3章 ライルの謎 3
すると既に真後ろには、中年の男性、ーーマカ先生が立っていた。しかも此方を見ながら、ニヤニヤと悪戯っぽい笑みを口元に浮かべている。だが不意に視線がライルの方を向くと、顔の表情がみるみる内に変わりだす。やや頬が赤く染まり、両目を見開きながら狼狽えだしながら、此方を指を指してきた。
「…えぇ?!…その子って!」
「…っ!?」
そんな彼の様子に、ライルは怯えだし、全身を縮こませてしまう。
すぐに私は気がつくと、彼と先生の間に割って入って立ち塞がった。ついでに、
「何よ?…」
と、不機嫌そうに聞き返した。
「カレンナ!?…何で、アンタ、彼と一緒にいるのよ?…どういう経緯?…彼と親しいの?…」
対してマカ先生は、捲し立てる様に質問攻めにしてきた。おまけに、物凄い必死な形相で此方を見ながら、両手の指をわきわきと小刻みに動かしている。今にも掴み掛からんとする勢いだった。
「は?…」
「えっと、…。」
その結果、私達は呆けてしまう。
やや遅れてマカ先生も、冷静さを取り戻しつつあり、深く呼吸して息を整えている。
私は落ち着いた頃合いを見計らい、再び話しかけた。
「どうしたのよ?…マカ先生?」
「あぁ、ごめんなさいね。…つい、取り乱したわ。…まさか、彼を間近で拝めるなんて思わなかったから。」
「彼って、…ライル?」
「あのね。…彼は城の中じゃ、淑女や若いメイド達の間では、凄い有名人なのよ。…正体不明の超絶美男子って知らない?…神秘的な見た目、銀髪、赤い瞳、スラリとした体型に、腰つき、まるで精巧に作った人形が生きているみたいに!」
「は、はぁ。…確かに見た目は。…目を引く方ね。」
「でも、でも!…この彼ったら、城の中で見かけるのに、何処の誰だか分からなかったのよ。…話しかけようとしてもすぐに消える様に居なくなっちゃうし、…ミステリアスで、クールな存在!…もはや遭遇するだけでも奇跡なのよ。…因みに私も、今、名前を知ったばかりなんだから。」
と、マカ先生は力説している。凄い熱量だった。結局は、また興奮した様な状態に陥っている。