第3話 笑った顔が可愛すぎて情緒壊されちゃった♡
机に座って真面目に授業を受ける後ろ姿の由梨ちゃんが可愛すぎて、私の脳が完全にバグってる。
ほんの少し揺れる後ろ髪と首筋の柔らかなラインに目を奪われながら、ふと、もし自分が今、このまま、彼女の背中にそっと腕をまわして、静かに抱きしめたら、どうなるだろうか。
教室の空気なんて全部どうでもよくて、
後ろの席からじっと見つめてるだけで、なんか、こう……胸がいっぱいになって、息も詰まりそうになる♡
後ろから、きゅって抱きしめて。
その柔らかくて細い身体に、私の全神経が溶け込んでいくみたいで⸻♡
ああ、髪の香り、ふわって、甘くて、息が詰まりそう……っ♡♡
耳元に唇を寄せて、「好き」って、囁いてみたり。
口に出した瞬間、自分でもびっくりするくらい、体の奥がじわって熱くなって、
鼓動が、もう、壊れそうなほど早くなって♡
そしたら由梨ちゃんが、ぴくって小さく肩を揺らして……
ああもう、可愛い、好き、しんどい♡
その反応だけで、また心臓が跳ね上がって、
私の理性が完全に崩壊した♡♡
『あ……っ、……っ』
耳元で何度も「好き」「好き」って言葉を繰り返す♡
息がかかるたびに、由梨ちゃんの首筋がわずかに震えて、耳たぶがほんのり赤く染まっていく♡♡
それがあまりにも可愛くて、耳たぶを口に含んで、ふやかしていく♡
ちゅっちゅと鼓膜を刺激し、震える由梨ちゃんの耳の溝を舌先でなぞる♡♡
焦らすように、存分に味わうように、何度も何度も♡♡♡
次第に奥まで舌を侵入させ、内側から由梨ちゃんの鼓膜を蹂躙していく♡
素早く出し入れして、優しく擦りあげたり、激しく吸い付いたり、緩やかに奥を舐め回したり♡♡
そのまま、頬に唇をそっと寄せて、首筋まで、唇を這わせてみたくなって……実際に這わせちゃってて……
ああ、だめ、やばい……吐息が熱い♡
由梨ちゃんの息遣いが、耳にかすかに触れるたび、得体の知れない何かが、脳の奥で弾け飛んでる♡♡
だめぇ……♡ こんなの……壊しちゃう……でも……止まんない……♡
はぁ……っ、もう……とろとろなの……好きと可愛いで溢れて……♡
ひとつになりたい……好きで好きで……一緒に壊れちゃお……?♡
チャイムが鳴ると同時に、ざわめいていた教室に、静かな波が訪れた。
先生がいつものテンションで「じゃあ、今日はこれで解散ね」と手をひらひらさせると、生徒たちは椅子のきしむ音を残して立ち上がっていく。
私は我を忘れて授業中もホームルームも、ずっと由梨ちゃんとの妄想に耽っていたみたい。
「帰ろ、帰ろー!」
「じゃあね、沙織ー」
「どうぞお幸せにー」
「もうっ、そんなんじゃないから!」
「バイバーイ、また明日ー」
「ねえ、どっか寄ってくー?」
可愛い……可愛いっ……ほんとに、みんな……大好き……♡
いつもの友達の声に手を振って応えながら、私はゆっくりと腰を浮かせて、机に鞄だけ置いたまま教室に残る。
窓のほうへ何気なく視線を移すと、午後の陽が斜めに差し込んだガラスに、自分の横顔がぼんやり映っていた。
その姿を、片目でそっと確認する。髪、崩れてないよね……前髪、ぺたんこじゃないかな? こめかみ、ちゃんと抑えてある……よし。
あくまで自然を装って、でも、心の中では少しだけ鼓動が早まっていた。
教室に残っているのは、私と……もう一人だけ。
由梨ちゃんが、席に座ったまま、教科書も出さずにこちらをじっと見ているのがわかる。
その視線に気づかないふりをしながら、私は少し遅れて振り返る。
「……で? 話って、なに?」
声のトーンは、できるだけ平常心を保った。
でも、心臓の裏側がふわっと熱くなるのを感じる。
由梨ちゃんのモジモジとした仕草が、目に見えてわかるくらい可愛くて、胸の奥がじわじわとあったかくなる。
なんだろう、この感覚。
期待と、不安と、ちょっとした高揚と…ぜんぶが混ざった、まるで炭酸みたいにシュワッと弾けそうな、でも飲み込めないこの感じ。
可愛い……可愛いっ……ほんとに可愛いっ……♡
可愛い……好き……ねえ……もっと見て……私を……♡
頭の中……可愛いって言葉しかないの……助けて……♡
私は由梨ちゃんの方へと歩み寄り、斜め前の席に腰を下ろして、ストンと向き直って座った。
すると彼女の肩がピクリと震えて、ほそく甘い息が喉の奥で止まった気配が伝わってくる♡
それに合わせて、髪がふわりと揺れ、隙間から覗いた小さな耳が、ほんのり赤く染まっている♡
はい、可愛い。ここまでで既に満点。……いや、もう加点しすぎて枠が足りないくらい♡♡
由梨ちゃんの瞳は、少し潤んで揺れながら、どこを見ればいいのか探している♡
その瞳の揺らぎに、私の胸の奥まで甘く爪を立てられるような感覚がぷすりと走る♡♡
小さく縮こまった身体は、守らなきゃ壊れてしまいそうなほど儚くて……でも同時に、この腕の中に閉じ込めてしまえば二度と離れないだろうという確信すら与えてくる♡
まるで掌の中で大事に温められる小動物みたいで、そのまま抱きしめてよしよしって髪を撫でてあげて、震えが止まるまで「大丈夫だよ、大好きだよ」って耳元で囁き続けてあげたくなる♡♡
可愛い♡……可愛いっ♡……ほんとに……なんでこんなに可愛いの……♡
私……もう……♡好きでいっぱいになっちゃう……♡
お願い……もっと私の方を見て……♡もっと近くに来て……♡ゆるゆるに蕩けちゃおうよ……♡
だって⸻こんなにも緊張して、肩をすぼめ、小さくなって、迷いながらも。
それでも、今までほとんど話したことのない私を、わざわざ選んで頼ってくれるなんて。
その気持ちを思うと、胸の奥がぎゅうっと強く締めつけられて、愛しさが溢れて止まらない♡
守りたいとか、大事にしたいとか、そんな単語じゃ足りない♡
この子の悩みも、不安も、存在ごとまるっと抱きしめて、私の中に沈めてしまいたい⸻そんな衝動に近い♡♡
「坂尾さんから話しかけられるなんて、私ビックリしちゃった。なんだか嬉しいなーって」
口では軽く笑ってみせても、心の中ではそっと告白なんじゃないかなって、期待してしまう。
まさか……いや、そんなはずないと否定しながらも。
ない、ないない、だからそんなわけ、あるわけ、ないってば……!
……でも、でもでも、やっぱりやっぱり、ほんのちょっとだけ……。
「……白鳥さん。ちょっと相談、いい?」
不意に真剣モードの声色。しかも少しだけ頬が赤い。
私の鼓動がひとつ跳ねた♡
じっと、真っ直ぐに見つめられる♡♡
視線を外そうと思えばできるはずなのに、できない♡♡♡
胸の奥がじわじわと温かく、そして苦しくなる♡
その熱は喉を伝い、呼吸を浅くして、
やがて指先まで痺れさせる♡♡
まばたきさえ惜しい――
瞬きの間に、この熱が途切れてしまう気がして、
瞳を合わせたまま、ただ飲み込まれるように見返してしまう♡
やめて……そんな顔、反則……ずるいって……♡
頭の中では、何度も拒絶の言葉を探すのに、
唇の形はそれを作らず、代わりに緩んでしまう♡
心の奥に甘く沈むような感覚が広がって、
もう、体の力なんてほとんど残っていない♡♡
でも、ふとその言葉で冷静になる。
……はいはい、相談……相談ね。
分かってはいたけど、好きだって告白ではないと。分かっていても、胸の奥でちくりと小さな棘が刺さる感覚は消えてくれない。
はい、もう嫌な予感しかしません。
「うん、なに? 何でも聞くよ」
笑顔を作るけれど、指先がほんの少し強張る。
由梨ちゃんは、手元の指先をくるくるこまねきながら、小さな声で切り出す。
「……彼氏のこと、なんだけど」
……ほら来た。やっぱり男か。
由梨ちゃんの口から「彼氏」なんて単語が出た瞬間、脳内で小さくため息。
男なんてクソだ。
すぐに女の子を見た目で判断する。
可愛い子には勝手に好意を抱いて、勝手に夢見て、勝手に幻滅する。
勝手に自分の価値を測って、
勝手にこっちの市場価値を査定して、
『俺でもイケるかな』なんて顔をして近づいてくる。
気づけば、好意をあげたつもりで、見返りは当然の権利みたいな顔。
なのに、頭の中はやりたいって性欲ばっか。
誰彼構わず、その場のノリで軽々しく好きって言うな。下品な口から可愛いなんて言葉を吐くな。
何が『断られると思ってた』だ。告白は恒例の学校イベントなんかじゃない。
付き合わされる女の子の身にもなってみろ。
こっちの目を見て話してるようで、視線は胸元に落ちてる。
笑顔で頷きながら、頭の中じゃどう脱がせるかシミュレーションしてる。
会話の間に、さりげなく距離を詰めて、腕や腰に触れたがる。
“偶然”を装って、全部計算済み。
自分の都合のいい「理想の彼女像」を押し付けて、少しでもズレたら機嫌を損ねる。
嫉妬深いくせに、自分は平気で他の子に目移りする。
やたら「守ってあげたい」とか言うくせに、いざという時は自分のことで手一杯。
格好つけたいだけで中身が伴ってないの、ほんとダサ過ぎ。
それを指摘したら、暴力をチラつかせて黙らせる。
「俺は特別」って本気で思ってる。
他の男と同じことしかしてないのに。
ちょっと優しくされただけで、もう自分のものだと勘違い。
「君だけ」って口にしながら、心の中で何人の女の顔を思い浮かべてるか、自覚すらない。
そして一番ムカつくのは──
こっちがそんな気なくて断っても、
『本気で好きだったのに裏切られた』って被害者面すること。
……あぁ、なんか考え出したらキリがない。
由梨ちゃんの彼氏も、どうせ似たようなもんでしょ?
だって「男」だもん。




