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悪の秘密結社の中間管理職 鷲尾の憂鬱  作者: 双鶴


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12/13

12話

 木曜の朝、シンメトリー八雲支部の作戦室にて、戦闘員たちが集まっていた。

 議題は一つ――「副司令の理念、現場に合っていないのでは?」という疑念。


「最近、副司令、報告書に“理念的には”って言葉ばかり使ってる」

「現場では“ズレたベンチ”が好評なのに、報告では“応用”って書いてる」

「それって、現場の声を“例外”扱いしてるってことじゃない?」


 戦闘員No.22が、代表して鷲尾慎一郎(52)に意見を伝えた。


「副司令、我々は“現場の秩序”を守ってるつもりです。でも、報告では“理念の応用”って書かれてて……それ、ちょっと違う気がします」


 鷲尾は、静かに眼鏡を外した。


「……理念は、組織の軸だ。現場の声をそのまま書けば、軸が揺らぐ」


「でも、現場が軸になってきてるんじゃないですか?」


「それは、危うい。理念なき現場は、ただの混沌だ」


 沈黙。

 戦闘員たちは、互いに目を合わせたあと、No.37が言った。


「じゃあ、副司令。今日の“左右対称花壇整備”、我々だけでやります。報告も、我々の言葉で書きます」


「……反乱か?」


「いえ、“現場の自立”です」


 その午後、鷲尾は花壇整備に同行せず、支部で待機していた。

 戦闘員たちは、住民と相談しながら、花の配置を“左右対称のゆらぎ”で整えた。

 報告書にはこう記されていた。


「秩序とは、住民の安心に寄り添う形。理念は、現場の中で育つ」

「副司令の言葉を、現場の言葉に変換した」


 その夜、鷲尾は報告書を読みながら、静かにマントの襟を整えた。

 そして、戦闘員たちにこう伝えた。


「……よくやった。理念は、守るものではなく、育てるものだ」


 戦闘員たちは、少し驚いた顔で頷いた。


「副司令、じゃあ、次の活動も我々の言葉で報告していいですか?」


「構わん。だが、理念の軸は忘れるな。育てるには、根が必要だ」


 空は、左右対称ではなかった。

 だが、報告書の言葉は、現場の根から育ち始めていた。


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