8話 12歳 気持ちの変化
「ほら、どうした!攻撃してもいいんだぜー!」
相手は、ハハハハハ!と、楽しそうに木刀を打ち込んでくる。
カンッ!カンッ!
と木刀同士がぶつかり合う音が周りに響く。
今は剣術の稽古中。
相手は剣術の師匠であるベーンさん。
腕は一流だが、勝負が好きで、熱くなると少々人が変わってしまう節がある。
アリアが対応できるギリギリの早さで打ち出される剣戟。
捌くので手一杯で、攻撃に移ることができない。
たまに隙を見せてくれるのは、稽古中だからだろう。
そのチャンスを逃さず、攻撃をしかける。
両者、疲れというものを知らないのか、傍から見たらハイレベルな攻防が10分もの間続いた。
突然、ベーンは素早く身を引き、距離をとる。
木刀を下げ、
「ところでアリア、昨日とは雰囲気が違うが、何かあったのか?」
と聞いてきた。
普段通りだと思っていたアリアは、指摘されてびっくりする。
「そう不思議そうな顔すんなって。俺はお前のお師匠様だぜ?そんくらい分かるわ」
3年の付き合いだからか、人の心情を読むのがうまいのか判断に困るが、
「あー…そんな違いました?」
と、回答をぼかす。
可愛い少女と夢で会い、気合を入れ直したなんて、恥ずかしくて言えなかった。
「そうだな、普段よりも眼つきが鋭かったのと、お前なんてすぐに追い越してやるぜ!!ってのがすげー伝わってきたからな」
「まぁ…思ってないとは言いませんが…」
苦笑いを浮かべ
「そうですね、気合が入っていることは確かです。はぁ…バレてしまったみたいなんで言わせてもらいますが、俺はいつか師匠を越えてみせますよ」
と7割本気の残りが照れ隠しで宣言した。
「おぉ!言うねぇ!楽しみだねえ!!だが、まだまだ子供にゃ負けらんねーよな!」
ハッハッハと本当に楽しげに師匠は笑った。
その後、再開された稽古ではいつも以上に剣戟の速度が早かった。
『まだまだ越えれそうにないなぁ…』
とアリアは思うのだった。