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咲かせてみよう、悪の華
──夜の繁華街。ふらつきながら歩くサラリーマン、客引きをする黒装束の男。少年は唾を吐いて路地裏に入り、ようやく落ち着ける場所を見つけて鉛のように重い体をブロック塀に預けた。
少年は腹部に刺さったナイフを撫でた。凍えるほど寒い筈なのに、身体中の感覚がなかった。そしてこれから行く先の事を考えていた。地獄があるなら見てみたい。今以上の地獄があるのなら。
騒音が聴こえなくなり、意思が遠のいていくのを感じて少年は瞼をゆっくりと閉じた。
少年が目を覚ました。木々や草花が生い茂る美しい光景が広がっていた。
「なんだ、ハズレか」
地獄行きを予想していたのだが、ここ余りにも美しかった。