝撃音はしなかった。


(み、美紀は……?)


 何がどうなったのか解らない上に、自分の怪我の程度も定かではない。それでも、先ほどまで隣を歩いていた美紀の方が心配だった。

 優羽は視線を彷徨わせた。



 そうして、目撃する。



「なっ──」


 十メートルほど前方。

 トラックほどの大きさの化け物が、口から赤い液体を零しながら顎を動かしている。大きく突き出た白く鋭い牙の脇からは“何か”が飛び出ている。


(え?)


 その“何か”が人間の足だと気付くのに数秒。


(じょ、冗談だろ……?)


 ニーソックスとローファーを履いていることを理解するのに、さらに数秒。


(嘘だ……!)


 その足が、今まで隣を歩いていた美紀の足だと気付くまでに、十秒以上を要した。

 巨大生物の足元には飲み切れなかった血が広がり、その中に制服の切れ端と肉塊が浮かんでいるのが見える。


「うっ」

 胃液が逆流した。


(なんだ!? なんで!? 嘘だろ!? 美紀は!? 美紀はどこへ行った! あの化け物はなんなんだ!)


 咀嚼されている足が美紀の足だと気付いているのに、優羽の視線は美紀の姿を求めて左右に揺れる。

 認めたくない。否、認める認めない以前に、現状への理解があまりにも乏しかった。

 混乱は混乱を呼び、その混乱こそが恐怖へと変貌する。


 と、

「グゥゥ……ッ!」


 アスファルトを踏み砕き、巨大生物が一歩足を踏み出した。

 いつの間に飲み込んだのか、足はもう見えていない。


(お、狼……、なのか!? な、なんで!? こんなデカい狼なんているわけないだろう!?)


 所々毛が抜けおち、露出している皮膚は腐っているようにも見える。

 現実の光景にはとても思えず、優羽の身体は恐怖によって硬直していた。


「くっ」


 なんとか地面を這って逃げようとするが、手足を動かす度に激痛が走る。


「いつっ!」


 耐え切れず、思わす腹に手を当てた。暖かくぬめるその手に驚き、慌てて視線を掌に向けると自分の血で染まっていた。


「う……っ」


 今までは興奮状態で感覚が麻痺していただけなのだろう、尋常ではない出血量を見てしまった瞬間から一気に身体から力が抜けていく。

 逃げなければ──、そう思えば思うほど力が入らず、巨大生物との距離が縮まっていった。


「く、くるな!」

 思わず叫んだ。


「だ、誰か! 誰か助けてくれ!」


 そこに至ってようやく誰かに助けを求めれば良いと思いつき、急いで周囲を見渡した。

 人影はない。優羽が気付かない間に逃げてしまったのか、遠くの方でこちらを窺っている人影は見えたものの、近くには誰もいない。国道を走っていた車も今はいなかった。

 優羽は今、完全に孤立していた。


(そ、そんな……)

 絶望が襲う。


「ゥゥゥウウッ」


 目の前まで迫った巨大生物は、今にも襲いかかろうと身をかがめていた。

 喰われる──、そう直感した優羽は、何故か違う感情が湧き上がってくるのを感じた。

 それはちょうど、父親に頬を張られた時のような気持ちに酷似している。


(冗談じゃない! 嫌だ! ふざけるなよっ!)


 恐怖は感じている。混乱もしている。だが、今一番優羽の心を占めているのは、怒りだった。

 あまりにも理不尽。理解さえ及んでいないのに、こんな簡単に終わって良いわけがない。

 ただひたすらに訳が解らず、だからこそ、純粋に目の前の化け物が許せない。


(兄さん!)


 優羽は血に塗れていることなど構わずとっさに手を伸ばし、ペンダントを掴む。


「ゴァァァアアアアアッ!」

「くるなぁぁぁああああああ!」


 雄叫びと怒声染みた悲鳴が木霊した。



 その直後──


なんか微妙なところで終わってます。

楽しんでもらえたなら幸いですね。


意見、感想などありましたらお願いします。

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