~エピローグ~
過程を省略し結論または解答を得た人間は過程を知ろうとする知的欲求に従うか、別の命題の結論または答えを求めに現状からの離脱をするという人間に二極化される。
食人鬼の記憶が鮮明に脳裏を瞬いていく。
それはいつの日の記憶だったのか今ではもう定かではない。しかしそれが自分にとって大切であったという根底にある本分だけはしっかりと忘れることなく覚えていた。
ある少女は言う。ありがとう、と。
その一言で、その輝かしい笑顔に、全てが満たされたのだ。満たされてしまったのだ。有体に言えば恋に落ちたのだろう。しかしその時の食人鬼には分からなかった。
だから、もっと満たして欲しくて、もっと満たしたくて、その方法は自分が知る唯一のもの。
精一杯の愛情表現の末に視界は赤一色。口も赤く染まり、両の手は目の前の馳走を無作法に掴み、顎は肉を咀嚼するくちゃくちゃという下劣な音を奏でていた。
始まりの記憶は後悔と自責の念を呼び起こすだけしか無かった。
それでも奪われた記憶をこうして見ることができた。食人鬼はやはり食人鬼だった。それでもほんの一厘だけでも救われた記憶がある。それだけで充分だった。




