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錬金術師は猫さん

 数日して、カカンボにも赤紙が来た。

 いや、フランスでも赤紙って言うのか? 汗。 

「とうとういってしまうのね」

「どうやら俺の噂を聞いたらしい。なまじ有名になるものでは、ないな」

「ちがうわ、あなたがやたらめったら、強いのがいけないのよ」

 カカンボ、冷や汗を流す。

「カンディード様と旅をした、あのころのことかい。もう、かれこれ、何年前になるのかな」

「クロードが生まれたころだから、十八年くらいかしらね」

「もう、そんなになるんだ」

 夫妻が昔を懐かしがっていると、息子がひとり、ニヤニヤしている。

「な、なんだよ」

「別れはすんだぁ? おとうちゃん、いつもらしくないからさぁ」

 カカンボは無理やりカッコつけて髪をかきあげた。

「ふ、なにをばかな。お前、ずるがしこいラスボスみたいなこと言ってんじゃねえよ」

「えー。もっと別れを惜しんだら? ぷぷ」

 カカンボとカエデは、我が子のおばかぶりに呆れて、物がいえずにいた。

「お前ね、いったいどこでそんな妙なせりふを覚えて来るんだ」

「寄宿舎ぁ」

 ――ろくでもねえな、最近の騎兵隊の・・・・・・。

「子供は子供らしくしなさい! まったく」

「まあまあ、いいじゃないの、あなた。亭主元気で留守がいいんでしょ。ぷぷっ」

 カカンボは怒る気力をなくして、しょげ返った。

「そそそそれは、俺に生きて帰るな、と・・・・・・」

「生きて帰ってほしいに決まってるじゃん。ばかねぇ」

 ――いや、ばかはおまえだろ・・・・・・。そうか、クロードのアホの原因はコイツだ・・・・・・。

 かわいそうなカカンボは、肩にドラグーンと呼ばれる、通常のマスケット銃よりも少し大きなものを背負って、軍服と階級帽をかぶる。

「いってらっしゃーい」

 バカな嫁を持つと、苦労する。

 おまけに息子もアホときた。

 苦労が絶えませんねぇ、カカンボさん・・・・・・。



「あっ、おとうちゃん。にゃんこが死んでるよ」

 カカンボは腰を抜かした。

 なんと、町の往来で行き倒れの、ローブを羽織った猫がミイラ化して・・・・・・いや、寸前で、

「め、メシくれ・・・・・・」

 と、カカンボにすがりついた。

「いや、こいつは猫というよりも・・・・・・化け猫・・・・・・」

「にゃん!?」

 とたんに耳をピンと上げ、そいつは起き上がって、機関銃のごとくに、

「にゃんだと! 我輩を化け猫と申すにゃか!? 失敬にゃ。わしゃこう見えても、錬金術師なんだにゃン!」

「錬金術師? なんだいそれ」

 クロードがぼけた。化け猫は頭から地面に突っ込む。

 まるでギャグ漫画のように!

「だいじょうぶか、猫さん」

 カカンボはたけのこを引っこ抜く要領で、にゃんこを助けてやる。

「錬金術師を知らないのか。お前、今まで何のためにボローニャやケルン大学へ行かせたと思うね」

「遊んで女の子をナンパするためじゃなかたの!? しょえー!」

 ――なあにが、しょえーだよ。このガキは。

「お前の息子、なさけないにゃあ」

 猫から先に言われてしまった・・・・・・。

 

       

 苦労が絶えませんね・・・・・・。

 カカンボさん・・・・・・。

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