3話 些細なこと
響は私の反対にもかかわらず、週2回の写真サークルに欠かさず出席した。約束通り集まりはお酒が飲めないという理由で約束は守っているものの、週末の一日をサークルに取られなければならないという事実が、どうしても寂しかった。おかげで一日中デートできる日は日曜日だけか、課題が多い日は会えないことも多かった。
響の一人暮らしの部屋に遊びに行ったある日のこと。ベッドに二人でもたれかかって写真サークルで撮った写真を見ていた。サークル活動のためにカメラまで購入した情熱がすごかった。川、花、建築物など、様々な視点で捉えた写真が続く中、突然見たことのない女の子が登場した。びっくりしたのは私だけではなかった。
「これ誰?」
「あ、サークルが同じヨヌっていう子で、撮ってくれってお願いされて.......。」
「その子のスマホで撮ればいいじゃん、なんであなたので撮ってって言うの?変な子ね。」
「僕のカメラが画質がいいと思ったんじゃない?」
「その子と仲いいの?」
「うん、ちょっとね?」
「これはもう消してほしい。」
「わかった。でもヘリ.......分かったよ。」
「何?言ってみて。」
「いや、すぐ消すよ。」
ハプニングの後、私たちは残りの写真を最後まで見た。不特定多数の人々の写真を除いて、人物は彼女だけだった。考えれば考えるほど気になったけど、すぐに消したから、一度くらいは見逃すことにした。しかし結局、気にせずにはいられない出来事が起きてしまった。
* * *
毎週土曜日の3時、響が撮影に行く日だ。そして今日の撮影地は景福宮だった。今度一緒に行こうと約束したあの場所だ。普段土曜日は友達と会うなどして時間を過ごしていたけど、あいにく今日は特に約束がなく退屈だった。
昼食を食べて部屋に戻り、ベッドに寝転がった。特にすることもなく、時間つぶしにぴったりのSNSを開いた。SNSの特徴は、やることが溜まっている時は面白いのに、やることがない時は退屈に感じるということだ。
すぐに切ろうとした時、響が所属する写真サークル「モウム」の公式アカウントで最新の投稿が上がった。時々部員たちが撮った写真が上がるんだけど、たまにヒビキの写真も混ざっているため、フォローしていた。でも今回は撮影物ではなく、部員たちの姿が映った活動の投稿だった。アップロード時間は5分前。リアルタイムだ。
私のいない場所でどんな様子で活動に臨んでいるのか、興味深く胸躍る気持ちで投稿を素早く確認した。彼氏を見つけたと感じた瞬間、画面に止まった指と共に、全ての表情と体が凍りついてしまった。
隣には、あの時見た「ヨヌ」という友達が笑っていた。響は何かに夢中で話していて、だから写真を撮られているのに気づいていないようだった。一方でヨヌは響の言葉に吹き出しながら、ちらりとカメラを見ていた。こんなことを言いたくないけど、とても親密そうに見えた。知らない人が見ても、二人は親しい雰囲気が漂っていた。
見続けたところで何か変わるわけでもないのに、拡大して見たりした。私たち二人きりで撮った写真が指で数えられるほど少ないせいもあった。その上、響の顔がこんなにはっきりと写ったツーショットは、私さえ撮った記憶がない。
響はSNSをしないため、投稿にタグ付けされていたのは一人だった。すぐにそこをクリックすると、丸いプロフィールを囲む枠が明るく光る。24時間で消えるリアルタイムの投稿を共有したという意味だった。見たい気持ちが山々だったけど、私が見たという事実をバレたくなかった。だから愛犬の写真を載せるアカウントに切り替えてアクセスした。
プロフィールをクリックすると、複数の投稿が続いた。景福宮のチケット、空、木など......意味のない写真を通り過ぎて、彼女の姿が映ったところで立ち止まった。コメントを読みながら手が震えた。
「Photo by ヒビキちゃん :) ありがとう!」
やはり女の勘は当たるものなんだ。過去に写真を撮ってくれと頼んだことからして怪しかった。今回も写真を撮ってもらう口実で響にくっついて回っていたに違いない。悔しくて言葉が出なかった。
出ないとわかっているけど、彼に電話をかけた。お願いだから出て.......早く出て、どういうことなのか説明して、私を理解させて。切実に願ったけど、やはり携帯からは「ただいまお客様のお電話に出ることができません」という音声だけが流れてきた。
ここまできたら笑えて来た。彼の優先順位の中で私は何番目だろうか?
「後で電話するよ~。」
この状況を全く知らないかのように、気楽なメッセージが飛んできた。
「明日会って話したい。」
これは会って話す問題だった。以前とは少し違う形の喧嘩になりそうだった。
* * *
普段は約束の場所を決めると、近い駅で会って一緒に歩いて行くことが多かった。でも今回は先にカフェに座って待った。同じところを見ながら仲良く歩き回る気分ではなかった。5分ほど待つと、少し戸惑った顔の響が姿を見せた。
「早かったね。」
「うん。」
「何かあったの?」
「.......」
冷たい静寂だけが漂っていた。響は私の様子を窺いながら状況を把握しようと努めていた。コーヒーを一口飲んでから重々しく口を開いた。
「昨日楽しかった?」
「うん?うん.......楽しかったよ。」
「はぁ.......昨日もそのヨヌとかいう子の写真撮ったの?」
「え?」
「『モウム』のSNSに上がってたよ。二人で楽しく笑ってる様子。」
「そんなはずは.......。」
「昨日はその子と遊んでて私の電話に出られなかったの?」
「違うよ。写真は撮ってって言われたからちょっと撮っただけで。その後は一人で回ったり、他の友達と回ったりしたよ。」
「それをどう信じればいいの。」
「.......」
怒りが込み上げてきて、言葉が段々とひねくれてきた。戸惑っていたヒビキの表情も徐々に曇り始めた。
「僕の言葉を何で信じてくれないの。」
「とにかく写真を撮ったのは事実でしょ。二人で一緒にいたのも事実だし。」
「でも笑って騒いだりはしてないよ。それに写真は頼まれるたびに時々撮ってあげただけだよ。」
「何だって?」
「それが間違ってるの?ヘリのこともたくさん撮ってあげるじゃん。」
「だからそれをなんであなたが撮ってあげるのよ!」
思わず大きな声を出してしまった。謝るどころか、火に油を注いでいた。私にしてくれる行動を同じように他の異性にしているという事実に腹が立った。それがどんなに些細なことだとしても、私たちの日常を占める大きな部分だった。でも逆に彼は、怒る私が全く理解できないという表情だった。
「じゃあどうしろっていうの?敏感すぎじゃない?」
「はぁ、私が敏感って.......。」
「みんなに分け与えられる親切だよ。なぜこんなに寂しがるのか本当にわからない。」
「じゃあその子にも私にも同じ大きさの親切を施すってこと......?」
「あ!そうじゃなくて.......。」
もう気分はボロボロになって久しかった。彼は初めから私を優先順位に置いたことのない人のように話した。小さい希望でも掴みたい気持ちで、消えかけの蝋燭のように弱々しく聞いた。
「そんなにみんなに公平に親切にするなら、私とはなんで付き合うの......?」
「なんでそんな言い方するの、ヘリ。」
「教えて。一体私と付き合う理由は何?」
「うん、一緒にいると楽しくて.......たくさん笑わせてくれて、可愛くて。
それに.......韓国人の彼女と付き合ってみたいとも思ってたし。」
最後の言葉を聞いた瞬間、心のガラスがガシャンと砕け散ってしまった。他の言葉は一つも覚えておらず、ただ最後の言葉だけが彼の本心だったかのように頭に入力された。
'韓国人の彼女と付き合ってみたいとも思ってたし'
ただそれだけの理由なら。大学授業のチームプロジェクトを一緒にするのが私じゃなくてヨヌでも。
ただ韓国人であれば付き合っただろうという話だった。それはつまり、私じゃなくてもよかったという言葉だった。誰でも代わりがきくという意味だった。涙があふれ出しそうだった。
「わかった。私たち考える時間を持とう。当分の間、連絡してこないで。」
「ヘリ、ちょっと待って......!」
「お願いだから付いて来ないで。」
振り返りもせずに店を出た。今にも涙がぽろぽろこぼれそうで、急いでその場を離れなければならなかった。もしかして付いてくるんじゃないかと後ろを振り返ったけど、静かだった。付いて来るなと言ったら本当に付いて来ないんだ。急に悲しくなって涙腺が崩壊した。
そうよ、日本語もできない私の身の程で何が国際恋愛よ。初めから合う部分より合わない部分の方が多かった。よく考えたと必死に自分を慰めた。それにもかかわらず、心から好きだったことはどうしようもないから、涙が流れた。
好きだったから不器用で、望むことも多かった。今すぐ写真サークルを全部辞めて、私しかいないと言ってくれることを願った。
でもそうしない響をよく知っているから、涙だけが流れた。




