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第4話 情緒のジェットコースターに乗せられちゃう♡

 でも、そこで表情を曇らせる由梨ちゃんが、またずるいくらい可愛いのだ♡

 揺れる前髪の奥から覗く由梨ちゃんの横顔は、もう、どうしようもなく可愛い♡♡


 頬は桜色に染まっていて、瞳はうるんだ光を宿している♡

 言葉を紡ごうとする度、唇が小さく形を変える⸻笑ったり、噛みしめたり、また緩んだり♡♡

 そのたび、胸の奥で何かがじわっと熱を帯びる♡♡♡


 あぁ、恋をしてる女の子って、どうしてこんなに愛おしいんだろう♡

 今の彼女は、ふわりと手を伸ばせば、そのまま溶けてしまいそうなほど柔らかくて、儚くて、守ってあげたくなる♡♡


 由梨ちゃんの横顔を見た瞬間、胸の奥が、ふわっとあったかくなった♡

 それは血流にのって全身に広がってくみたいで、なんだか甘い液体が脳の奥からじゅわ〜っとしみ出してくる感覚♡♡

 視界のまわりがほんのり滲んで、由梨ちゃんの小さな動き一つ一つが、もう宝物みたいに愛しく見える♡♡♡


 ⸻あ、これ、やばい♡

 触れたい。けど、触れたら絶対もう離せなくなる

♡♡

 そんな危ない予感があるのに、指先が勝手にうずいてしまう♡♡♡


 心臓は落ち着いてるのに、頬の内側は火照ってて、呼吸はだんだんゆっくり深くなる♡

 まるで由梨ちゃんが、私の神経回路をやさしく撫でながら、「幸せスイッチ」をカチッと押してるみたいで⸻♡♡


 あぁ、このまま沈んじゃったら、きっともう、戻れない♡


可愛い……♡ほんとに……好きすぎて……♡もう、どうにかなっちゃう……♡

熱くて……♡苦しくて……♡でも幸せすぎて……♡溶けたい……♡

壊れてもいい……♡このまま好きって叫ばせて……♡

この世界、大好きで満ちてる……♡


 表情も、声のトーンも、ふとした沈黙の間さえも、いつもと違って見える。

 そんな瞬間を、一番近くで愛でたいから、大嫌いな男がいても、私は女子校じゃなくて共学の高校を選んだ。


 ただ眺めるだけじゃ足りない。

 恋する子の瞳の奥できらめく光を、宝物みたいに集めたい。胸がキュンって苦しくなる♡

 頬が赤く染まる瞬間を、絵画みたいに額に入れて飾っておきたい。視界がぐらぐら揺れていく♡♡

 誰かの名前を呼ぶときの声を、音楽みたいに胸に響かせたい。思考がふわふわ浮かんでいく♡♡♡


 共学という場所は、そんな「恋する女の子たち」の見本市みたいなもの♡

 私はそこで、誰かを見つめる横顔も、何かを想って遠くを見る瞳も、全部抱きしめるように愛している♡♡

 恋する女の子を、もっと近くで。もっと深くで。もっと長く⸻愛で続けるために♡♡♡


 ⸻なのに。


 そんな女の子を、男なんかに触らせるなんて。

 胸の中で、冷たいものと熱いものが同時に湧き上がる。

 指先がじわりと熱を帯び、喉の奥がきゅっと詰まる。

 「渡したくない」という気持ちが、静かに、でも確実に形を持ち始める。


 由梨ちゃんが恥ずかしそうに笑うと、私は心のどこかでため息をつく。

 可愛すぎて、もったいなくて、⸻そして、悔しい。


「幼馴染なの。小学校の低学年まではけっこう仲良くしてたんだけど、だんだん話さなくなっちゃってさ」


「へぇ、再会した感じ?」


「うん。同じ高校受けるって聞いて、それでまた話すようになって。一緒に受験勉強したりして、距離が戻ってきて……」


 ふむふむ。いい話じゃん……って、はいはい、青春ですね。

 その幼馴染の男も性欲が盛り出した時期に由梨ちゃんっていう良い女の子を捕まえて、随分と上手くやったものだ。


「で、高校に入ってからはもっと仲良くなって……ようやく付き合い始めて、今でだいたい三ヶ月かな」


「めっちゃいいじゃん。いいなー、私もそんな恋愛したい」


 つい飛び出した言葉に、冗談っぽく笑ってみる。だってさ、三ヶ月って絶妙に恋のボルテージ高まる時期じゃないですか。

 それなのに由梨ちゃんが私に相談するほど悩ませるなんて、その彼氏は由梨ちゃんに対する愛情が全然足りてないんじゃないか。あり得ない、許せない。


 由梨ちゃんは照れ笑いしながら、朱に染まった頬を指で触れる。くっ、かわいい♡


「でもね……不安なんだよね」


「不安?」


「うん。私、自分に自信なくて……彼女としてちゃんとできてるのかなって」


「……」


「それに……なんか、彼氏から時々、“そういう雰囲気”を感じるときがあって」


 あぁ……うん。来ました。“そういう雰囲気”。

 そりゃあ男だもん。どうせやることしか考えてないんでしょ。

 由梨ちゃんみたいな神聖で純粋な存在をその性欲で穢そうなんて、絶対に許せない。


「興味がないわけじゃないけど、なんか……想像できなくて」


「ふむふむ」


「とりあえず、不安で……どうしたらいいのか分かんないの」


 私はひたすら共感していく。ええ、全力で。

 だって由梨ちゃん、純粋そうで可愛いのに、そんなことで悩んでるなんて♡


 別に演技でやってるわけじゃない。

 由梨ちゃんが言葉を探しながら話してくれるたびに、もっと聞きたくなるし、全部受け止めたいって思う♡

 だって、こうやって本音を話してくれる時間って、私だけがもらってる特別みたいで……ちょっと優越感♡♡


 笑ったり、困った顔したり、少し照れたように目を伏せたり⸻その全部を、私が見て、私が反応してるの♡

 私の方が彼女っぽくない?って思っちゃう♡♡


 ……でもやっぱり、男の話になると、私の中にムカムカが湧いてくる。

 はいはい、穢らわしい。どうせ体目当てでしょ。

 脳みそが下半身についてるんでしょ。


「白鳥さんはどう思う?」

 由梨ちゃんの瞳が、夕暮れ色に染まって私を見上げる。

 ……ちょっと、そんな目で見ちゃダメ♡


 由梨ちゃんが潤んで揺れる瞳で、ちょっと見上げるみたいに私を見る。

 ……え、なにその反則みたいな目。

 心臓がドクンって鳴って、喉がひゅっと詰まった♡

 顔が熱い。耳まで熱い♡♡


 でもさ、男の名前とか顔とか浮かぶと、一瞬で冷める。

 肩がぴきって固まって、歯がカチッと鳴るくらい。

 背中に変な冷たいのが走って、指先の血まで引くのがわかる。


 もう一回由梨ちゃんに目を向ける。

 あの髪、光が当たってすごくきれいで、思わず触りたくなる♡

 ……いや、触ったら絶対ドキドキしすぎて倒れるやつだ♡♡

 なのに手のひらは汗ばんで、指先がむずむずする♡♡♡


 でもさ、その髪に男が触れてるとこ想像しちゃって⸻

 うわ、最悪。胃がキュッてなって、胸の熱が一気に冷えた。

 爪が手のひらに食い込んで、息まで浅くなる。


 ……はぁ、なんでこんなに私、由梨ちゃんのことで情緒ジェットコースター乗ってんの。


「んー……無理に答え出さなくていいと思うよ」


「そっか……」


「だって、今の気持ちが“まだ早い”って言ってるんでしょ? なら、彼氏もそれくらい待つべきだし」


「……そうだよね。うん、それはそうなんだけど」


 由梨ちゃんの返事は、うなずきながらも、なんだか歯切れが悪い。


 そうだよね。こんな言葉で全部解決するなら、そもそも私に相談なんかしてないよね。

 ずっと一人で考えて、迷って、苦しくて……それでも答えが出ないから、こうやって私に話してくれてるんだ。


 ……踏み込んでもいいのかな。

 でも、嫌われたらどうしよう。

 それでも⸻やっぱりもっと力になりたい。

 もっと近くで、支えてあげたい。


 大丈夫。もし何かあったら、そのときは私が側にいてあげるから。

 そんなこと、口に出せたらいいのに……心の奥でそっと握りしめたまま、笑ってみせた。


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