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二章 アルジェンとの出会い。 11
「あの、えっと。」
それからライルは恐る恐ると顔をあげて、此方の様子を確認してくる。
同時に彼の顎から、血が一滴だけ滴り、床に落ちていた。
「あ、アンタ!…顔っ、怪我してるじゃない!」
すぐに私は気がつき、互いの顔が間近になるまで距離を積めていく。さらには彼の顔を一心に注意深く眺めつつ、両手で触りながら確認すると、顎に小さな傷が出来ているのを発見した。
「え?…痛っ!?」
とライルも痛がりだして、身動ぎする。ようやく自分でも怪我をしたのだと気がついたようだった。
「あぁ、もう。…付いて来て!」
私は思わず動きだし、次の行動に移っていた。彼の手を取ると部屋から出ていき、早々と歩きだして、廊下の奥へと進んでいく。
「え、いや、あの?!」
対してライルは手を引いた状態で、後を付いてくる。途中で何度も此方の手を、必死に振りほどこうとしていた。しかし思う様にならず、次第に諦めていた。最終的には大人しくなって、此方にされるがままに身を任せていたのだった。