第29話 更衣室は女の子だけの聖域なの♡
体育の授業の時間になると、私たちはぞろぞろと更衣室に向かう。扉を開けた瞬間、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐった。シャンプーやボディクリームの香りが入り混じり、女の子だけの匂いがこもった空気。そこに微かに漂う洗い立ての体操服の綿と柔軟剤の匂いが加わって、この空間をいっそう「女の子だけの聖域」にしている。
視界に広がるのは女の子の姿だけ。白い肌がちらりとのぞき、しなやかな曲線が光を受けてきらめく。笑い声と小さな吐息が交じり合い、耳の奥を心地よくくすぐる。まるで天国の扉がひらいたかのようだった♡
カーテンも仕切りもなく、制服が次々と脱がれていく。
ブラウスのボタンが外され、襟元からのぞくブラの肩紐がふっと目を射抜く♡
スカートが腰からするりと滑り落ちると、光が太ももに差し込み、なめらかな肌を艶やかに縁取る♡♡
シャツを頭から脱ぐ瞬間、髪がふわりと揺れて石鹸の香りが舞う。些細な仕草すら、すべてが甘く、胸を痺れさせていく♡♡♡
──女の子って、どうしてこんなにも眩しく、甘美で、見ているだけで心臓を掴まれるほど美しいのだろう♡
「はぁー、午後の体操とかマジだるいんだけど」
「わかるー、体育館暑いし、絶対汗かくよね」
「てかもう髪結ぶのめんどいんだけど。ゴム貸して」
「はいはい、ほら。ちゃんと返してよ?」
「でもさー、体育の後にまた授業とかほんと最悪じゃない?」
「確かに、メイク直す時間ないし」
「てかもうさ、体育なんて自由参加にしてほしいわ」
何気ない会話の裏で、髪を掻き上げる仕草が視線を奪う。指先がうなじを撫で、さらさらと落ちる髪が肩をくすぐる♡
その髪をまとめてゴムで結う一瞬、首筋がすらりと伸び、しっとりとした白い肌に光が柔らかく反射する♡♡
無防備に晒されるその部分が、思わず息を止めたくなるほど艶めいていた♡♡♡
ふと由梨ちゃんを見る。こちらの視線に気付いたのか、ブラウスの裾をぎゅっと両手で引っ張り下げる仕草。だがスカートを脱いだままの姿では、どうにも隠せる部分には限界がある。
白い太ももがもじもじと擦れ合い、落ち着かない動きがかえって目を惹く♡
頬から耳までじわじわと朱に染まっていく様子が、甘美なほどに初々しい。羞恥に震えながらも、隠しきれない肌の艶やかさが漂っていた♡♡
その隣で、恵美はまるで別の世界にいるかのように堂々と着替えている。茶色に染めた髪が揺れ、無造作にシャツを脱ぎ捨てる姿は挑発的ですらあった♡
タンクトップ越しに浮かぶ身体の曲線、腰をくねらせるようにスカートを下ろす所作──それら一つひとつが女としての自信を放っていて、視線を逸らせば逸らすほど、逆に焼き付いてしまう♡♡
彼女の動きは、恥じらいを見せる由梨ちゃんとは対照的で、あまりに自由で美しかった♡♡♡
私もゆっくりと、皆の動作に合わせるように着替え始めた。
まず指先でブラウスのボタンをひとつひとつ外していく。小さな音が更衣室のざわめきに紛れて消えるたび、薄布の奥に隠していた白い肌が少しずつ露わになっていく。胸元を覆っていた布がふわりと肩から滑り落ちると、冷たい空気が肌を撫で、思わず小さく息が漏れた。
スカートのホックを外し、布を腰から滑らせていく。太ももに光が差し込む。素肌を撫でていく空気の感触がやけに敏感に伝わり、ひやりとした心地よさと、熱がこもるようなむず痒さが同時に胸を締めつける。タイツを下ろすときの、すべる布と肌の摩擦音が、自分の耳にはやけに艶かしく響いた。
体操服のシャツを頭から被る動作すら、何人もの視線を感じて落ち着かない。布が胸を擦り上げ、ウエストをなぞっていく感触に合わせて、息が浅くなる。
……視線が集まっている。
わかる。背中に、首筋に、肌に突き刺さるように、女の子たちの目がある。憧れ、羨望、隠しきれない嫉妬。そして──ほんの少しの情欲。
私の身体は女の子に求められるためにある。女の子という美に憧れて、女の子という光から憧れられる♡
視線の中に燃えている黒く焦げるような熱。それが私の胸をじわじわと焼いていく。憧れだからこそ嫉妬する。彼女たちの羨望と嫉妬の眼差しを浴びながら、私はぞくぞくと身体の奥が疼くのを抑えられなかった♡♡
さらに──もっと隠された欲望。
誰かがごくりと喉を鳴らす小さな音が聞こえる。そのわずかな仕草から、彼女たちの密やかな興奮が伝わってくる。瞳の奥に光る濡れた影。押し殺した吐息。普段なら気にもしない小さな音や動きが、今は私を強く痺れさせる♡
ああ、女の子たちが私を見て密かに本能と理性が衝突している。その事実が、甘美な電流のように身体を駆け抜けていく♡
胸の奥が熱くなり、下腹部にじんわりと火が灯る。羞恥と快楽が入り混じって、意識がかき乱される。私は確かに「女の子たちに求められている」。その甘美な確信に支配されていくほど、私の身体はどうしようもなく昂ぶっていった♡♡
「沙織、ちょっといつにも増してエロいんだけど」
恵美がわざとらしく大きな声を上げ、こちらをからかう。
部屋の空気が一瞬でざわりと揺れて、何人かの女の子の視線が一斉に私の腰回りへと吸い寄せられた♡
「エロいとか言わないで。別に普通でしょ」
思わず声を強めて否定するけれど、心臓は早鐘を打っている。恥ずかしさと、見られていることへの妙な熱が下腹に広がっていく♡
「ほらほら、坂尾さん、こっち来てよ。この腰付きのラインとか、なんかもう凄いよね」
恵美が由梨ちゃんの手を引いて私のすぐ横に立たせる。
至近距離で注がれる視線に、腰の辺りが急に熱くなり、思わずキュッと腹筋に力を入れて引き締めてしまった。肌の上を見られているような錯覚に、胸の奥が甘く疼く♡
「……うん、沙織ちゃんの身体、凄く綺麗で……」
由梨ちゃんがぽつりと呟いた声は、か細いけれど本心が滲んでいた。赤く染まった頬と、揺れるまつ毛。見惚れているのが隠せていない。
「もうっ、恵美は由梨ちゃんに変なこと教えないで」
慌てて声を上げるが、由梨ちゃんの言葉が耳に残って離れない。「綺麗」だなんて。胸の奥がじんわり熱くなる♡
「ほらほら、みんなもおいでよ。こんな芸術品、近くで見ないと損だって」
恵美は悪戯っぽく笑って、さらに声を張る。からかうようでいて、でもどこか誇らしげに私を差し出しているようでもあった。
「ちょっ、ホントに変なこと言わないでってば!」
必死に否定しても、周囲の空気は変わらない。
遠巻きにこちらを見ていた子たちが、好奇心に駆られて少しずつ近寄ってくる。目を逸らす子、照れ隠しに笑う子、じっと食い入るように見つめる子。それぞれの視線が混ざり合って、私の身体を輪郭ごと浮かび上がらせる。
羞恥と誇らしさ、そして隠しきれない快感が胸の奥で渦を巻き、呼吸が乱れる♡
──私はいま、彼女たちにとって「特別な美」として見られている♡♡
その事実が、どうしようもなく甘美で、抗えないほどに私を熱くさせていた♡♡♡
はぁ……っ、き……きもちい……♡ みんな……だいす……き、だよ……♡
あぁ……っ、可愛い……よぉ……♡ みんな……可愛いの……♡
ひぁ……っ、壊れる……壊れちゃう……♡ でも……幸せ……♡
「白鳥さんの背中のライン、すごく綺麗……撫でたら指が吸い込まれそう」
「鎖骨が白くて、光ってるみたい。触れたら壊れそうなくらい」
「腰、細いのに柔らかそうで……反則だよね」
「太もも、しなやかで、女の子の理想って感じ……」
「胸の形、完璧……もうずっと見ていたくなる」
褒められるたび、肌がじわじわと熱を帯びていく♡
胸の奥でトクン、トクンと心臓が強く跳ね、血が一気に頬に集まるのが分かる♡♡
呼吸が乱れ、知らず喉が乾いて唾を飲み込む♡♡♡
「もー、そうやって褒められても、私どうすればいいのよ……!」
「素直に受け取れば良いのに」
背後から恵理がギュッと抱きしめてくる。柔らかな胸が背中に押しつけられて、耳元に熱い吐息がかかる♡
「沙織が嬉しくなってるの、ちゃんと分かってるから」
ゾクリと背筋を走る快感。羞恥で顔が真っ赤に染まって、思わず歪む♡
「ちょっ、ちょっと待ってよ……!そんなの……!」
胸がドクンと跳ね、下腹に熱が広がる♡
やだ……やだやだ……!
もしかして、ホントに私が女の子大好きって、バレてる……?
そんなわけない、隠してたはずなのに……!
私、普通にしてたよね? ただ褒められて、嬉しくて……でも、でも……みんなの目、なんでこんなに熱いの……?
恥ずかしい、恥ずかしい……! お願い、もう見ないで……!
胸がドキドキしてるの、バレちゃう……足まで震えてるの、絶対気付かれる……!
ちがうの、違うのに……! 私、こんな……女の子に憧れて、女の子に見つめられて、こんなに……!
──あぁ、もう……どうして私、こんなになっちゃうの……!
「……褒められて、嬉しくならないわけないでしょ」
「だったら素直に喜んでよ。そうやって気取ってばかりだと、褒め甲斐がないんだから。こっちも憧れ甲斐がないの」
胸の奥でまたトクン、と跳ねる♡
自分の身体が女の子に求められている、その事実が甘美すぎて、脚の内側が思わず擦れ合う♡♡
狼狽の声が震えて、呼吸は浅く速く、羞恥と悦びがないまぜになって身体を支配していく♡
もう……だめっ……ふわふわして……♡おかしくなっちゃう……♡
ふぁ……っ、頭の奥が、じんじんして……壊れそう……♡でも……もっと……♡
あぁ……お願い……まだ壊れさせないで……♡でも……好き、好き……っ♡
そうだね、そうだと思う。
私はどうしても、皆に嫌な思いをさせないような反応をしてきた。笑って、流して、無難にやり過ごして。けれど、それってただの言い訳で……本当は、どこか慣れて擦れてしまっていたんだと思う。
由梨ちゃんのような真っ直ぐな純粋さを羨ましいと感じながら、遠くからそれを見詰める自分に酔っていた。
……たぶん、これからもまた思い上がってしまうかもしれない。けれど、今この瞬間だけは違う。みんなの想いを、全部受け止めたい。ただ、感じたままに震えたい。
「……うん。みんな、ありがと。……すごく、嬉しい」
口にした途端、胸の奥が熱くなって、じんと広がる♡
頬が一気に火照って、視線を上げるのも恥ずかしい。呼吸が浅くなり、心臓が跳ねるたびに身体の奥から甘い疼きがこみあげてくる♡♡
「でも……私は、みんな可愛いって、ずっと思ってるの。だから、こうして褒められると……照れちゃって、ごめんね?」
その一言に、女の子たちの表情が一斉にほころぶ♡
柔らかく、でも抑えきれないほどの光がぱあっと広がって、誰かが「もう、白鳥さんって」と笑ったかと思うと、次の瞬間には堪えきれず、みんなが一斉にこちらへ飛び込んできた♡♡
「白鳥さん、可愛い!」
「ほんと、大好きだよ!」
肩に、背中に、腕に、何本もの温もりが絡みつく。押し寄せる体温に全身が包まれて、胸が詰まりそうになる。視界が一瞬、真っ白に弾けて光が差したみたいに明るくなる♡
……もし、この「女の子が大好き」って想いが、ただ現実からの逃避でしかないのなら、そんな甘い幻想は早く捨ててしまった方がいいのかもしれない。幻想に縋る代償は高くつくと、分かっているから。
けれど──それでも。私はきっと、それに縋ってしまう。だって、この温もり、この幸福、この胸を焦がすほどの甘さ……それを信じてしまうからこそ、面白いんだと思う。
たとえ苦難にぶつかったとしても、それでも幻想を信じ続けられるのだとしたら──それがきっと、「好き」ってことなんだと思うから。




