一章 波乱の舞踏会 9
「な、何なんだ!!」「いったいどうなっている?!」
「あ、…あれは。…」「…アルジェンなの?」
「知らん!…」「し、しかし、…あの装束は、…」
「それよりも姫様が拐われたぞ!」「お、…追いかけねば、…」
おまけに、再び招待客も騒ぎだす。
すぐに近衛兵達が動き出す。必死に落ち着く様に声を掛けて対処するも、手に余る程の状態だ。
全く治まる気配がない。
「待たんか!」
その時、父だけが真っ先に、階段を駆け上がって追いかけて行く。
私は呆然としてしまった。頭で理解が追い付かず、ただただ立ち尽くしてしまう。
そこへシヤリーが此方に寄って来て、必死に訴えかけてきた。
「カレンナ、…お願い!…ナンリー様を助けて。」
「シヤリー?…」
「…危ないのは、わかってるけど。…でも私、助けたいのに、義理妹になる子なのに。…でも私じゃ、助けられない。…だから、…」
「……わかったわ。…此処で、ヴィシュー殿下と待ってて。」
私は真剣に聞き、意を決すると力強く頷いて了承した。さっさとヒールを脱ぎ捨てながら、ドレスの裾を掴むと、一直線に走り出す。どんどんと階段を駆け上がって後を追いかけた。
何の迷いも無く、ただ愚直に突き進んでいく。