7話 12歳 少女の世界
いきなり年齢が飛んでます・・・
『ここは、どこだろう?』
周りを見渡し、アリアは不思議に思う。
なぜか、知らない草原の中で大の字で寝ていた。
わけが分からず、昨日の記憶を辿る。
昨日はベーン師匠と模擬戦を行い、アレイス先生の屋敷の地下で、独自の魔法の研究を行って…
自宅についてからは、父さん母さんと食事をとって、寝たはず。
寝たはずなのだが…
『ここ…どこだ?』
と首をかしげる。
「起きた?」
突然、背後から声がかけられて、アリアはビクッとしつつ、素早く振り向く。
そこに立っていたのは、かわいらしい少女だった。
気配を感じることができなかったので、警戒しながら尋ねる。
「…君は誰だい?」
「…私の言葉、聞こえていますか?理解できますか?」
少女はこちらの質問に答えず、質問をしてきた。
その、どこか悲しそうな雰囲気に覚えがある気がしたが、思い出すことはできなかった。
「…大丈夫、聞こえているし、理解もできる」
「…」
俺の返事を聞く前から、少女の目は潤っていた。
返事を聞いてから、涙が溢れでる。
アリアは意味が分からなかったが、自分が泣かせてしまったと思い。
「ごめん!俺が何かしたなら謝るから!泣かないでくれ!」
と頭を下げる。
少しして、少女は落ち着きを取り戻したようだった。
そして、
「また会えて、お話しすることができて、私は幸せです」
と、可憐な笑みをアリアに向ける。
物覚えが良いはずのアリアだが、この少女が誰だか分からなかったので、
「ごめん!君は俺の事を覚えていてくれたみたいだけど、えっと…俺たちどこで会ったっけ?」
正直に聞くことにした。
少女は少し悲しそうな表情をするが、
「覚えていなくても仕方ありませんね。もう6年ほど前になりますから…」
と言った。
『6年前?』
何かがひっかかる。6年前というキーワード、それとあの雰囲気…
少女が続きを口に出す前に、
「…夢の中で、昔、一度だけ会った気がする?」
自分でも夢で会ったと言うのはおかしな気がしたが、それが答えだった。
「…覚えていてくれたのですね?」
またも泣き出しそうな少女をなだめ、
「いや、今まで忘れていたよ。ごめん」
と、謝る。
「いえ、思い出してくれただけで十分です。あの時のあなたは、すごく頑張りましたから」
何を頑張ったっけかな、と疑問に思い、黙っていると
「そういえば、ここの事をまだ何も説明していませんでしたね」
「あー、そうだったね」
大事な事を思い出し、二人して笑った。
「遅くなりましたが自己紹介を…私の名前はルルって言います。そしてこの空間は、夢であって、夢ではないところ」
「んん?夢じゃないの?」
「半分は夢ですが…ここは、私が存在するために作られた世界で、あなたが私に会うためには夢を利用しなければなりません。なので、夢のように思えますが、ここも本当の世界の一つなのです」
「ごめん、さっぱりわかんないや…」
「わからなくても大丈夫です。私はここにいる。それだけを知っていてもらえれば…」
ルルの表情がまた曇り出した。
「どうしたの!?またなんか俺、やっちゃった!?」
「いいえ、すみません…また会えて、お話もすることができたのに…まだ、迎えの時ではないことが分かってしまったので、少し悲しくなってしまいました」
『迎えの時?…』
ルルは顔を上げ、
「でも、私、ずっと待ってますから」
と、無理に作った笑顔をこちらに向けてくるのだった。
ルルの言葉の意味を理解することはできなかったが、
自然に、今やるべきことが思い浮かぶ。
ルルの頭に手を置き、
「悲しまないで、俺、頑張るから」
と微笑む。
やるべきことをやったからだろうか?
意識がだんだん遠くなってきた。
「あぁ…夢の中なのに眠くなってきた…」
眠気の所為か、崩れ落ちそうになったアリアを抱き支えて
「またね、アリア…私はいつまでも待っていますから…」
と、ルルは囁くのだった。