新築前よ!
「しかたがないから、明日に伸ばすよ」
一日でげっそりするカカンボ父さん。
「もういや。こんな生活ぅぅ」
くやしそうに突っ伏し、テーブルをドンドンたたく。
「あなた、ごはんなんですけど・・・・・・そこどいて」
「お前、冷たいね!」
「しかたないでしょ、まだ新築前のボロアパート借りたんだから! とっても狭いのよ! それともあなた、王党派の鬼畜英雄、ラファイエット倒して経験値とお金、稼いでくれるの?」
「そ、それは無理・・・・・・」
「でしょ。だったら、そこどいて」
息子をいじめたので、ご機嫌斜めなようだ。
「・・・・・・すみません、ゆるしてください、カエデさん」
「とうぶんは、無理ね。どうしてもというなら、ドラグーン・タイラントで手を打ってもいいけど」
母は強し、という言葉を思い出してしまったカカンボ。
「うう、好きにしなさい」
「やったあ、愛してるわ、あなた!」
――こんな愛情、勘弁してほしいけどね・・・・・・。
カカンボは、カエデ嬢から視線をふっと横へそらす。
「わかる、わかるじょ、カカンボ。わしゃ感動したニャン」
「おお、心の友よ!」
がっしりと握手を交わすマーブルとカカンボ。
「あら、かわいいのね。あなたのお友達?」
「こいつ? マーブル」
「お友達というよりは、マブダチです、奥さん」
マーブルは劇画タッチの表情で答える。
「その顔は、よせ・・・・・・その顔は」
「にゃはは、それもそうだニャン」
「肉球がやわらかいわねえ」
マーブルはカエデ嬢に肉球をつつかれて、またたびをかじったときのような、酔った顔をする。
「おや、どうしたねマーブル」
「にゃあああ・・・・・・わ、われわれにゃんこは、そこがよわよわよわ」
「かあさん、やめてあげれば?」
するとカエデ嬢、残念そうに、
「いやあん、おもしろかったのにぃ」
「かわいそうだろうがッ!」
「ど、同情するなら、メシをくれ・・・・・・」
そこでカカンボはようやく、マーブルをつれてきた経緯を思い出した。
「おお、そうだった。かあさん、こいつにメシを与えておやり。行き倒れて困っていたんだ」
「まあそうなの。おなかがすいてるなら、そういえばいいのに。ふたりとも!」
「ばか! 俺じゃねえよ、こいつだって!」
「はら・・・・・・へっにゃ・・・・・・」
カカンボは、ふかあ〜いため息を吐くとともに、イスを後ろに引いて腰掛けた。
現代版に似てきましたな・・・・・・。
でもラファイエット倒せば、英雄の座を誇れますので、このままということに・・・・・・。
てこりゃあ、ゲームじゃないのにぃ!




