一章 波乱の舞踏会 4
大広間にはオーケストラの生演奏が響き渡る。
招待客の子息達や令嬢達が社交ダンスに興じだした。
部屋の中央を舞台にである。
若い男女が入り乱れて、生演奏の音楽に合わせて動き回っている。
自信満々なペアが軽くターンを決めていた。
たまに躍りの相手を変えており、場所が入れ代わり立ち代わる。
不意に踊りの相手と身体が密着してしまうと、あまりの夢見心地と嬉しさに、恍惚な表情をする者もいるのだった。
そうして、次の曲に差し掛かりだした。
同時に離れた位置から、私の名を呼ぶ声がした。
「…カレンナ!」
其方の方へと、私は振り返る。
するとシヤリー侯爵令嬢がいた。大きく手を振りながら階段を下まで降りてきたら、此方の側へと歩いてくると途端に話し掛けてきた。
「来てくれたのね!…」
「当たり前でしょ。…親友なんだもん。」
と、私も返事をしながら笑顔を向ける。
私達は幼馴染みの関係である。両親同士が仕事での交流があり、自然と子供の頃に遊ぶ時間を共有していた。
何となく、互いに気が合う間柄となっているのだ。
「…ふふ、そうね。…ずっと子供の頃から一緒だもんね。」
とシヤリーも微笑みを浮かべている。
そのまま二人で、他愛ない話で盛り上がっていく。
「今日のドレス、素敵ね。…色合いは大人しいけど、…貴女自身を引き立ててるようよ。」
「ありがとう。…私のお母様の物だったけど、結婚のお祝いに譲ってくれたの。…」
「よく似合ってるわ。」
「うふふ。…」
「……やっぱり、もうすぐ結婚するんだね。…」
「えぇ。…式の方にも必ず、参加してくれるでしょ?…来てくれなかったら、寂しいわ。…今日だって、…私の父様は、仕事で来られないんだもの。」
「わかったわよ。…私は、必ず行くから。」
「…カレンナも、結婚する時は私を呼んでね、必ずよ。」
「私が結婚、……ね。…」