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とうきょう127ど  作者: 始まりチーム
間違いじゃない
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1話 はじまり

 目が覚めると、昨日のことが夢のように感じられた。いや、本当は夢?でもその時に着ていた黄色いカーディガンとジーンズが、部屋の床に脱ぎ捨てたように散らかっているのを見る限り、現実で間違いないのだろう。


「ソン・ヘリ、気が狂ったのかな。」


 心の中で呟いた。私の初恋の相手が日本人留学生だなんて!しかも私から告白したなんて。まだ布団の中でもぞもぞしながら昨日のことを思い返すと、くすぐったさを感じ思わず笑みがこぼれた。

戸惑いはあるものの、気分はよかった。


 携帯を手に取り、チャットリストの中から一つの名前を探した。


「もり ひびき」


 彼が.....そう私の彼氏。ソン・ヘリ、初めての彼氏。連絡先の名前を編集して、名前の横にハートマークを付け加えた。こういうのしてみたかったんだよね......。


 大したことない変化だけど、なぜか顔が赤くなるのを感じて、布団の中の足の指をさらに激しく動かした。チャットルームはちょっと会えないかという最後のメッセージを最後に、朝に届いたメッセージはなかった。


「よく寝た??」


 書いては消し、を繰り返してから、ついに送信ボタンを押した。お腹の上に携帯をポンと置いてから、さっきの回想の続きに戻った。


 ここ数日、響は確かに様子がおかしかった。私たちは「写真の理解」という授業を一緒に受けていて、毎週1枚の写真を撮って提出するという単純な課題を一緒にこなすチームメイトだった。ちょうど二人とも「写真の理解」の後に授業がなかったため、毎回授業が終わると行ってみたかった場所に行って、お互いを撮り合うことを繰り返していた。課題もこなせて行きたいところにも行けて、一石二鳥!

つまり私たちは、週に一度だけ会う間柄だった。それ以外で会ったのは昨日が初めてだった。


「ヘリ、今日ちょっと会える?」


「夜に約束があるけど、どうしたの?」


「悩みがあって、ヘリと話したい」


「うーん、じゃあ9時くらいはどう??」


「うん。」


 この時までは、その悩みが私についてのことだとは全く考えてなかった。響は誰に対しても親切だったから。むしろ私の目を避けたり、笑っていても急に咳払いをしたりする。私は響が不快に思っているのではないかと心配していた。その心配は過剰だったけど。響は韓国語がとても上手だけど、昨日は特に言葉を詰まらせていた。


 一言でまとめると、私に対しての告白だった。


 私と過ごす時間が楽しくて、幸せで、授業の時間以外の日にも会いたいのに、それができなくてもどかしいという内容だった。結論的に、私のことを好きなのが伝わってきた。その時の感情は、驚きと納得が半々だった。考えてみたら私も響と過ごした時間がとても楽しかった。これからも一緒に過ごしたいと思った。だから突発的にあんなことを言い出してしまったんだ。


「じゃあ、付き合おうか?」


「ヘリがよければ......?」


「うん。」


「本当に?」


 響はにっこりと笑顔を見せた。照れくさくなった私の方が、さらに大きく微笑んだ。


 家まで歩いている間、手の甲が軽く触れ合うことを繰り返した。何でもないふりをしていたけど、内心ではドキドキしていた。今は手をつなぐタイミングなの?まだ早い?いろんなことを考えているうちに、家に着いた。


 最初の出会いから昨日のことまで思い返して30分ほど経っただろうか、お腹の上の携帯がブルブルと振動した。反射的に飛び起きて携帯を確認した。通知を送ってきた人は、願い通り私の新しい彼氏だった。


「うん、ヘリは?」


「早起きだね。」


「でもまだベッドの中なんだよ笑」


 大したやり取りでもないのに、つい笑みがこぼれた。 実は響と正式にやり取りするのは初めてだったから、すべてがときめきと胸の高鳴りを感じさせた。


 響は思った以上に自分の話をしてくれた。それほど長くない時間だったけどメッセージをやり取りする中で、一緒に課題をする関係だったら絶対に知ることのなかった些細な生活パターンや習慣を知ることができた。


 響は通常授業の2時間前に起きること、朝食は主に納豆を食べること、お母さんとは電話で年に一度話すかどうかだけど、親友の龍星とは月に2、3回は電話をすることなど。私は後で響に電話をかけてみようと思った。電話越しに聞く響の声はどんな感じなのか気になった。私たちはこれからもっと頻繁に通話するようになるよね?その考えはすぐに実行されたが、それが私たちが付き合って一週間目に起きた最初の喧嘩になってしまった。


* * *


 時は午後1時の専攻の授業時間。教授の突然の休講の知らせを知らずに、教室にぽつんと座っていた。

1時3分が過ぎて変だと思い、一緒に授業を受ける友達がいるグループチャットを開いた。


「今日授業ない??」


「えっ、ヘリ、知らなかったの?」


「私たち休講だから遊園地に来てるよ笑」


「ヘリは時間なくて返信できなかったのかと思った笑」


「え、そのチャット私いなくない?」


"......"


「(メッセージが削除されました)」


 休講のお知らせを確認しなかったのは明らかに私のミスだ。でも、私を除いたチャットルームの存在はショックだった。私を除いたメンバーで休講の知らせを共有し、遊園地の約束まで決めていたようだった。


 遅れて通知を確認した2、3人の学生たちは気まずそうに教室を出て行き、残ったのは私一人だった。空っぽの教室に一人で座り、寂しさと苦々しさを順番に噛みしめた。それなりに仲が良いと思っていたのに。


 大学で本当の友達を作るのは難しいとさんざん聞かされてきた。その言葉を信じたくなくて、学科の集まりにも熱心に参加し、嫌いなお酒も飲みながら友達を作ろうと努力した。その結果がこれだなんて、最悪だ。


 終わりのない自己嫌悪に窒息しそうで、とりあえず空っぽの教室から出た。次の授業までの残り時間は2時間50分。約3時間の空き時間の間何をすべきか、途方に暮れた。


 真っ先に思い浮かんだのは当然彼氏だった。響の時間割を確認すると、今頃は同じ学科の人たちと昼食を食べているはずだった。すぐにメッセージを送った。


「何してる?」


 既読はすぐに消えた。でも、数分待っても返信は来なかった。既読スルーされた?信じられない気持ちでメッセージをもう一つ送った。


「なにかあった?」


「今友達と一緒にいるから。」


「うん、わかってる。でも暇なの~。」


 今回も既読はすぐに消えたけど、返信は返ってこなかった。友達が彼女より大事ってこと? もう少し構ってくれてもいいじゃない!寂しさが押し寄せてきた。 響はこの出来事とは全く関係ないけど、私を慰めてくれる一番大きな存在だった。やることもなく女子休憩室で携帯ゲームをしていると、彼から連絡が来た。


「今どこ?」


 その連絡を見た瞬間、パッと笑顔がこぼれた。半分寝そべっていたソファから飛び起きて電話をかけた。友達とようやく別れたんだ!私も学校、彼も学校だから、数分歩けば会える距離にいた。初めて響が通う建築学科の建物に遊びに行く考えに自然と気分が上がった。


 しかし、おかしなことに通話音が切れて「ただいまお客様のお電話に出ることができません」という音声が流れてきた。授業時間でもないはずなのに電話に出られない理由は何?私が彼にかけた最初の電話が不在着信という事実が虚しくて悲しくて、またメッセージを送った。


「どうして電話に出ないの?」


「友達といるって言ったじゃん。」


「今どこって聞いてきたのに?」


 私のイライラの混じった問いかけを最後に既読は消えなかった。響は私と会う気はなかったということに気付いた。エレベーターに向かっていた足取りが重たくなり、女子休憩室に戻った。友達といたとしてもちょっと電話に出るとかできなかったの?今は忙しいから後で電話するねくらい言ったらどうなの?友達が私より優先なの?寂しさがどんどん膨らんでいった。


「暇そうだから聞いてみただけ。」


「じゃあ、今会えない?」


 10分後に届いた彼の連絡をすぐ読んで光速で返信した。しかし、彼はすぐに携帯の電源を切ったのか、またも無言だ。もう寂しさではなく怒りが湧き始めた。普段から響は返信が遅かった。


 「必要な言葉だけ簡潔に」は日本人の特徴だと聞いていたけど、響を見ているとその通りだと思った。


 だから数時間後に返信が来ても考えないようにしていた。でも、今の私には彼が必要だった。私が悪くないと言ってくれる優しい味方が必要だった。今すぐその友達といる場所に行って響を連れ出したかった。


 10分ほど経っただろうか、彼は私の気持ちを察したようだった。


「会いたいなら、ちょっと会う?」


 じれったい。と唇を尖らせながら足取りは誰よりも早くエレベーターに向かった。さっきまで寂しかったのが嘘のように口角がピクピク動いた。


* * *


 初めて来た建築学科の建物は、なんとなく響の雰囲気と似ていた。暖かくて冷たい雰囲気を同時に漂わせているというか。今日あった休講の出来事を説明しながら、寂しかったと冗談半分に言ってみた。

響の反応は冷淡だった。


「でも、友達と一緒にいるときに連絡するのは礼儀ではないから。」


「韓国の友達なら理解してくれるはずだよ。韓国では友達といるとき電話がきても誰も何も言わないし。」


「僕は今みたいに会って話せばいいと思う。」


「だから会おうって電話かけたのに切ったじゃん。付き合ってから、最初の電話がこんなでどれほど悲しかったか分かる?」


「気分が悪かったなら謝るよ。」


「私の存在が恥ずかしいの?」


「そうじゃないよ。あとで電話しようとした。」


「それじゃ説明してよ。」


「はあ……。わかった。」


「……。何でため息つくの?」


 雰囲気が悪くなって、道を通り過ぎる人々から視線を感じた。


「韓国語がうまく出てこなくてため息がでたんだよ。」


 響に謝ってほしかった。彼女がこんなに寂しいというのに最後まで礼儀と迷惑を気にする響が理解できなかった。ここは日本ではない韓国なのに。


「わかった。今後は連絡したり、後で話そうって言ってほしい。電話を切られるのは悲しいよ。」


こんな些細なことで喧嘩したくなかった。付き合って一週間目だってのに。


「努力するよ。」


 響の表情は暗かった。自分の過ちを認めたけど、まだ私の言ってることが理解できないようだった。おそらく今夜は響から何も連絡が来ない可能性が大きかった。彼は普段でさえ連絡が少ないから。


 響といつも韓国語で会話してみると、日本人ということをたまに忘れてしまう、私たちが初めて日韓文化の違いを感じた瞬間だった。

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