一章 波乱の舞踏会 8
ようやく私も中央の舞台に辿り着いた。
だが突然、会場内が暗くなる。
「な、何だ?!」
「シャンデリアの灯りが消えたぞ!」
と、誰かが慌てて言う声がする。
ついでに周囲の人々も、余計に混乱してざわつきだす。
そうこうする内に、シャンデリアの灯りが再び点されて、急に明るくなった。
私は目をしばたたかせ、明るさに慣れてきたら、周囲を見渡す。
「なに?!」と、父の驚く声が辺りに響く。
ほぼ同時に私は振り返って様子を伺う。
すると不思議な事が起こっていた。
ナンリー姫殿下の姿が消えていたのだ。
シヤリーや他の招待客も遅れて気がついた。
さらには、「おい、階段の上を見ろ!」と誰かの叫び声があがった。
それを合図に、会場内の全員の視線が一斉に階段の方に振り向く。
「え?」と再び私も振り返る。
中央の階段の上には、誰かが立っていた。此方の方を見下ろしているようだ。
すぐ側にはナンリー姫が階段の段差の上で、横に寝かされている。まるで人質のようだった。
そいつは怪しい人だ。衣類を着込んで正体を隠している。
まず灰色の唾広の帽子を目深に被り、ペルソナマスクを着けて素顔が口元しか見えない。
さらに帽子と同じ色の外套で全身を覆っておりスリットの僅かな隙間の下は、黒いスーツと白い手袋まで身に付けていた。
徹底的に素肌を晒さない様にしているようだ。
その足元には、見覚えのある高級そうな服が脱ぎ捨てて置いてある。
「まさか、…アルジェン……?」
と私は呟きながら、緊張から思わず息を飲んだ。相手の姿と特徴が聞いた噂話と合致しているのに気がつき、視線が釘付けとなる。
対して怪しい人物、ーーアルジェンは、
「この姫は、………連れていく。」
と言い、姫の身体を抱き抱えると、階段を上がり、二階部分の廊下を走り去っていく。
瞬く間に二人は、会場から姿を消した。
足音も遠ざかっていき、全く聞こえなくなった。