3章 ライルの謎 1
あれから私達は、お互いに手を繋いだ状態のまま、黙々と歩き続けて城の中を移動していた。
地下の部屋を出てから、地上の一階部分にまで戻ってくると、廊下を道なりに進んでいく。
「…え?」「あれって?!」
その途中で城の使用人、ーー若い女性のメイド達が廊下の端で掃き掃除をしている。
私達は真横をすれ違い、通りすぎて離れていく。
するとメイド達も此方の存在に気がつき、何度も視線を送ってくる。
それが何度か繰り返されていた。
私は首を傾げながら、「なんなのよ。…」と呟く。さらに自分の格好を再確認しだした。
今の身につけているのは、ベストとシャツに丈の長いズボンである。殆どは男物でベストだけ大きめのサイズだ。でも他のは身体に張り付く様に着心地をしており、動きやすく仕立ても良い服である。
此方の見た目には、何ら変な部分はない。
因みにライルの方にも視線をやると、既に執事の服装に戻っていた。いつの間にか、怪盗の服装は着替えてしまったようである。
「あの、何処に連れていくんですか?」
と彼は、おどおどしながら声をかけてくる。
「あ、あぁ。…えっと、此処よ。」
と私も慌てて辺りを見渡すと、目的の場所に辿り着いたのに気がつく。
此処は、城の中庭に面した通路である。
その外側の壁には、大きなアーチ状の開口部が等間隔に幾つも並んでいる。日光と共に木漏れ日が射し込んでおり、心地よい風が吹きぬけている。
また内側の壁沿いの中程の位置に、ステンドグラスが嵌め込まれた木製の扉がある。
その扉の前で、私は立ち止まると何度も扉をノックし、
「ねぇ!…いるの?」
「開いてるわよ~。」
「…なら、入るわね。」
と、室内から返事がするや否や、すぐにドアを潜り抜けて部屋に入っていった。