5話 6歳 魔術の先生
数日経ち、先生との約束の日になった。
父さんと一緒に、町の一角にあるちょっと大きな屋敷を訪ねる。
出迎えてくれたのは侍者だろうか。
「お待ちしておりました。どうぞこちらです」
と言って、二人を奥へと案内する。
通された部屋の中には、椅子に座った一人の老人がいた。
「アレイス先生、本日は時間をとっていただきありがとうございます」
父さんの発言から、この人が父さんの先生だということを把握するアリア。
「うむ、構わんよ。かわいい教え子の頼みだからね。それで、その子が君の子供かね?」
「はい。さぁアリア、挨拶しようか」
「アリア・クロイツです。初めまして」
ペコリと頭を下げる。
「ああ、初めまして。私はアレイス・コルク。うむ、なかなか礼儀正しい子供だの」
「私たちの自慢の息子ですから。先生、本題に入りたいと思うのですが、よろしいでしょうか」
事前にアリアに魔法を教えて欲しいという事を伝えているので、今日来た理由を省く。
「うむ。その歳で魔法を扱うことができるのだろう?たいしたものだよ。そうだな、まずはアリア君、君の力を測らせてくれ。この装置の上に手を置くだけでいいから」
机の上にあった水晶玉みたいなモノの事を言っているのだろう。
アリアは頷いて手を乗せる。
アリアの目には何の変化も映らなかったが、アレイスはふむふむと頷いている。
その様子から、魔法でも使っているのだろうと見当をつける。
「先生、また新しい魔法でも開発したのですか?」
父さんの言葉『魔法の開発』と聞いて、アリアはびっくりする。
新しい魔法を生み出すことができる人は希少な存在で、
世界でも数十名しかいないと聞いたことがあるからだ。
アレイスはアリアの反応を見て、この装置の安全性について説明をしていなかったことに気づく。
両者の間には少し誤解があったが、この誤解は解けることがなかった。
「ああ、これはだね、手を置いた者の現在の力を視る事ができるのだよ。痛みとかは無いから安心してくれ。まあこれは、少し特別なモノだから、私以外使えないがね」
「また、すごいものを作られましたね…それで、どうでしたか?」
「うむ、既にDランクほどの実力を持っておるみたいじゃな…」
魔術師は実力に応じてランク付けされる。
ランクはA~Fまでの6段階で分けられており、大体の目安が
A=王宮魔術師 B=一流魔術師 C=二流魔術師 D=三流魔術師 E=新米魔術師 F=魔術師見習い
となっている。
アリアの年齢ではF以下、つまりランク外が普通。
「ふむ、おもしろい!少し面倒を見ようじゃないか!」
アレイスはにこやかな笑みを浮かべ
「アリア君、これからよろしくな。私の事は先生と呼んでくれ」
と、改める。
「はい!よろしくお願いします。先生!」
アリアは元気良く頭を下げた。
「先生、ありがとうございます。アリアをよろしくお願いします」
「ああ、任せなさい。そうじゃな、稽古は明日から始めるとしようかの」
その後はこれからの予定などを話し合った。
元々、子供が好きで先生になったアレイスは、
アリアともすぐに仲良くなった。
屋敷を案内してくれた侍者のウェルさんも良い人で、
アリアはこれからの日々が楽しみで仕方がなくなった。
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