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Liebe  作者:
3章 土曜日

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6話A お誘い…決意と、波乱の予感

 転入してから四日間、栞は一度も学校に来なかった。

彼女が姿を見せたのは、金曜日の四限目が終わった頃だった。


「こんにちは~」


 教室の扉が開いて、栞が明るい声とともに飛び込んできた。

……なんでこっちに来るんだろう。一瞬そう思ったけど、すぐに気づいた。

当然だ。栞の席は私の隣なのだから。


「栞ちゃん、久しぶり~! 大丈夫だった?」


「うん、ありがとう。どうしても今の仕事が、学校に来る前に決まってたスケジュールでさ、休めなくて」


「お疲れ様~」


 クラスメイトたちが自然に栞の周りに集まって、声をかけている。

どう見ても、友達同士の会話だ。

これで友達ではないっていうんだからおかしなものだ。


「でも、この仕事が終わったらちゃんと学校に来れると思うよ」


「栞ちゃん、そんなに学校好きだったんだ~」


「それもあるけど……明日の約束もあるしね。まだ誰も何も聞いてないでしょ?」


「あ、覚えててくれたんだ! 嬉しい~」


数 人の女子たちがキャッキャと笑いながら、楽しげに話は続く。


「土曜日って、どんな予定なの?」


「もちろん! 一日オフだよ」


 すると、栞が急にこちらを振り返った。


「そうだ、綿津見さん」


 突然名前を呼ばれて、私は少し身構えてしまった。


「……何?」


 私に何の用だろう。思いつく用事がなかった。


「もう一度、お誘いしていい? 用事がなければ、明日一緒に来ないかな?」


 私は一瞬、言葉に詰まった。


「返事は……今すぐじゃなきゃダメかな?」


 無意識に、そんなことを口にしてしまった。

私は何を聞いてるのだろう。

そんな用紙を見た栞は、少し目を丸くしてから、小さく笑った。


「そうだね。みんなのこともあるし、今日の放課後くらいまでなら待つよ」


「……わかった。それまでに返事する」


 私は少し戸惑ったけど、何とかそれだけは答えれた。


「いい返事が聞けるといいな」


「期待はしないで」


 私はそれだけ短く返して、教室を出た。

なんとなく、空気が重くて居づらかった。

栞の笑顔と、クラスメイトたちの楽しげな声が、背中に絡みつくように残った感じを受けながら。屋上に向かった。


 柵にもたれかかって空を見上げた。

……断れば、一番楽だよね。

それでこの話はきれいに終わる。

栞との妙な距離も、教室の雰囲気もいつも通りになるはず。

なのに、なぜか胸の奥がざわつく。

どうして、こんなに戸惑ってるんだろう。よく、分からない。


 今週のスケジュールは、頭にしっかり入っている。

土曜日は、たまたま休みだった。

本当はバイトを入れようと思っていたのに、バイトの店長達にに「たまには土日ちゃんと休みなさいよ」って言われた。

なぜか相談したかのようにみんなそう言ってきたので、渋々休みを取った。

休みを取ってもやることは、学校の予習と復習。

そしてアパートの裏庭でサッカーの自主練ぐらいしかやることがなかった。


 ……あれだけしつこく誘われたのに、断るのも面倒かもしれない。

仕方ない。行くだけ行って、隅っこで静かにしてればいい。

みんなでカラオケに行く、って話だったっけ?。

確か、そんなことを言ってた。

私は、そんな結論を出して、教室に戻った。

でも、栞の周りには相変わらずクラスメイトが集まっていて、近づきづらい雰囲気だった。


……後でいいか。結局、授業がすべて終わった瞬間、私は隣の栞の方へ体を向けた。


「霧生さん」

彼女がこちらを見上げた。


「返事、遅くなった。……明日、お世話になるよ」


それだけ言って、すぐに続ける。


「待ち合わせと何時だけ教えて?」

栞の顔がぱっと明るくなった。場所と時間を聞いて、私はそれ以上何も言わずに鞄を肩にかけた。

クラスメイトたちの視線が少し刺さるのを感じながら、そのまま教室を出た。

帰り道、自転車のペダルを漕ぎながら、また少し後悔が湧いてくる。

……本当に、行って大丈夫かな。本当に空気が悪くなったら用事があるって言って帰ればいい。

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