一章 波乱の舞踏会 2
そんな様子を、私、ーーカレンナ・スカーレットは眺めており、
「そろそろ始まるのか。…」
と呟くと大きく深呼吸していた。さらに二階から手摺を伝って下の階へと降りていく。一歩ずつ前に進む毎に、辺りの様子を伺いながら鋭い視線を向けており、周りの招待客の挙動に目を光らせている。ようやく一階に辿り着くと、余計に険しい顔になっているのに気がついた。ただ普段の癖だと割り切った。
ほぼ同時に周りから、多くの招待客の視線と声が聞こえてきた。
殆どが若い女性の興奮した声が多い。
「ねぇ、…あちらの方。…」「あの赤く短い髪、黒いドレスって、…」
「…スカーレット伯爵令嬢だわ!!」
「…いつ見ても、……凛々しいわね!!」
と何処かの誰かが言った。
すると他の招待客も交じって騒ぎだす。
まるで囁く様に、互いに会話をしている人達いた。
主に私や私の実家の事を噂をしているようだ。
「あの娘か。…城代及び近衛騎士団を勤めるスカーレット伯爵の一人娘とは。」
「なんと?!…スカーレット伯爵とな!」
「おぉ!…数々の武勲を得て、名を馳せた剛将と有名な人だな!」
「噂では娘も、…上位の実力者だと言うな?」
「…あぁ。…女だてらに、国軍の正規兵士を打ち負かす程の剣の腕だとか。…軍服で兵士達と訓練をしているのを見たぞ。」
「凄まじいな。……。」「…実は男ではなのか?」「いや、胸があるぞ。」
「…あまり舞踏会では見かけぬ人だと聞いているぞ。…今回は参加されているのだな。…」
「あら、知らないの?…だって、スカーレット伯爵令嬢って、…皇太子殿下の婚約者とは。…」
と、また誰かの、お喋りな声がすると、ー
途中で別の場所から、他の誰かが大きな声で話を遮る様に周囲に呼び掛けてきた。