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第8話 名前を呼んで、溶け合って♡

 心臓がバクバクして、頭の中が真っ白になる♡

 耳が熱くて、顔もきっと真っ赤。視線は勝手に由梨ちゃんに吸い寄せられて、世界の音まで小さくなっていく♡♡


 誤魔化しようがない火照った顔を落ち着かせようと、なんとか笑みを浮かべる。

 でも……無理。どうしても照れ笑いになって、口角が勝手に上がってしまう♡

 由梨ちゃんの『綺麗』『可愛い』って言葉だけが、ふわふわした頭の中で何度も浮かんでは消えて、脳の内側を甘く焼き付けていく♡♡


「そ、そっか。改めて、そんなこと言われたら私も照れちゃうな」


「ふふ、白鳥さんも照れることあるんだ」


 俯きながら指先をつつき合わせると、由梨ちゃんがぱちりと瞬きをして、いたずらっぽく笑った♡

 その仕草に、胸の奥がとくん、と痛いほど高鳴る♡♡


 今まであまり見たことなかった由梨ちゃんの表情♡

 それだけでぎゅっと苦しくなって、胸の奥に「好き」って言葉があふれ出す♡♡


 可愛い……可愛いっ……ほんと、由梨ちゃん……可愛い……♡

 もっと色んな由梨ちゃんが見たいの……♡笑った顔も……♡怒った顔も……♡……全部っ♡

 どうか私を、由梨ちゃんって檻に閉じ込めて……♡


「あるに決まってるじゃん。私のことなんだと思ってるの」


「綺麗で可愛くて、常にみんなの中心で完璧な女の子」


「もー、そんなんじゃないから。てか、それ褒めてる?」


「うん、褒めてる。でも、それだけじゃなかった。私みたいなのでも、ちゃんと向き合ってくれて、なんでもない悩みにも答えてくれて。頑張って距離詰めるために悪戯っぽいことして空回っちゃったり、それでいてちょっとしたことで引いちゃったり」


「もー、恥ずかしい恥ずかしい、やめてやめて」


 褒め言葉の連発に、顔から火が出そうになる♡

 心臓はドキドキ、呼吸は浅くて落ち着かない♡♡

 由梨ちゃんの真剣な瞳がまっすぐ向けられているのに、私は机の角を見つめて逃げるしかなかった。


 呼吸をしているはずなのに、胸がきゅっと締めつけられて、息が喉の奥でつかえてしまう♡

 それでも、苦しいのに気持ちいい♡♡

 胸を締めつけるこの熱を、もっともっと浴びていたい♡♡♡


 頭の中では、小さな妖精たちが、私の脳内で騒ぎながら花火を打ち上げている♡

 ぱちん、ぱちんって光るたびに、胸の奥がきゅんって縮んで、喉がくすぐったくなる♡♡


 ——もうダメ♡

 由梨ちゃんの言葉が、私の体中を甘く焼き付けてる♡♡

 理性なんて簡単に吹き飛ばされて、「好き」って言葉が口からこぼれ落ちそうになる♡♡♡


 好き……♡好き……♡好き……♡壊れちゃうぐらい好き……♡

 ああ……好きすぎて……♡心が震えてる……♡

 体温も心拍も……♡全部由梨ちゃん色に染まってく……♡

 好き……♡この気持ち、全部受け止めて……お願い……♡


「思ってたより、ずっとずっと素敵だった。白鳥さんに相談して良かった」


「だからもー、褒め殺しダメだって……」


 震える声でなんとか言い返す。

 でも頬も耳も真っ赤で、きっと今の私、まともな顔してない。


 『素敵』『相談して良かった』『綺麗』『可愛い』──頭の中でふわふわループする言葉がどんどん増えていって、キラキラした光がはじけるみたいに甘さが体じゅうを駆け巡る♡

 嬉しさと恥ずかしさが混ざり合って、胸の奥までじんわり熱くなった♡♡

 頭はもうオーバーヒートして、由梨ちゃんの言葉ばかり追いかけて溶けてしまいそう♡♡♡


「私も坂尾さんのイメージ変わった。もっと大人しくて、言いたいこと言えない子だと思ってた」


「……それは白鳥さんのおかげかも。白鳥さんが色んなことズバズバ言ってるの聞いてたら、私ももっと言いたいこと言って良いのかな?って思っちゃった」


「……それ褒めてる?」


「…………」


「ねえってば!?」


 由梨ちゃんは口元を押さえて、笑いをこらえきれずに肩を揺らした♡

 その笑い声は小さな鈴みたいに軽やかで、私の胸にひらひらと舞い降りる♡♡

 横顔が眩しくて、目をそらしたくなるのに、やっぱり見てしまう♡♡♡


「ふふっ。でも、とっても感謝してる。白鳥さん、ありがとう」


「もうっ、恥ずかしいなぁ。てか、その白鳥さんってのも良いよもう。沙織って呼んで。私も坂尾さんじゃなくて、由梨って呼ぶから」


 名前を呼び合うところを想像したのか、由梨ちゃんは視線を泳がせながら、ほんのり色づいていた顔がどんどん赤く染まっていく♡

 それを隠すように、両の手が包むように顔を覆った♡♡

 その姿は可愛すぎて、胸の奥がきゅっと鳴った♡♡♡


「えぇ、待って待って。いきなりそんなの、無理だよ。呼び捨てなんて出来ないって」


「えー、なんでよ。無理じゃない無理じゃない。ほら、呼んでみて」


「…………沙織……ちゃん……」


「なんで“ちゃん”付けなの!?」


「無理無理無理、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。心臓飛び出ちゃう!」


「もうっ……じゃあ、私も由梨ちゃんって呼ぶね」


「……うん、分かった……沙織……ちゃん……」


 耳まで真っ赤に染まった由梨ちゃんが、机に突っ伏しそうになりながらも絞り出した声は、羽根みたいに小さくて、でも甘すぎて胸に刺さった♡

 名前ひとつ呼び合っただけで、心臓が跳ねすぎて壊れそうだ♡♡


 互いに視線を泳がせながら、照れ隠しのようにどうでもいい世間話を続けた。テストの範囲の愚痴とか、購買のパンがすぐ売り切れるとか。そんな取るに足らない話題が、どうしてこんなに嬉しいのか分からない。ただ、話すたびに息が弾んで、二人のあいだに積もる距離が確かに溶けていく。


 気づけば、由梨ちゃんがスマホを取り出して差し出していた。


「……その、連絡先……交換してもいい?」


「えっ……あ、うん、もちろん!」


 指先が触れ合うほどの距離で画面を操作して、互いの名前が小さく並んだ瞬間、胸の奥でまた爆竹がはじけた。画面を閉じても、その鼓動だけは止まらない♡


 好き……好き……ねえ……もっと近くに来て……♡

 触れて、溶けて……好きで壊れるなら、それが幸せだから……♡

 幸福の粒が全身を撫でて……とける……♡


 気がつくと、窓の外の空は青から夕焼け色に変わりかけていた。

 赤くなった私の顔もこれで少しは隠せるだろうか。


「そろそろ帰ろっか」


「……うん」


 二人で机の間を歩き出す。

 靴の音が重なって響くたび、なんだか秘密を分け合ったみたいで、胸が少しだけ温かくなる。

 廊下にはもう誰もいなくて、静かな空気に包まれながら、私たちは肩を並べて教室を出た。

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