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Liebe (一部完)  作者:
4章 どうしてこうなった?

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10話A 告白

 月曜日の早朝、自転車を漕ぎながら、街灯が消えていく空を見上げていた。

いつものように、早朝の冷たい空気が肌を刺してたけど配達は順調に終わった。


 新聞配達のバイトを終えた私は、準備を終えて学校へ向かった。

昼食時間。

周りは友達同士で固まって話してるけど、私は一人で食べるのが当たり前でとっていた。


「綿津見、いる?」。


 名前は忘れたけど、教室にいるから、男子クラスメイトだと思う。

最近、なぜか私を呼ぶ人が増えた気がする。なぜだろう?


「何?」


 私は弁当を食べながら、顔を上げた。男子生徒は少しおどおどしながら、教室の入り口を指差した。


「綿津見を指名してる奴がいるから」


 クラスが、一瞬ざわついた気がした。みんなの視線が私に集まるのがわかった。興味ないけど、呼ばれたからにはいかないとね。


「ありがと」


 弁当を片付けて、教室を出る。廊下に出ると、男子生徒が立っていた。

背が高くて、スポーツマンっぽい。どこかで見た記憶はあるけど、クラスメイトじゃない。思い出せない。そこまで関わり持ってないってところか。


「誰?」


 名前が思い出せないので、聞いてみた。男子は少し笑って、


「俺を知らないか~」


 私はチラッと教室の中を見た。栞が席に座ってるのが見えた。同じこと言う人、いるんだ。この人も芸能人?いや、そんな話は聞いたことない。


「自称有名人のあなたは誰? 用ないなら戻るけど」


 男子は少し慌てたように手を振った。


「いやいや、放課後、校舎裏に来てくれないか?」


「ここでは言えないこと?」


「ああ」


「わかった。放課後ね?」


 何でここでは言えないのかわからないけど、呼ばれた以上、仕方ない。


「ありがとうな。俺、上野。よろしくな」


 教室に戻ると、周りがヒソヒソ話してるのが聞こえた。聞きたいことがあるのなら気直接聞いてくればいいのに?


 上野、上野…。記憶にはないけど、やはり記憶の片隅にはうっすらと、どこかで見た気はする。


 授業が終わり、放課後。教室を出ようとしたら、隣の席の栞が話しかけてきた。


「綿津見さん、元気?」


 栞は少し緊張したような顔で立っていた。


「栞か。何か用? あの時はありがとう」


 なぜかそれだけ言うと、周囲がざわついた。私が話すのが悪いのか?それとも栞が私に話しかけてくるかなのか?どちらだろう?


 栞は少し目を丸くして、「名前、覚えてくれたんだ。ありがとう」お礼を言ってきた。

さすがに命の恩人の名前を忘れるほど私は、薄情じゃないと思うんだけど。


「今の、サッカー部主将の上野君だよね」


「そっか。どこかで会ったと思ったのは、サッカー部でか」


 栞、よく知ってるよね。私より詳しいんじゃない?これで心の靄が解けたからよかったと思う。


「サッカーの話だったの?」


「サッカー部っていうのは、栞に教えてもらった。どこかで会った記憶はあったんだけどね。おかげですっきりしたよ。何の用かは知らないよ。話はそれだけ?」


「うん、ありがとう」栞は少し寂しそうな顔で、席に戻った。


 珍しい。教室で話しかけてくることも、他人行儀なところも。


 そういえば、二人きり以外では、いつもこんな感じだったっけ?栞との会話が終わり、私は校舎裏に向かった。校舎裏は、人気がない。上野君は、もう待っていた。周りに、なんとなく人が隠れてる気配がする。後ろからついてきて、あそこに栞が隠れてるのがわかった。

栞は何をしてるのかな。相変わらず変な子だ


「待たせたね」


「いや、放課後だから終わる時間みんな一緒だろ。掃除の時間で前後するくらいじゃないか」


「そうかもしれない。ところで、用って何? 私、上野君に恨み買うことしたっけ? したんなら謝るね」


 上野君は少し笑った。


「そこは、噂どおりなんだな?」


「噂?」


 最近、栞と絡むことがあったから、私に関する噂が出たのかな。


「あ~、噂なんて気にするな」


 気にしても仕方ないので気にはしない。用があれば、直接言ってほしい。


「もしよかったら、俺の彼女になってくれないか?」


 突然だったので驚いてしまった。


「やめたほうがいい。幻滅すると思うから」


「それ決めるの俺だろ。お前が決める必要ねぇじゃん」


 上野君は少し目を丸くしながらそう言ってきた。


「そう?どこがよかったの? やっぱり顔?」


 自分の容姿が整ってることは、理解してる。でなければ2年前のあんなことが起きるはずないから。


「あ~顔ねぇ、それもあるけれど」


「つい先日、俺たち男子サッカー部と試合したときのこと覚えてるか?」


「あの引き分けの試合?」


私にとっては負け試合。もう少し何とかしたら、勝てたはず。


「あぁ、まぁ俺は怪我で参加できなかったんだけど、外から見てたんだよ」


「あの試合は、私もびっくりした。男子と女子が試合するなんて知らなかったから」


「人数が少ないから、仕方ないのさ」

 確か男子サッカー部は22人もいなかった気がする。確か今年はもっといたのだったっけ?去年の春先の地区大会でベスト4まで行って多少有名になった記憶が。


 あぁ思い出した。上野君ってあの大会で一人だけレベルが違う子がいた。それがこの上野君だ。彼の活躍もありサッカー部の部員が増えたらしい。


「そう?」


「それで、その試合のラスト10分の綿津見のキラキラに惚れた」


「悔しさじゃなくて?」


 3-0から引き分けなら、普通悔しがるはず。


「だって俺出てねぇもん。あいつらの練習不足」


「ごめん、付き合う、付き合わないはよくわからないし、拒否ってことで」


 私には、付き合うとかがよくわからない。そもそも友達もいないけれど、もしいたとしても。友達と遊びに行くことと彼氏と遊びに行くことの違いが、どうしても理解できないのだ。


 脳内で、その二つの言葉を天秤にかけてみる。一緒に行動する、会話をする、時間を共有する。そこまでは同じだ。


 もしそこに明確な違いがあるとすれば、それはもう、肉体的な接触。SEXをするかしないか、それだけじゃないのかな。


 そこまで思考を巡らせて、私は一つ呼吸を置いた。やはり、興味がない。目の前の彼が、何を期待して私に声をかけたのか。その期待という概念そのものが、私の中には欠落している。


 西日がさらに深く差し込み、私の影が廊下の端まで伸びていく。私は、返事を待たずに歩き出した。 彼が後ろでどんな顔をしているのか、それを確かめようという気には、どうしてもなれなかった。


「それって嫌いってわけじゃないんだろ」


「よく知らない人を好き嫌いで判断しない」


「ならこれから知っていけばいいじゃん」


「そんな暇ないから」


 上野君は少し黙って、「そっか。何回も言って断られたらしつこいよな」


「ん?」私は首を傾げたら、上野君の顔が真っ赤になった。なぜだろう。今の段取りで赤くなることはあるのだろうか?



「え、えっとならさ、サッカーの練習相手ならどう? 綿津見、練習相手もてあましてるだろ」


「ん~それなら」


「よし決まりな! 時間取らせて悪かったな、綿津見?」


「綾でいいよ。なら今度ね。私、今からバイトがあるから」


「そっか」


 私は帰ろうと歩き出すと、突然ボールが転がってきた。反射的に、両足で前後から挟み込み、かかとで蹴り上げて背中から頭上を越させる。膝の上でリフティングして、ボールを掴んだ。


 ボールが転がってきた方向から、拍手が聞こえた。


「凄い、どうやったの?」声のする方を見ると、栞が立っていた。


「あぁ、栞か。普通にヒールリフトしてリフティングしただけだよ」


「上手い人がやると、自在にボールが動くんだね」


「まぁ、リフティングはともかく、ヒールリフトは練習が必要だからね」


栞は少し考えて、「サッカー好き?」と聞いてきた


「ん? 好きじゃないならやらないって」


「サッカーやってる人が好きなの?」


「あぁ、先ほどの話ね。聞き耳立ててたから結果は知ってるでしょ。彼とは練習仲間になるのかな?」


「ふ~ん、そう。じゃあね」


 栞は手を振って、そそくさと帰っていった。

何が聞きたかったのだろう。意味が解らなかった。

私も、バイトのために準備をしないと。

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