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恋のチカラ ~奇跡のひだまり~  作者: 小林汐希
第1部 いつか並んで歩いた道
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第29話 悪夢と許せない怒り




 そんなことがあった夕暮れ、私の気の緩みが運命の分かれ道だった。


「ちょっと、公園に寄らない?」


「うん、いいよ」


 彼に誘われて、私は……ついていってしまった。


「あ、来た来た」


「遅いぞ安田」


「悪い悪い」


「えっ……」


 嫌な予感がした。学年でも問題児になることが多い二人。なぜここにいるのか。そして、この三人の関係は……。


「安田、星野とキスしたか?」


「まだだったな」


「おせーな。今しちゃえよ」


 突然、私は後ろからつかまれて身動きを取れなくなった。


「嫌だよ。こんなの!」


「うるせぇな」


「そのうち死んじゃうっていつも言ってるもんな」


 髪を引っ張られ、痛みに顔がひきつる。


 その瞬間、私の唇は強引に塞がれた。


 最悪なファーストキスだった。彼にあげてもいいかなとは思ったときもあった。でも、こんな形はあり得なかった。


 呆然となって動けなくなった私は、しばらく気持ちの記憶がない。


 映像と音声のデータのような記録。


 暗がりの中に連れ込まれ、服を脱がされた。膨らみのほとんどない私の胸。いたずらに触られて笑われて、小さな蕾をつねられた痛み。


 体を倒される力に必死で抵抗した。草が痛いし土が気持ち悪い。


 でも、男子二人に足を押さえられ、私の中心に激痛が走った。体が引き裂かれているような、他に例えようのない痛み。


 異物が私の中に打ち込まれる。女子の中でも話題になることも多い。初めては気持ちがいいか? とんでもなかった。息をするのもやっと。痛みだけではなく、恐怖も手伝って悲鳴をあげることすらできなかった。


 時間にすれば10分程度の事なのだろう。


 私が感じた痛みは3回。つまり、彼らは全員私の中に入ったということ。


 気が付いたとき、周りには誰もいなかった。


 涙を拭いながら服を着る。あの場所からはぬめりとした感触。私の傷からの出血と、彼らが入った証し。


 何とか歩いた家まで5分の距離がとても長く感じた。


「ただいま」


「お帰り陽咲……陽咲!」


 お母さんに抱きついて、次に気がつくと私は病院のベッドの上だった。


 女性の看護師さんと、婦人警官さんも来てくれていた。


「お母さん……ごめんね」


「陽咲……あなたの何が悪いの?」


 体の説明を受ける。傷の手当てと、万一に備えた薬と消毒。


 そして、事態の成り行きを婦人警官さんに話した。


「お母さん……、私……もうお嫁に行けないね……」


 お母さんはなにも言わずに私を抱き締めてくれた。きっとその時に何を言っても慰めにはならなかったと分かっていたに違いない。


 数日後、彼らは全員補導された。ただ、私を押さえつけたうちのひとりが地元の有力者だったことが災いした。


 親の力は事実さえねじ曲げた。本当の被害者は私で、何も責任はなかったはずなのに。彼らが登校出来なくなったのは、私のせいだという噂が流れ始めた。


 もう地元に残る気もしない。高校は、他の受験生と被らない場所に変えてもらった。





「なんてことを……! 陽咲になんてことを!!」


 夢にうなされていた陽咲に声をかけ、思わずしがみついてきた彼女から時間をかけて少しずつ聞き出した。


 陽咲は何も悪くない。それどころか自分の命の長さを知っていて、きちんと告げているのに、それを手玉に取るなんて絶対に許せない。これが陽咲の男性恐怖症、そして「汚れた身体」だと言っている全ての元凶なのだと理解した。


 怒りで声が震える。


「剛さん。ありがとうございます。怒っていただけて私は救われます。もう済んだことです。ただ、このお話は剛さんにとっても失礼な内容だと思います。言えなくてごめんなさい……」


 なにも謝ることはない。こんなに辛い過去を抱えていながら、俺の前ではいつも微笑んでくれる。想像を超えた強さを持った子なんだ。


「ひなちゃん、俺はそんなことを気にするようなことはしない。ずっと一緒だ。安心して朝まで眠ろう。ひなちゃんが眠るまで俺は見守ってる」


「はい。ありがとうございます」


 陽咲はそう答え、俺に腕を回して隣に横になり、安心したように目を閉じた。



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