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3話 6歳 夢の中での出会い
僕は今、夢を見ている。
夢だということは分かるが、なんだか意識がはっきりしない。
近くに何かがいる気配を感じるけれども、何も考えることができない。
「…………」
その『何か』が僕に語りかけているのか、ずっと僕のことを見ている。
「…………」
いつ終わるか分からない夢の中で、その『何か』は変わらず側にいて、
こちらを見ている。
なんだろう、だんだんと元気が無くなってきたように思えるのは僕の気のせいだろうか?
姿ははっきり見えないし、何を言っているのか理解することもできないのに…
その『何か』が悲しい思いをしていることを、心で感じることができていた。
だから、
「かな…しまない…で…」
と、
薄れる意識の中、『悲しまないで』と、一言だけ、一言だけだけれども、
自分の伝えたいことを、言葉にすることができた。
朝目覚めて、
『不思議な夢だったなぁ…』
程度に夢の事を思い、いつものように朝の鍛錬へと向かった。