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Liebe (一部完)  作者:
4章 どうしてこうなった?

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14話A 残る熱

 事件の次の日、朝はいつも通りだった。


 新聞配達のバイトを終えて、部屋に戻る。自転車を停めて、階段を上る。鍵を開けて、中に入る。部屋は、静かで、変わらない。ベッドは、少し乱れたままだった。何気ない当たり前の朝の情景だった。


 だけど、昨日、栞に強く抱きしめられた感触が、まだ体に残ってる気がした。


 肩のあたりが、温かかったような。栞の涙が落ちた場所が、少し熱を持って、疼いてるような感じがした。


 あの涙の意味が解らなかった。栞はとても変な子だと思う。気づいたら彼女の事を考えてる日がある。そんな子は、初めてかもしれない。それでも私は深くは考えるのはやめた。どうせ無駄だから。勉学のように答えがわかってるものならいくらでも考えるけど、人の考えや行動はそうではない。やったらダメなのに人は簡単にそれをする。そうした結果、父は浮気をして、母はそれを許せなくて無理心中をして、自ら命を絶った。いとこは、好きだという理由で私をレイプして、上野君もそうしようとした。


 私の何がいけないのかよくわからない。深く考えるのはやめよう。そんな考えを流すかのようにシャワーを浴びて、制服に着替える。

鏡を見ないようにして、髪を乾かした。


 忘れようとしたのに、まだ汗の匂いが、鼻に残ってる気がする。そう感じた瞬間。昨日の倉庫のことが、頭に浮かんだ。


上野君の息の熱さにスポーツマンの力強さ。マットの湿った感触。。上野君の目。

荒い息。私の体に、覆い被さる重さ。私は抵抗しなかった。馬乗りの状態になった以上。どうしようもない。

人は三大欲求には勝てないのも知っている。抱きたいと言ってくれた方が楽だった。避妊さえしてくれたら別にさせるつもりでもある。私の容姿は多分人よりもいいのだろう。私の外見だけが好きならそうすればいい。私が心配したのは、子供が生まれたらどうしようそれだけだった。


 ダレモ私自身を見てクレナイから。


 そう思った瞬間だった。栞の声が、頭に響いた。


「上野君、何してるの!?」栞の涙が、肩に落ちた熱さ。なんで、あなたが泣くの?

本当にわからない。なぜそんな目で私を見つめて泣くの?


 昼休憩の時上野君は、来なかった。噂が、少し聞こえてきた。上野君が、急に体調不良で休んでるっていう話を栞の方から聞こえてきた。多分栞の友達がそう言っているのだろう。


 私はそのまま弁当を広げて、静かに食べた。昨日から何も食べてなかったので、通勤するときにコンビニでサンドウィッチを購入したものだった。


 サンドイッチを食べながら教科書を読んでいると、栞が、椅子を寄せてこちらを見てきた。


「綾さん……」栞の声が、少し震えている。私は、弁当を食べながら、顔を上げた。


「栞。何か用?」


 クラスメイトたちの視線が、集まるのがわかった。


「昨日……大丈夫だった?」


私は、少し考えて、「別に」とだけ返事した。


 栞の目が、少し赤い。泣いた跡みたい。なぜ栞の方が深刻になっているのか本当にわからない。


「綾さん……あの後、熱とか出なかった? 体、痛くない?」


「ない」


 栞が、少し黙った。私は、弁当を食べ続ける。栞が、小声で言った。


「ごめんね……もっと早く、気づけなくて」


 私は、箸を止めた。


「別に、栞のせいじゃないし。その話はもうこれで終わり。興味ないから」


 栞は目を丸くして絶句していた。周囲も何か栞がおかしいことが気になっている感じだった。


「あなたには関係ない」


「うん……」


 栞はもとの位置に戻り、友達同士と話をしていた。


「栞ちゃんどうしたの?」


「ううん、昨日帰り道にあ……綿津見さんが体調悪そうな顔してたから気になっただけ」


「そうなんだ」


「でもさぁ。あんないい方しなくても」


 どうやら私の話題になっているみたいだったが、私はそれを気にせずに午前中学んだことの復習をまとめていた。


今日はファミレスのバイトしか入っていないので、放課後に部活に行った。


 今日は、少し違っていた。最近は周囲へのパスも通っていたのになぜか合わない。そしてシュートも枠を大きく外れてしまった。ドリブルミスにフェイントしようとして転ぶ。何度も何度もミスをしてしまった。


 女子キャプテンが「綿津見さん。大丈夫?」と聞いてきたので「ハイ」とだけ答えた。


 胸の奥に、小さな亀裂が、広がっている気がした。私の中で何かが狂っていた。サッカーだけは裏切らなかったのにそのサッカーさえも私を裏切るの?そう自分自身に問いかけるように言葉が浮かんできた。これは違う。私の体調が今日はおかしいだけだと言い聞かした。


 昼に聞いたように、上野君の姿は無かった。今日は上野君がいないからか呼ばれもしなかった。彼を思い浮かべた瞬間に、昨日マットに沈んだ感触がよみがえってきた。何をそんなに尾を引いているのかわからない。夕日が私を血のように染めている気がした。


 バイトが終わり家に帰って、シャワーを浴びた。肌に、上野君の指の跡が、うっすら残っている気がした。でも、すぐに消える。栞の涙が、頭に浮かぶ。なんで、あなたが泣くの?朝の疑問がまた思い浮かんだ。


 これ以上私の中に入ってこないで、私を変にしないで、私にやさしくしないで。栞の温もりが、私を変にさせる。

多分珍しいだけ。私は他とは違うのは理解してるから。


 私は逃げるように睡眠に逃げた。

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