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恋のチカラ ~奇跡のひだまり~  作者: 小林汐希
第2部 あなたという時間を…
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【第54話・エピローグ1】 私でも全部できたよ?




「頑張ったな」


「はい。疲れましたけど……」


「今日はここにいるから、ゆっくり休んでくれ」



 あれから5年。私は今日、一人の女の子の母親になった。


和寿(かずと)はもう帰りました?」


「途中で、お義母さんに連れて帰ってもらった。もう寝てるだろう」


「そうですか。あの子もお兄ちゃんですね」


「そうだなぁ。俺には妹の経験ないからなぁ」


「私が剛さんの妹みたいな感じでした」


 個室の病室なので、周囲に気兼ねしなくてすむのが楽だった。


「剛さん……」


「ん?」


「ありがとうございます。私の我がまま、かなえてくれて」


 手首に名前札が巻かれている私の右手で剛さんの手を握る。


「俺はなんもしてない。頑張ったのは陽咲だ……」


 そんな声と、手の温もりで安心して、体は私に休息を要求した。






 『家族は四人がいいです』


 そんなことを言いながら、朝食を用意していたあの5年前の冬。


 もちろん、私が二人分の妊娠に、そして子育てが出来るかの自信は無かったし、一人で精いっぱいかもしれない。


 そんな朝から1か月後の私の誕生日。私は産婦人科にいて、お年玉をもらったと思った。


 検診には剛さんがいつも付き添ってくれたし、私の身体のことを本当に気遣ってくれた。会社で私の妊娠を公表したときも二人で話しに行った。


 初めての準備で忙しかったけれど、いろいろ買い揃えたり、あっと言う間に過ぎて、元気な男の子を胸元で抱いた。


 私のお母さんや剛さんのご両親にも助けてもらいながら、毎日を過ごした。


 でも、表には出さなかったし、剛さんにも言わなかったけど、正直怖さもあった。


 私の体は本当に耐えられたのか。


「坂田さん、安心してください。数値に異常はありませんよ。まだお若いですから、もう一人くらいは心配ないでしょう」


 そう言われて病院を後にしながら、そこで四人家族の希望を思い出した。


 私に何かあっても、剛さんと和寿にもう一人いれば……。それが女の子なら、なんとかやっていけるだろう。




 そして、今日を迎えた。一つのゴールでもあるし、また新しいスタートでもある。


 今の家を決めたときに、子どもたちと一緒に庭や公園で遊ぶ目標もすでにクリアしていた。


 二人目の妊娠が安定して、性別も分かった頃に、ふと剛さんにそっと話したことがあった。女の子なら、私の代わりが務まるからと。


「ひながいなくなっちまったら、みんな路頭に迷っちまうぞ。なんたって俺が追いかけちまうからな」


「そんな、ダメですよ」


「だったら、ひなもそんなこと言いっこなしだ。せっかく大学も卒業したんだから、もったいないぞ」


 和寿の子育てをしている間、私は治療に専念するためだと退学した大学に復学していた。


 さすがに子育てをしながら通学するのは厳しかったので、通信教育学部に転籍する手続きをしてからだけど、家にいてパソコンを使いながらレポートを出したり、スクーリングや試験の時は剛さんに預かってもらって、卒業証書を手に入れた。



 これで、私が中学3年生で病気の宣告を受けてからやりたいと言っていた目標は全てやりきった。そう、私でも全部できたんだよ……。




瑠依(るい)は寝てますよ」


 仕事帰りに寄ってくれた剛さんに、次に持ってきて貰いたいものを書いたメモを渡す。


「じゃあ明日、役所に出生届を出してくるよ」


 和寿の時はすんなり決まった名付けだったのに、二番目で女の子ということもあり、なかなか難儀した。


 昨日の夜に、ようやく私たち二人で決めたのが瑠依。今日一日ずっと考えてみたけれど、それ以上考えても新しいのが思いつかなかったし、呼び始めてみたら二人ともすっと馴染んだ。


「明後日退院だから、明日は役所に届けを出して、荷物を入れ替え終わりだな。家の掃除をしなきゃならん」


「大丈夫ですよ。産婦人科は入院していても結構忙しいんですから」


 入院といっても病気ではないから、帝王切開など手術以外はすぐに授乳や沐浴など、何気に時間刻みでやることがいっぱいある。


「明後日は車で迎えに来るからな」


「うん。おやすみなさい」


 誰もいない夜間出口に二人で降りてきて、私は剛さんに久しぶりにキスをねだって抱きついた。


 でもね、剛さんを見送った後に気付いて真っ赤になっちゃった私。


 夜勤の看護師さんたち、防犯カメラの映像見ていたよね、きっと……って。



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